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神の聖水編

神の聖水編 ep.2

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神の聖水ep.2




数時間前
マリーの屋敷の庭にて


メイジー「さて、どこから始めましょうか」

ネル「あ!メイジーさん!」


庭からベレー帽氏を被ってオーバーオールを来た少年が走って来る


メイジー「ネルさん。庭の手入れは終わりましたか?」

ネル「はい!今日も花達は元気に咲いています」

メイジー「それは宜しいですね。では、私は掃除に参ります」

ネル「え?僕、庭ならさっき綺麗にしましたよ?」

メイジー「どうやら外に大きい害虫が来たようです」

ネル「え?!嫌だよ!マリー様の庭が滅茶苦茶になっちゃう!」

メイジー「なので、私が掃除をします。ネルは、その後の処理を。あ、あと正門には害獣が現れたので先にそちらの解体からお願いします」

ネル「わっかりました!マリー様の庭は僕が守ります!」




ネル、元気な声で返事をして、走って屋敷に戻っていく




メイジー「それでは、参りましょう」


スカートの下から拳銃を2丁取り出し、走って庭の塀を乗り越える



盗賊1「なっ!!」

メイジー「フンッ!!」



首に蹴りを入れる


盗賊1「ガ……」

盗賊2「テメェ!!」



メイジー、銃を構える



「では、掃除を始めましょう」


SE:銃を構えて連射する



メイジー「主の庭には一歩も近づけさせません」



SE:走って相手を蹴る音


盗賊1「ウガァ!!」


SE:銃声1回


盗賊2「ギャァ!!」


SE:大勢の叫び声



メイジー「数が多いですね。片づけが大変だ」



SE:銃を連射する
SE:大勢の叫び声




メイジー「ふぅ、終わりましたね」




後ろから拍手が聞こえる



メイジー、咄嗟に銃を相手に向ける



イア「お見事です。これだけの人数をこの一瞬で」

メイジー「…!サファイア様…!も、申し訳ありません。」

イア「いいえ、最後まで気を抜かないその姿勢。大変素晴らしいです」

メイジー「勿体なきお言葉です」

イア「マリー様はまだ出先でしょうか?」

メイジー「はい。後少しでお戻りになるかと思います」

イア「分かりました。こちらでお待ちしててもよろしいですか?」

メイジー「はい。ですが、庭の掃除をもう一度行いますので客間でお待ちいただけますでしょうか?」

イア「大丈夫ですよ。案内、よろしくお願いいたします。ああ、ちょっと待ってください」

メイジー「?」




イア、メイジーに近づいて顔の血を拭く



イア「はい。これで大丈夫です。綺麗なお顔になりましたね」

メイジー「ありがとうございます。御見苦しい姿で申し訳ありませんでした。」

イア「そんなことありません。主と主の場所を守るための美しい姿です。誇りに思ってください」

メイジー「…ありがとうございます。では、ご案内します」






ネルside



屋敷の正門へ走るネル



ネル「いっそげ!いっそげ!マリー様が戻る前に~」

ネル「あ!」



門がこじ開けられており、数十人の盗賊が入って来ていた




ネル「あーーー!!屋敷の正門がーーー!!」

盗賊3「な!ガキ…?」

ネル「こらぁ~!!マリー様の屋敷を壊すなー!!」




ジャベルを振り上げて頭上から叩きつける
地面に叩きつけられて石畳が割れる
SE:殴る音
SE:破壊される音




盗賊3「ギ!」

盗賊4「この野郎!」





盗賊が斧を振りおろす




ネル「危ないモノはしまいなさーい!!!」



シャベルで斧をはじいてそのまま顎の下から殴る
SE:殴る音




ネル「もー、皆危ないモノばっかり持ってるから全部置いてもらいますよ!!」




シャベルを構えて大勢に突っ走って行く
SE:複数回殴る音


盗賊5「うがぁ!」

盗賊6「ぎゃ!」

盗賊7「あぁ!!」


余りの強さに驚いて何名か逃げ出そうとする


盗賊8「ひぃ!!」

盗賊9「ば、バケモンだ!!逃げろ!!」

ネル「ああ、待ってください」




ハサミを投げて、足を刺す
SE:刺さる音




盗賊8「ぎゃあ!」

盗賊9「ぐぁあ!」

盗賊8「お、俺の足が…!足がぁ!」






ゆっくりと近づく足音が聞こえる





盗賊9「ヒッ!」



ネル「もー、駄目じゃないですか。マリー様の屋敷に傷を付けちゃ」

ネル「僕、決めてるんです。マリー様の屋敷を汚くする害獣は」





シャベルを振り上げる





ネル「1匹残らず粉々にするって!!」





SE:何かがつぶれる音or叩く音





庭から正門の方に歩くメイジーとイア




イア「あら、あちらの少年は?」

メイジー「うちの庭師です」

イア「まあ、では、この美しい花達は彼が手入れをしているのですか?」

メイジー「はい。屋敷の花は全てネルが行っております」

イア「ネルさん、ですね。お話を聞いてもよろしいでしょうか?」

メイジー「勿論です。光栄でございます。」

メイジー「ネル」




袋にゴミを入れているネル




ネル「うんしょ…と、あ、メイジーさん!…と?」

メイジー「こちらはサファイア家の御当主様であられます。」

イア「サファイア・ルス・ヴィーズです。初めまして。ネルさん」

ネル「わわ!!サ、サファイア様?!は、初めまして!マリー様の屋敷で庭師をしているネルです!」

イア「そんなに緊張なさらなくて大丈夫ですよ。可愛らしいですね。フフッ」

ネル「あ、ええっと、その…」

メイジー「ネル、サファイア様の前で失礼ですよ」

ネル「あああ!ご、ごめんなさい!直ぐに着替えてきます!」

イア「ああ、そのままで大丈夫です。主の庭と屋敷をお守りしたんですよね?それは、誇るものです。ちょっと失礼」




イア、ハンカチを取り出してネルの顔を拭く




ネル「わひゃ!あ、ありがとうございます…」

イア「では、ネルさん。お花の紹介をお願いできますか?」

ネル「…!」

ネル「はい!勿論です!」

メイジー「では、私はお部屋の準備をしてまいります」

イア「よろしくお願いいたします」

ネル「じゃあ、案内しますね。」

ネル「あ、ちょっと待っててください…この袋を」





ネル袋を持って、焼却炉へ入れる




ネル「これで、最後っと」




蓋を閉める




ネル「お待たせしました!案内させていただきます!」

イア「はい。お願いいたします」






現時刻、マリー、イア、ヒュー、客室にて





メイジー「以上が、先程のおもてなしでございました」

マリー「なるほどー?随分と数が多かったんだな。まぁ、怪我が無くて何よりだ。流石だな」

メイジー「勿体なきお言葉、感謝致します」

イア「庭師のネルさんからも、素敵なご説明をして頂きました。ますます、ここの庭が好きになりますね」

マリー「ああ、庭の手入れに関してはネルはこの国では有名でな。いつも雇いたいという声が後を絶たない」

イア「それは、素晴らしい事ですね」

マリー「全く、うちの庭師だ。誰にもやらん」

マリー「…」

マリー「ヒュー、これで情報は全てか?」

ヒュー「はい。アルガンの経緯やルディア宰相殿からはこれ以上目ぼしいものは発見されませんでした」

マリー「んー…そうか」

イア「今一つ、確信に迫る情報がありませんね」

マリー「ああ。意図的に隠しているような感じだな」

イア「元凶が掴めませんね」

マリー「…………ん?」

ヒュー「どうされました?」

マリー「リドル・アルガン、は、独り身なのか?」

イア「はい。ご結婚もされていないそうです」

マリー「う~む……妙だな…」

ヒュー「と、言いますと?」

マリー「以前、リーフ研究所で起きた爆発事故があったな」

イア「はい。被害者は推定1万人程、後遺症で治療している患者さんは5千人程います」

マリー「…イア、済まないがそのリストを見る事は出来るか?」

イア「はい。可能ですが、何か思い当たる事でも?」

マリー「ああ。私は神殿の方に行く」

ヒュー「神殿…ですか?」

マリー「セレスティア商会に配置してあったのは、アンゲルスとシムラクルムの物語に出てくる、人物や動物達と言ったな」

ヒュー「左様です」

マリー「私の記憶が正しければいいが、少し自信が無くてな。一度確認してくる」

ヒュー「承知しました。直ぐに手配を」

マリー「頼むぞ」




ヒュー、一礼して部屋を出て行く




マリー「後、私の予想が正しければ…ハァ」




頭に手をつく




イア「?」


マリー「…また、クラウンの戯れが始まったようだ」











数時間後
王室の一角
エーレの執務室にて





ショハン「では、次回の予算はこちらで確定で宜しいですか?」

エーレ「ああ、噂が燎原の火の如く広がってしまったからな。国民の不安を最小限に抑える必要がある。早急に手配してくれ」

ショハン「かしこまりました。それと、隣国からの視察や訪問の依頼がいくつか来ていますが…」

エーレ「後にしろ。こんな不安定な状態では出来ん」

ショハン「確かに一理ありますが…」

エーレ「お前が言いたい事は分かるが、今は目の前の国民が最優先だ」

ショハン「承知しました」


SE:ドアのノックオン




エーレ「入れ」

役人「失礼します。ローズマリー様がお見えになられてます」

エーレ「マリーが?」

役人「はい、なんでもものすごい血相でして…」



ドアの向こうから走る音が聞こえる
SE:走る音



エーレ「あー…、もう気が付いたのか。ショハン」

ショハン「はい?」

エーレ「耳をふさいでおけ」

ショハン「?かしこまりました」



(めっちゃ叫びながら)
マリー「エーレ・アダラァああああああああ!!!!」


SE:叫びと同時に扉が勢いよく開く



エーレ「おー、どうした?何かわか(ったのか?)」

マリー「(ったのか?にかぶせて)お前なぁ!!!!」



エーレの胸倉をつかんで持ち上げる



マリー「なんであんなに大事な事を隠していたんだ!!!!」

エーレ「ああ、なんだ、もうわかったのか(流石だな)」

マリー「(流石だなにかぶせて)お前の所為でリドル・アルガンの調査のやり直しだ!!!」

エーレ「アハハハハ」

マリー「笑いごとか!!」

マリー「なぜ、この二人、リドル・アルガンの妻子の情報を渡さなかった!!」

エーレ「言っただろう?「私情を挟む」と。いい加減おろしてくれないか?このままでは喉が詰まって上手く話せん」

マリー「……。」



エーレの胸倉から手を放す
エーレ、服を整える



マリー「ハァ…。で?何故、リドル・アルガンに妻子がいる事黙っていたんだ?」

エーレ「確証が無かったからな。下手な情報を流して、無関係な人間が巻き込まれたら、元も子も無いだろう」

エーレ「それに、リドル・アルガンは独身で通していた。妻子の情報も厳重に保管されていたよ。天使のシアロンの流通先に、南部にある小さなサーニャと言う村があってな。気になったから調べたのさ。そしたら、見事に当たっていたよ」

マリー「…本当にそれだけか?」

エーレ「ん?」

マリー「確証が無かっただけで、私に何も伝えなかったのかと聞いている」

エーレ「その通りだが?」

マリー「…わかりました。そういう事にして置きましょう」

エーレ「フフッ、助かるよ」

エーレ「それで?私に何の用だ?」

マリー「生化学工場のDNA情報だが、一体何が持ち出された?」

ショハン「!」

エーレ「ほう?何故聞きたい」

マリー「天使のシアロンに使われたシーベランは、人間を媒介にしていた。だが、普通の植物は人体に埋め込んだとしても、発芽はあり得ない。人間の体は塩分濃度が高い上に、油分が含まれているため植物は育たない。つまり、アルガンが使っていたシーベランは、人間の体でも生成できるように遺伝子を組み替えたと言う事だ。そんな専門知識、どこから仕入れたのかと考えたら、その事件しか該当するものが無いからな」

エーレ「なるほど。そこまで調べがついたのなら、凡そ(おおよそ)の検討はついているだろう?」

マリー「…やはり」

エーレ「ああ、盗まれたのは「エテルノ」だ」






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