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あのエレベータのある部屋だ。
そこに入ると輝はきっちりと扉を締め切り、ほっと息を吐いているひかるへと向き直り、落ち着いた笑顔を見せた。
「ふう、良かった。何とか間に合ったね」
輝は言ってエレベータの前にひかるを立たせた。
「時間ないから、すぐに始めるね」
時計を見ると、あと三分で十六時になろうとしていた。
「一個、訊いてもいい?」
ひかるが茫然としながら輝に問う。
「三分以内ならね」
エレベータの中にひかるを入れ、輝はパソコンをいじりながら答える。
恐らく組んであるプログラムを動かそうとしているのだろう。
「何で、早瀬と輝は一緒にいるの?」
輝が“時間の枠”の外にいる、ということは理解できた。
それだけの頭を持っているからだろう。
けれど、じゃあ早瀬は?
「愛してるから」
エレベータのドアが閉まりかける。
ひかるはそれを手で停めた。
「僕一人じゃあ、世界は広すぎるから。早瀬のこと、巻き込んだ。いいよって、言ってくれたから」
輝は言って、年相応の微笑みを見せる。
「関谷さん。閉めるよ」
「待って! 俺も一緒に、巻き込んで!」
時間の枠から出られたら、ひょっとしたら自分も同じようにこの世界に残れるのではないだろうか?
この世界に残れるならば、朋之と別れることなく一緒にいられる。
「だめだよ」
微かな希望が見えたけれど、輝の一言で却下される。
「何で?」
「不幸になるだけだから。関谷さんは幸せなんだから。あきらさんだって、ひかるさんだって、幸せな人生を約束されているんだから。だから、レールから外れちゃ、いけない」
輝の目は切なげで、哀しげで、ひかるのそれ以上の言葉を完全に停めてしまった。
「ひかるさん。もう、限界です」
「……」
パソコンから電子音が一つ響いた。
そして、エレベータの扉を停めていたひかるの手をどける。
「心配しなくても大丈夫です。次に扉が開いたら、何もかも忘れていますから」
輝の言葉と同時に、扉が閉まってゆく。
「さようなら、関谷さん。紀子さんと、お幸せに」
閉ざされるドアに消えた輝の表情は笑顔で、ひかるはただそれを見つめるよりなかった。
「……」
かくん、とエレベータが揺れ、同時に鳴る携帯メールの着信音。
ひかるがポケットから自分の携帯を取り出すのと、エレベータの扉が開くのが同時だった――。
そこに入ると輝はきっちりと扉を締め切り、ほっと息を吐いているひかるへと向き直り、落ち着いた笑顔を見せた。
「ふう、良かった。何とか間に合ったね」
輝は言ってエレベータの前にひかるを立たせた。
「時間ないから、すぐに始めるね」
時計を見ると、あと三分で十六時になろうとしていた。
「一個、訊いてもいい?」
ひかるが茫然としながら輝に問う。
「三分以内ならね」
エレベータの中にひかるを入れ、輝はパソコンをいじりながら答える。
恐らく組んであるプログラムを動かそうとしているのだろう。
「何で、早瀬と輝は一緒にいるの?」
輝が“時間の枠”の外にいる、ということは理解できた。
それだけの頭を持っているからだろう。
けれど、じゃあ早瀬は?
「愛してるから」
エレベータのドアが閉まりかける。
ひかるはそれを手で停めた。
「僕一人じゃあ、世界は広すぎるから。早瀬のこと、巻き込んだ。いいよって、言ってくれたから」
輝は言って、年相応の微笑みを見せる。
「関谷さん。閉めるよ」
「待って! 俺も一緒に、巻き込んで!」
時間の枠から出られたら、ひょっとしたら自分も同じようにこの世界に残れるのではないだろうか?
この世界に残れるならば、朋之と別れることなく一緒にいられる。
「だめだよ」
微かな希望が見えたけれど、輝の一言で却下される。
「何で?」
「不幸になるだけだから。関谷さんは幸せなんだから。あきらさんだって、ひかるさんだって、幸せな人生を約束されているんだから。だから、レールから外れちゃ、いけない」
輝の目は切なげで、哀しげで、ひかるのそれ以上の言葉を完全に停めてしまった。
「ひかるさん。もう、限界です」
「……」
パソコンから電子音が一つ響いた。
そして、エレベータの扉を停めていたひかるの手をどける。
「心配しなくても大丈夫です。次に扉が開いたら、何もかも忘れていますから」
輝の言葉と同時に、扉が閉まってゆく。
「さようなら、関谷さん。紀子さんと、お幸せに」
閉ざされるドアに消えた輝の表情は笑顔で、ひかるはただそれを見つめるよりなかった。
「……」
かくん、とエレベータが揺れ、同時に鳴る携帯メールの着信音。
ひかるがポケットから自分の携帯を取り出すのと、エレベータの扉が開くのが同時だった――。
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