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「信じらんねえ」
バス停で紀子を拾った朋之は、車を走らせながら呟いた。
「何だよ、あれって」
「それって、独り言?」
真剣な目で前の車のテイルランプを睨みつけながら呟く朋之に、紀子が問う。
「明の顔してんのに、何なんだよ、あれ? 何が“ひかる”だよ。どっからどう見たって明じゃんか」
ぶちぶちとぐちる朋之に、紀子はくすくすと笑った。
どうやら冷静だったのは愛しい“明”の前でだけで、本音としてはどこかに苛立ちをぶつけたい心境らしいのを悟った紀子は、
「まあまあ、これもちょっとしたイベントだと思っちゃえば?」
と軽く返す。
「イベントだあ? そんな簡単なモンかよお。あれじゃあまるで記憶喪失だし、しかも恋人である俺のことだけすっぱり忘れてるって言う最悪パターンだぜ? 頭痛いよ、ほんと」
朋之は大きく溜息を吐いた。
出会ってから一年ちょっと。
駐車場で見かけた時に一目惚れというものを初体験した朋之にとって、オトコが相手だなんてことも初体験で。
それでもたまたまコンパで知り合った内海紀子が明と同期で仲がいいってことを聞き、がむしゃらに追いかけて何とか恋人の座を射止めたのだ。
苦労して苦労して、どっちかというとぽやんと何も考えていないような明に“好き”という感覚を教え込むことだけでも一苦労だったのに、それを最初からやり直せと言われているような気がして、朋之としては脱力しないではいられない。
「やっと、だぜ? やっとのことで明が俺に対して何も構えないで“好き”とか言ってくれるようになってたのに。あの苦労が水の泡かよ?」
好きだけど朋之はオトコだし。
いつもそんな風に一歩引いた感じでしか付き合えなかった頃。
何度も何度も根気良く、“そんなことは関係ないし、俺にとっては男とか女とかじゃなくただ明という人間のことが好きなんだ”と言い続け、ようやく掴んだ幸せの日々だったのに。
よりにもよって“ひかる”は言うのだ。
“なんで男なんかの恋人連れてないといけないんだ?”
その言葉を聞いた瞬間、朋之の頭の中は真っ白になった気がした。
確かに自分は男だし、明だって男だ。
けれど、好きになってしまったものは仕方がないじゃないか。
「でもさ、朋くん」
黙り込んでしまった朋之に、紀子が言葉をかけた。
バス停で紀子を拾った朋之は、車を走らせながら呟いた。
「何だよ、あれって」
「それって、独り言?」
真剣な目で前の車のテイルランプを睨みつけながら呟く朋之に、紀子が問う。
「明の顔してんのに、何なんだよ、あれ? 何が“ひかる”だよ。どっからどう見たって明じゃんか」
ぶちぶちとぐちる朋之に、紀子はくすくすと笑った。
どうやら冷静だったのは愛しい“明”の前でだけで、本音としてはどこかに苛立ちをぶつけたい心境らしいのを悟った紀子は、
「まあまあ、これもちょっとしたイベントだと思っちゃえば?」
と軽く返す。
「イベントだあ? そんな簡単なモンかよお。あれじゃあまるで記憶喪失だし、しかも恋人である俺のことだけすっぱり忘れてるって言う最悪パターンだぜ? 頭痛いよ、ほんと」
朋之は大きく溜息を吐いた。
出会ってから一年ちょっと。
駐車場で見かけた時に一目惚れというものを初体験した朋之にとって、オトコが相手だなんてことも初体験で。
それでもたまたまコンパで知り合った内海紀子が明と同期で仲がいいってことを聞き、がむしゃらに追いかけて何とか恋人の座を射止めたのだ。
苦労して苦労して、どっちかというとぽやんと何も考えていないような明に“好き”という感覚を教え込むことだけでも一苦労だったのに、それを最初からやり直せと言われているような気がして、朋之としては脱力しないではいられない。
「やっと、だぜ? やっとのことで明が俺に対して何も構えないで“好き”とか言ってくれるようになってたのに。あの苦労が水の泡かよ?」
好きだけど朋之はオトコだし。
いつもそんな風に一歩引いた感じでしか付き合えなかった頃。
何度も何度も根気良く、“そんなことは関係ないし、俺にとっては男とか女とかじゃなくただ明という人間のことが好きなんだ”と言い続け、ようやく掴んだ幸せの日々だったのに。
よりにもよって“ひかる”は言うのだ。
“なんで男なんかの恋人連れてないといけないんだ?”
その言葉を聞いた瞬間、朋之の頭の中は真っ白になった気がした。
確かに自分は男だし、明だって男だ。
けれど、好きになってしまったものは仕方がないじゃないか。
「でもさ、朋くん」
黙り込んでしまった朋之に、紀子が言葉をかけた。
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