dawn

月那

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「雪」
 達也たつやが一言呟いた。

 暖房をしっかりと効かせた俺の部屋で、達也は毛布から顔を出している。
 胡座あぐらをかいた俺の足の間にちょこんと座る恋人を、背中から抱きしめて。
 だんだんと白んでいく空を眺めている彼の素肌はいつものように少し冷たい。
 体温が俺より低いのだ。
 夜明けのこの時間は、どれだけ暖房を効かせていてもやはり少し寒いのだろう。
 少し震えたように思えたので、俺は達也を抱く腕の力を少し強めた。

 と、どうかしたのか、と丸い目をより大きくして俺を振り返った。
「寒いんじゃないのか?」
「平気。けい、あったかいし」
 もそもそと毛布の中に顔を半分埋め、俺に寄りかかる。
 確かに平熱が三十七度近い俺は達也にしてみれば大きなカイロみたいなものだろう。
 裸で触れているからその熱もしっかりと伝わっているらしく、俺が触れている部分は少しずつ暖かくなっているのがわかった。

 箱入り息子の達也を、年末年始、俺のマンションに無理矢理引きとめたのは、一年前に叶わなかった"年越しえっち"なんぞをやりたかったからで。
 ガッコが冬休みに入ってからずっとこの部屋に入り浸ってくれていた達也だけれど、さすがに押し詰まってきた一昨日辺りから達也の両親から何度も実家へと呼び戻す電話が入っていたのは俺も気付いていた。
 なんだかんだとはぐらかしていたようだが、親に逆らえるヤツじゃないことはよく知っている。
 きっと心苦しいのだろう、時折俺に気付かれないように溜息を吐いていた。
 それでも俺の我侭をきいてくれようとしているのがわかったので、俺も少し辛かった。

「眠らないでも大丈夫か?」
 顎の辺りにある達也の頭頂部。
 その頭が黙ったまま頷いた。

 総て俺の我侭に過ぎない。
 ストレートの達也を根っからのゲイである俺に振り向かせたのも、年を越す間ずっと一緒にいたいと言って郷里に帰らせなかったのも、初日の出を一緒に観たいから夜明けまでずっと起きていようと言ったのも。
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