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月那

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 早瀬から輝の復帰の知らせが入ったのは、前の電話から三日後だった。
「かなり、キケンだろうけどとりあえずこれから迎えに行く」
 そんな怖い一言を残して電話は切れる。
「かなりキケンってどういうことだよお?」
 回線は切れているのに、ひかるは思わず電話に向かって叫んでいた。
「自然の猛威ってヤツじゃない?」
 そんなひかるに朋之はのほほんと答える。
「うわ、他人事だと思ってっだろ?」
「思ってねーよ、ばか。違う。俺が全身全霊で護るから安心してろってこと」
 思わず照れてしまうような言葉を朋之がしれっと言った。
「この部屋にずっと篭ってたからさ、不自然な事故なんて起こらなかっただろう?」
「でも俺、昨日風呂場でこけたじゃん」
 散々えっちした挙句に足が覚束なかったひかるは、昨夜風呂場で泡に滑って転んだのである。
 幸い大事には至らなかったが、打ち所が悪ければ下手をすると死んでいたかもしれない。
「あれは俺のえっちで腰が砕けてたからなだけ。うーん、我ながら自分のテクに参ってしまうね」
「エロじじい、勝手に参ってな」
「ほんっとに、口の悪いコだねえ」
「うるせ」
 軽口を叩いているけれど、それでもこんなくだらない話でもしていないと泣いてしまいそうだった。
 だって、これからあと少しすればこの男と過した甘い時間は総て白紙になってしまうのだ。
 何もなかったことになる。
 それは、朋之という男がひかるにとってただの通りすがりの人間になってしまうということ。
 こんなに愛し合ったのに。あんなに好きだと思ったのに。
「まあ、さ。とにかく自然ってヤツが怒ってるのは確かだよ。いつまで経っても元のサヤに収まってくれない“明”って存在は、事故でころっと死んでもらおうにもその事故を起こせない状況にいる。このまま戻らないなら、何だかわかんないけど結構面倒なことをやらなきゃなんないハメになる」
 朋之はベッドの上でひかるを足の間に挟んだ状態で壁に凭れかかり、ひかるの体の感触を楽しみながら言う。
「かーなりイライラしてんじゃないの? で、そんなイライラ状態な自然ってヤツは、この部屋から出たひかるのことを、待ってましたとばかりに殺そうとしちゃうかもしんないわけだ」
「朋之……おまえ、なんでそんな怖いこと、平気で言えちゃうわけ?」
 朋之の胸に凭れかかりながら、ひかるがぼやいた。
「怖いことにしないからだよ。さっきから言ってるだろ。絶対におまえのことは俺が護るって」
「……言ってて、照れない?」
「照れません」
 少し頬を赤らめたひかるを、朋之はもう一度しっかりと抱きしめた。
「このまま時間が止まればいいのに」
「……うん」
 それは叶わない願い。
 時間は流れているのだ。
 このまま止まるなんてことはない。
 それどころか、輝によって時間は巻き戻されてしまうのだ。
 二人が出会わなかった時間へ。
 二人が結ばれない時間へと流れを戻すために。
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