dawn

月那

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「心配、しないで」
 口唇の間で、達也がそっと言った。

「オレ。ちゃんと傍にいるよ? ずっと、ずっと圭の傍にいる」
 優しい瞳。
 まるで、俺の心の中を総て見通していたかのような。

「いっぱい、いっぱいいろんなことあると思う。母さんとか父さんとか、おばあちゃんとかおじいちゃんとか。オレんちのこと、すっごい面倒だと思う」
 達也の、俺の体温で十分に温められた掌が、少しだけ冷えた俺の頬を包み込む。

「圭はさ、そういう問題いっこいっこ片付けるの、イヤ?」
 俺の唾液で少し濡れた達也の口唇が、ゆっくりと動いて言葉をつむぐ。
 不思議な言葉を。

「オレは頑張るよ? 一緒にいたいし、一緒にいるつもりだから。頑張って頑張って、一生懸命頑張ったらきっと、神様だってわかってくれる。そうしたら、たぶんきっと大丈夫。オレ、だから頑張るよ」

 温かな言葉。何よりも優しく柔らかな言葉。


 冷え切っていたのは、本当は俺の方だったのかもしれない。
 暖房のがんがんに効いたこの部屋の中、愛しい愛しい達也を信じられなくて。凍ってしまっていたのは俺の心かもしれない。
 だって、今、こんなに温かい。
 達也の言葉一言一言に、俺の中の何かがゆっくりと融かされて行く。
 じんわりと、温もりが伝わってくる。

「ずっと、ずっと一緒にいよう」

 太陽が昇ると融けるのは、この町の中の雪だけじゃないらしい。
 どうやら、俺の心の中にうずたかく降り積もっていた得体の知れない凍てついた冷たい雪は、達也という太陽によってぐずぐずに融かされてしまったようだ。

「愛してるよ、圭」
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