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第3話 王太子様登場! ぼく、命の保証なし!?
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「待て。そこを動くな」
だだだ、大ピンチ! 大変!
記憶が戻った翌日、部屋から出て10歩のところで危機。
さっそくダメかも。
おどろくべき速さ。あまりにも素早いピンチの陥り方。
侍女さんたちの目を盗んでこっそり王宮内を探検すべく部屋を出て約5秒。
あまりにも短い探検、そして特大のピンチ。
「いいか。一歩も動くなよ」
ビックリするほど王子様な見た目の王子様が、厳しい顔でにらみつけてくる。
まだ、回廊の向こうの階段の途中にいるのに、威圧感がビシッと伝わってくる。
言われなくても動ける気はしない。あ、でも足はちょっと動いてるかも。動いてるっていうか震えてる。
「動けば命の保証はないぞ」
「ひえっ!」
言われた瞬間、ちょっと飛んだかな?ってくらい、ビクッとなった。
あああ、もうダメかもぉぉぉ!
えっ、もしかしてもう処刑? 早くない? 誰も真似できないスピード感すぎない?
処されるのは10年後では? あまりにも早すぎて震える。
ぼく、部屋を出て10歩だし、まだなにもしてないのにぃぃ。
すんごい王子様な見た目の王子様は、この国の王太子様で、もうそれはそれは偉い。なんといっても次の王様だ。まだ12才とはいえ、とてつもない権力者なのだ。
この人が、こいつダメー!って言ったら、いつ処されてもおかしくない。
いま捕まって、「お前なんかダメだから処刑!」って言われたら、ぼく明後日くらいに終わりそう。明日処刑が決まって、明後日処刑。それくらいの速度でやっちゃえる偉さ。
「今そちらに行く」
10年後の処刑を回避するべく、今から「何も企んでなさそうないい子」を頑張るはずだったのにぃ……
はわわわわ……
前世の記憶が戻ってたった1日。
部屋から出てたって10歩。
ぼくの人生、原作の悪役王子様より超特急で終わりそう。
うう、こんなのあんまりだ。
これじゃあ死ぬために生まれ変わったみたいだし、思い出した意味もない。
「グスン……ひっく……」
そう思ったらしみじみ悲しくなってくる。じわっと目の端から水が漏れてきた。いったん漏れはじめたら、蛇口はないので水漏れっぱなしだ。すぐに、ほっぺたがべしょべしょになる。
「……っ!? なにを泣いている?」
「ひぇぇッ!」
びっっっくりした!びっくりしたびっくり――
「そなた、どうした?」
びっくりし過ぎてカチコチになったぼくの腕を、がば、とつかむ。その拍子に、両目の水漏れがパッと止まった。
お……王太子様、いつの間にここに? え、もしかしてこの国の偉い人って瞬間移動とかいけるタイプ? 魔法とか使っちゃう? 明後日じゃなくて今、処刑する? ぼく、処される?
「うえっ……、し――」
「し? なんだ?」
「死にたくない……うう……」
「えっ」
王太子様はぼくの腕をつかんだまま、めちゃくちゃビックリした声を出した。
え、どういうこと? 王太子様、自分で「動けば命の保証はない」って言ったのに、なんでそんな驚いてるの? 瞬間移動した拍子に忘れちゃった?
それならまだ生きられる? 可能性ある?
「――そうか、動いたら命が危ないと言ったからか」
違います王太子様。動けば命の保証はない、です。そこ重要なので。ニュアンスがだいぶ違います。
「もう大丈夫だ。心配しなくていい」
「え、ほんとに?」
がば、と顔を上げると、王太子様は面食らったみたいな顔になった。
しまった。ちょっと現金過ぎた? いやだって、ほら、ほんとかなって思ってつい。
「ああ、私が来たからもう安心だ」
「……」
ぼくはがっかりしてまた顔をふせた。同時に止まった蛇口からまたじわじわ水が漏れる。
「お、おい。なぜまた泣く? 大丈夫だと言っただろう」
「うぐっ……本当に?」
ちらっと見上げると、王太子様は眉をぎゅっとしてぼくを見ていた。
「うう……」
まだ蛇口が閉まらないぼくがグスグスしていると、王太子様はそうっと掴んでいた腕を放して……ちょっと優しくつかみ直した。
なんで。そのまま放してくれたらいいのに。
「そなた、なぜ一人で歩いている? 危ないだろう。侍女や護衛はどうした?」
ぎくっ! となって、蛇口が閉まった。
「部屋にいて、あの、ちょっとひとりで歩いてみたいな~って」
「なぜだ」
――王太子様、さっきからちらっと思ってたんですが、なんでそんな偉いじーさまみたいなしゃべり方? え、若く見えてもしかしておじいちゃ……や、それはないか。原作の設定だと12歳のはず。
「どうした? 怒らないから言ってみよ」
「あんまり、ぼくあの、部屋の外がわからないから知りたいなって」
怒らないと言われて、僕は勢いづいてすらーっと説明する。我ながら現金だ。
「しかしひとりでは危ないだろう。転んで頭を打って、発見されるのが遅くなりでもしたら、命の保証はないぞ?」
「……!!」
命の保証はないぞは、これーーー!?!?
よかった! 私の王宮を勝手にうろうろするような不届き者は今すぐ処するぞ! じゃなかったーーー!?
「よかったーー!!」
「いや、よくないぞ。1人で出歩いてなにかあったらどうする。今後は誰かに供をさせよ」
「……」
えー、それはやだなー、とか思ってたら、うっかり王太子様の言葉を無視するような沈黙ができてしまっていた。
え、しまった! どうしよう! 今度こそ処される?
「どうした。供を連れるのは嫌か? もしや侍女たちになにか問題でも――」
「いえ! 違うます!」
あ、焦って噛んだ。
ぼくが独り歩き自粛要請に渋い返事をしたせいで、侍女さんたちが怒られたら悪い。
「侍女さんたちは、なにも問題ないです。……まぁ、ちょっと、1.2.3じゃないし3姉妹でも三つ子でもなくていろいろややこしいけど――」
あ、どうでもいいこと言っっちゃった。
「……ややこしい?」
「いえ! あの! ちょっとにぎやかなだけで、とくに問題は――」
あ、また余計なこと言ったような気が……。
「ああ、にぎやか、な……うむ」
けど、王太子様は妙に納得顔で、うむーとうなずいた。
王太子様、侍女さんたちがちょっとにぎやかってこと知ってるんだ。やっぱちょっと、そうだよね、うん。
「そうだな。たまにはのんびり歩きたいこともあるだろうな」
急にわかってくれた! 侍女さんたち、にぎやかでありがとう!
「はい!」
「う、うむ」
返事、勢いよすぎたかも。王太子様はちょっとひるんだみたいに目をパチっとさせた。
そうするとちょっとだけ、子供っぽくみえるというか年相応にみえて、なんだかホッとする。
「わかった。では、私が一緒に行こう」
「え」
予想のはるか斜め上からきた提案に、食い気味の「え」が口から飛び出した。
「……嫌か」
王太子様が気のせいかしょぼんとして見える。多分気のせいだけど。
「私では、駄目か」
あー、気のせいじゃないかも。まずい! ここで機嫌を損ねるようなことをしたら処刑いっちょくせん!
「ダメじゃないです! ぜんぜんありがとうございます!」
「そうか。では、今日はこれから予定があるから、明日の午後、迎えにいこう」
「え」
まさかの王太子様がぼくをお迎え。
「嫌か」
「ぜんぜんです! おねがいします! たのしみです!」
ぼくはスキルが少し上がった。王太子様の微かなしょんぼりを速攻で感知して対応するスキルを身に着けた。
「決まりだな。それまでいい子で待っているように」
「はい!」
「サファさまー! どちらにいらっしゃいますかー!」
「サファさまー!」
「サファさまー!」
そのとき、部屋の中から、ぼくを呼ぶ三重奏が聞こえてくる。
「ほら、侍女たちが探しているぞ。すぐに戻るといい」
「はい!」
ぼくは元気よく返事をして、元気よく振り返って、元気よく走り出して、
「あっ――!」
そのまま元気よく転けそうになった。
「あぶない!」
「あわわわ」
「ほら、ひとりは危ないだろう?」
「は、はい」
「急がずゆっくり戻れ」
「はい! ありがとうございました!」
ぼくは元気よく返事をして、今度は慎重に足を進めた。
「…………」
背中に、じーっと見守る視線を感じながら。
ちょ、あんまり偉い人に凝視されると……もぞもぞする、ような。
え、大丈夫? 背中に穴、開いちゃったり……しない?
あ、あとで侍女さんに、見てもらお……。
だだだ、大ピンチ! 大変!
記憶が戻った翌日、部屋から出て10歩のところで危機。
さっそくダメかも。
おどろくべき速さ。あまりにも素早いピンチの陥り方。
侍女さんたちの目を盗んでこっそり王宮内を探検すべく部屋を出て約5秒。
あまりにも短い探検、そして特大のピンチ。
「いいか。一歩も動くなよ」
ビックリするほど王子様な見た目の王子様が、厳しい顔でにらみつけてくる。
まだ、回廊の向こうの階段の途中にいるのに、威圧感がビシッと伝わってくる。
言われなくても動ける気はしない。あ、でも足はちょっと動いてるかも。動いてるっていうか震えてる。
「動けば命の保証はないぞ」
「ひえっ!」
言われた瞬間、ちょっと飛んだかな?ってくらい、ビクッとなった。
あああ、もうダメかもぉぉぉ!
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処されるのは10年後では? あまりにも早すぎて震える。
ぼく、部屋を出て10歩だし、まだなにもしてないのにぃぃ。
すんごい王子様な見た目の王子様は、この国の王太子様で、もうそれはそれは偉い。なんといっても次の王様だ。まだ12才とはいえ、とてつもない権力者なのだ。
この人が、こいつダメー!って言ったら、いつ処されてもおかしくない。
いま捕まって、「お前なんかダメだから処刑!」って言われたら、ぼく明後日くらいに終わりそう。明日処刑が決まって、明後日処刑。それくらいの速度でやっちゃえる偉さ。
「今そちらに行く」
10年後の処刑を回避するべく、今から「何も企んでなさそうないい子」を頑張るはずだったのにぃ……
はわわわわ……
前世の記憶が戻ってたった1日。
部屋から出てたって10歩。
ぼくの人生、原作の悪役王子様より超特急で終わりそう。
うう、こんなのあんまりだ。
これじゃあ死ぬために生まれ変わったみたいだし、思い出した意味もない。
「グスン……ひっく……」
そう思ったらしみじみ悲しくなってくる。じわっと目の端から水が漏れてきた。いったん漏れはじめたら、蛇口はないので水漏れっぱなしだ。すぐに、ほっぺたがべしょべしょになる。
「……っ!? なにを泣いている?」
「ひぇぇッ!」
びっっっくりした!びっくりしたびっくり――
「そなた、どうした?」
びっくりし過ぎてカチコチになったぼくの腕を、がば、とつかむ。その拍子に、両目の水漏れがパッと止まった。
お……王太子様、いつの間にここに? え、もしかしてこの国の偉い人って瞬間移動とかいけるタイプ? 魔法とか使っちゃう? 明後日じゃなくて今、処刑する? ぼく、処される?
「うえっ……、し――」
「し? なんだ?」
「死にたくない……うう……」
「えっ」
王太子様はぼくの腕をつかんだまま、めちゃくちゃビックリした声を出した。
え、どういうこと? 王太子様、自分で「動けば命の保証はない」って言ったのに、なんでそんな驚いてるの? 瞬間移動した拍子に忘れちゃった?
それならまだ生きられる? 可能性ある?
「――そうか、動いたら命が危ないと言ったからか」
違います王太子様。動けば命の保証はない、です。そこ重要なので。ニュアンスがだいぶ違います。
「もう大丈夫だ。心配しなくていい」
「え、ほんとに?」
がば、と顔を上げると、王太子様は面食らったみたいな顔になった。
しまった。ちょっと現金過ぎた? いやだって、ほら、ほんとかなって思ってつい。
「ああ、私が来たからもう安心だ」
「……」
ぼくはがっかりしてまた顔をふせた。同時に止まった蛇口からまたじわじわ水が漏れる。
「お、おい。なぜまた泣く? 大丈夫だと言っただろう」
「うぐっ……本当に?」
ちらっと見上げると、王太子様は眉をぎゅっとしてぼくを見ていた。
「うう……」
まだ蛇口が閉まらないぼくがグスグスしていると、王太子様はそうっと掴んでいた腕を放して……ちょっと優しくつかみ直した。
なんで。そのまま放してくれたらいいのに。
「そなた、なぜ一人で歩いている? 危ないだろう。侍女や護衛はどうした?」
ぎくっ! となって、蛇口が閉まった。
「部屋にいて、あの、ちょっとひとりで歩いてみたいな~って」
「なぜだ」
――王太子様、さっきからちらっと思ってたんですが、なんでそんな偉いじーさまみたいなしゃべり方? え、若く見えてもしかしておじいちゃ……や、それはないか。原作の設定だと12歳のはず。
「どうした? 怒らないから言ってみよ」
「あんまり、ぼくあの、部屋の外がわからないから知りたいなって」
怒らないと言われて、僕は勢いづいてすらーっと説明する。我ながら現金だ。
「しかしひとりでは危ないだろう。転んで頭を打って、発見されるのが遅くなりでもしたら、命の保証はないぞ?」
「……!!」
命の保証はないぞは、これーーー!?!?
よかった! 私の王宮を勝手にうろうろするような不届き者は今すぐ処するぞ! じゃなかったーーー!?
「よかったーー!!」
「いや、よくないぞ。1人で出歩いてなにかあったらどうする。今後は誰かに供をさせよ」
「……」
えー、それはやだなー、とか思ってたら、うっかり王太子様の言葉を無視するような沈黙ができてしまっていた。
え、しまった! どうしよう! 今度こそ処される?
「どうした。供を連れるのは嫌か? もしや侍女たちになにか問題でも――」
「いえ! 違うます!」
あ、焦って噛んだ。
ぼくが独り歩き自粛要請に渋い返事をしたせいで、侍女さんたちが怒られたら悪い。
「侍女さんたちは、なにも問題ないです。……まぁ、ちょっと、1.2.3じゃないし3姉妹でも三つ子でもなくていろいろややこしいけど――」
あ、どうでもいいこと言っっちゃった。
「……ややこしい?」
「いえ! あの! ちょっとにぎやかなだけで、とくに問題は――」
あ、また余計なこと言ったような気が……。
「ああ、にぎやか、な……うむ」
けど、王太子様は妙に納得顔で、うむーとうなずいた。
王太子様、侍女さんたちがちょっとにぎやかってこと知ってるんだ。やっぱちょっと、そうだよね、うん。
「そうだな。たまにはのんびり歩きたいこともあるだろうな」
急にわかってくれた! 侍女さんたち、にぎやかでありがとう!
「はい!」
「う、うむ」
返事、勢いよすぎたかも。王太子様はちょっとひるんだみたいに目をパチっとさせた。
そうするとちょっとだけ、子供っぽくみえるというか年相応にみえて、なんだかホッとする。
「わかった。では、私が一緒に行こう」
「え」
予想のはるか斜め上からきた提案に、食い気味の「え」が口から飛び出した。
「……嫌か」
王太子様が気のせいかしょぼんとして見える。多分気のせいだけど。
「私では、駄目か」
あー、気のせいじゃないかも。まずい! ここで機嫌を損ねるようなことをしたら処刑いっちょくせん!
「ダメじゃないです! ぜんぜんありがとうございます!」
「そうか。では、今日はこれから予定があるから、明日の午後、迎えにいこう」
「え」
まさかの王太子様がぼくをお迎え。
「嫌か」
「ぜんぜんです! おねがいします! たのしみです!」
ぼくはスキルが少し上がった。王太子様の微かなしょんぼりを速攻で感知して対応するスキルを身に着けた。
「決まりだな。それまでいい子で待っているように」
「はい!」
「サファさまー! どちらにいらっしゃいますかー!」
「サファさまー!」
「サファさまー!」
そのとき、部屋の中から、ぼくを呼ぶ三重奏が聞こえてくる。
「ほら、侍女たちが探しているぞ。すぐに戻るといい」
「はい!」
ぼくは元気よく返事をして、元気よく振り返って、元気よく走り出して、
「あっ――!」
そのまま元気よく転けそうになった。
「あぶない!」
「あわわわ」
「ほら、ひとりは危ないだろう?」
「は、はい」
「急がずゆっくり戻れ」
「はい! ありがとうございました!」
ぼくは元気よく返事をして、今度は慎重に足を進めた。
「…………」
背中に、じーっと見守る視線を感じながら。
ちょ、あんまり偉い人に凝視されると……もぞもぞする、ような。
え、大丈夫? 背中に穴、開いちゃったり……しない?
あ、あとで侍女さんに、見てもらお……。
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