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第三章
第六話
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戦略の授業はどうにか切り抜けた。
冬休みに入った。ここで冬休み明けにテストを行いそれで卒業する。
なお、教授科目である魔導は科目免除となっておりそれ以外の科目を試験する。戦術、国語、武術(エスリーンは弓、マリアンヌとエリックは杖、ザックは剣を選択する)、神学の4科目になる。魔導が免除になるのは大きい。もっとも逆に学生に問題を作成するのは大変なんだが。
なので学生にばれぬよう秘密学級『銀狼級』で問題作成を行うのだ。それが彼ら四人の事実上の卒業論文である。
前期の試験はとにかく紙に書くという作業であった。ゆえに文章量を多くすることはできない。しかし今や印刷術で問いを多くすることが出来る。問題の中身まで変わったのだ。
印刷を終えた紙を封印して校長に手渡す。
「終わった……」
エリックはもう疲れ果てていた。
「終わったね」
マリアンヌも疲れていた。
「来年から履修量の増大で履修期間が一気に二年間から四年間になるみたいだよ」
エスリーンはむしろ来年以降の事を考えるとラッキーと考えていた。
「あとは採点作業で終わるのかぁ」
ザックは何か寂しそうだ。
◆◇◆◇
エスリーンは期末試験の事もあったがそれ以上に引きこもりたかった。
(終わってしまうのか。この生活……)
最低限の試験対策以上のことはしたくなかった。超低空飛行でもいいから卒業したかった。そして卒業後はもちろん親元には帰りたくなかった。なにせ袋ごと私を入れてこの寮に放り込んだのである。あんなの親じゃない。なので親元に帰って領土の経営とか学校の経営なんてものは考えられなかった。学校側からは「進路どうするの?」としつこく言われていた。
そう、なんとエスリーンは進路報告書に記載した内容が「進路未定」のままだった。
聖女様は新設する修士課程、ひいては博士課程への進学を勧めている。
(なんだかなあ)
その道は今と同じような生活が続くという意味であった。
(こんな薄暗い学級に通うの、もう嫌だなあ。引きこもってたいなあ……)
閉架図書に永久に引きこもって居たい気持ちが強くなった。
(ん、閉架図書?)
「そうだよ! 閉架図書だよ!! 自分で作ればいいじゃん!!」
思わず声を上げた。
来年から教育養成学部として教育学部の定員が大量に作られる。小学校も中学校も高校も多数作られる。しかも当分の間は教会を間借りする仮校舎でのスタートなのだ。そう、教育指導者や技術者のための知的欲求に答える施設ではないか。学校図書館だけで供給が済むはずがない。
(つまり、図書館を自前で作る)
もちろん各貴族は領民のための公共図書館を作るだろう。あそこはダメだ。単なる客商売である。「閉架図書に引きこもる」ようは重厚感のある空間ではない。もっと修道院図書館のような重厚さが必要なのだ。
(ではどうやって、私立図書館で飯を食うかだ)
羊皮紙の時代は写本だけで金貨相当の価値があった。しかし活版印刷のせいでもうそのような時代は終わった。
(ん?では写し終えた羊皮紙の図書館はどうするつもりだ?)
羊皮紙から通常の図書に写し終えた終えた後の原本はどうするのか。印刷物である。誤植もあるであろう。それ以前に文化財ではないのか。
(それだ!)
そう、図書館のようで図書館じゃない。実質博物館だ。「文庫」とも言ってよい。乾燥剤を徹底的において虫対策を行えばいいのだ。
(じゃあ、誰がそんなパトロンになるんだ?)
エスリーンはすぐにある人物を思い浮かんだ。
冬休みに入った。ここで冬休み明けにテストを行いそれで卒業する。
なお、教授科目である魔導は科目免除となっておりそれ以外の科目を試験する。戦術、国語、武術(エスリーンは弓、マリアンヌとエリックは杖、ザックは剣を選択する)、神学の4科目になる。魔導が免除になるのは大きい。もっとも逆に学生に問題を作成するのは大変なんだが。
なので学生にばれぬよう秘密学級『銀狼級』で問題作成を行うのだ。それが彼ら四人の事実上の卒業論文である。
前期の試験はとにかく紙に書くという作業であった。ゆえに文章量を多くすることはできない。しかし今や印刷術で問いを多くすることが出来る。問題の中身まで変わったのだ。
印刷を終えた紙を封印して校長に手渡す。
「終わった……」
エリックはもう疲れ果てていた。
「終わったね」
マリアンヌも疲れていた。
「来年から履修量の増大で履修期間が一気に二年間から四年間になるみたいだよ」
エスリーンはむしろ来年以降の事を考えるとラッキーと考えていた。
「あとは採点作業で終わるのかぁ」
ザックは何か寂しそうだ。
◆◇◆◇
エスリーンは期末試験の事もあったがそれ以上に引きこもりたかった。
(終わってしまうのか。この生活……)
最低限の試験対策以上のことはしたくなかった。超低空飛行でもいいから卒業したかった。そして卒業後はもちろん親元には帰りたくなかった。なにせ袋ごと私を入れてこの寮に放り込んだのである。あんなの親じゃない。なので親元に帰って領土の経営とか学校の経営なんてものは考えられなかった。学校側からは「進路どうするの?」としつこく言われていた。
そう、なんとエスリーンは進路報告書に記載した内容が「進路未定」のままだった。
聖女様は新設する修士課程、ひいては博士課程への進学を勧めている。
(なんだかなあ)
その道は今と同じような生活が続くという意味であった。
(こんな薄暗い学級に通うの、もう嫌だなあ。引きこもってたいなあ……)
閉架図書に永久に引きこもって居たい気持ちが強くなった。
(ん、閉架図書?)
「そうだよ! 閉架図書だよ!! 自分で作ればいいじゃん!!」
思わず声を上げた。
来年から教育養成学部として教育学部の定員が大量に作られる。小学校も中学校も高校も多数作られる。しかも当分の間は教会を間借りする仮校舎でのスタートなのだ。そう、教育指導者や技術者のための知的欲求に答える施設ではないか。学校図書館だけで供給が済むはずがない。
(つまり、図書館を自前で作る)
もちろん各貴族は領民のための公共図書館を作るだろう。あそこはダメだ。単なる客商売である。「閉架図書に引きこもる」ようは重厚感のある空間ではない。もっと修道院図書館のような重厚さが必要なのだ。
(ではどうやって、私立図書館で飯を食うかだ)
羊皮紙の時代は写本だけで金貨相当の価値があった。しかし活版印刷のせいでもうそのような時代は終わった。
(ん?では写し終えた羊皮紙の図書館はどうするつもりだ?)
羊皮紙から通常の図書に写し終えた終えた後の原本はどうするのか。印刷物である。誤植もあるであろう。それ以前に文化財ではないのか。
(それだ!)
そう、図書館のようで図書館じゃない。実質博物館だ。「文庫」とも言ってよい。乾燥剤を徹底的において虫対策を行えばいいのだ。
(じゃあ、誰がそんなパトロンになるんだ?)
エスリーンはすぐにある人物を思い浮かんだ。
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