dawn

月那

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「だいぶ、明るくなってきたね」
 空の明るさが雪に反射しているのがわかる。
 きっと、雪はもう止んでしまうだろう。

 昨日から積もりに積もった雪だけれど、今日このまま晴れてしまえば融けてしまうだろう。
 この町は、達也の生まれた郷里のように、冬中積雪があるような町ではない。

 束の間の積雪。
 そして、束の間の幸福。

 きっと、達也は郷里に帰ってしまうだろう。
 俺の愛を信じられないわけじゃない、それはわかっている。
 けれど、達也には継がなければならない家がある。
 それを捨てることはできない。

 今は俺の気持ちに答えてくれている。
 今は、俺に"オレもずっとずっと圭と一緒にいたい"と言ってくれる。
 けれど、達也はそれができる人間じゃないのだ。
 誰よりも人に気を遣い、誰よりも自分を生んでくれた両親を愛し、誰よりも自分が育ってきた郷里を愛している。
 そんな達也だからこそ、俺は惚れてしまったのだから。

 きっと、この幸福な温もりは束の間のもの。
 雪が融けるように、達也の気持ちはすんなりと融けてなくなってしまうだろう。
 それで、いいのだ。

 俺は我侭だから。
 俺は求めてしまうから。
 何もかもを捨て、俺だけを見てくれるように達也を縛り付け、俺なしでは生きていけないようなどうしようもない人間に、きっと俺は達也をしてしまうから。

 だから、今はこうして一緒にいたい。
 束の間の幸福を、束の間の温もりを、ただただ味わっていたい。

「あ」
 日が、昇る。
 ゆっくりと、雲の切れ間から総てをその光で融かしてしまうほどの力強い輝きを持った太陽が、静かに静かに昇っていく。

 俺は達也の手を握った。
 両方の手で、達也の両の手をしっかりと握った。

 放したくない。
 放したくないのは当然の気持ちだ。
 日が昇るに連れ、自分の中のどうしようもない独占欲が達也に向かおうとしているのに気付いた。
 達也のこの手を放したくない、という自分の我侭をどこまでも通したいと思わずにいられなかった。
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