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18 再会3
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「不思議そうな顔をしてるな。なぜ知ってるのかと訊きたいんだろう?」
「……っいえ、別に」
「なるほど、乳母の言うとおりだ。きみは自分の気持ちを隠したがる」
「乳母って……マリベルに会ったんですか!?」
思わずレクオンにすがり付いた時、アンネが入ってきて「お食事です」と告げた。彼女が引いてきたカートに温かな料理が並び、ふわふわと白い湯気がのぼっている。
「まだ夕食をとっていなかっただろう? なにか食べたほうがいい」
「レクオン様は……」
「俺のことは気にしなくていいから。さあ、こっちへおいで」
レクオンは自ら椅子を引き、シーナに座るようにいう。公爵様に給仕をさせるわけにはいかず、シーナは慌てて席についた。
「あの、自分でやりますから」
「ちゃんと食べるか見てるからな。残すんじゃないぞ」
まるで親のような台詞に、シーナは笑いそうになった。そう言えば子供の頃、マリベルにも同じことを言われた覚えがある。レクオンは向かい側でテーブルに肘をつき、ぼんやりとシーナの様子を眺めていた。
「マリベルはルターナが死んだときに解雇されたんだ。きみを逃がしたという罪でな」
「そんな。わたしが勝手に逃げたのに……」
「ケルホーン伯はそう思わなかった。必ず手引きした人間がいるはずだと考え、使用人を集めて知っているものは名乗り出ろと叫んだらしい。誰もいなければ、全員を鞭で打つと」
「鞭で――」
ふいに背中がズキリと痛み、シーナは無意識に手で傷に触れた。今でも打たれたときの感触や痛みは覚えている。鞭と聞くだけで、体が震えてしまう。
「どうした?」
「い、いえ……。じゃあマリベルは、自分から言い出したのですね」
「ああ。使用人すべてを巻き込むわけにはいかないから、自分からクビにしてくださいと言ったらしい。マリベルが王都から出ることなく働いていたのは幸運だった。今は俺の城にいる」
マリベルは無事なのだ。シーナは安堵して食事を続けた。本当はレクオンにいつマリベルと会ったのかとか、どうして公爵になったのかと訊きたかったが、また怖いレクオンに戻るのかと思うとできなかった。それに、簡単に訊いてはいけないような気もする。
ルターナもシーナも王宮でのレクオンを知らないままだったのに、王家の複雑な事情を今さら教えてくれというのはあまりにもずうずうしい。自分たちは三年もレクオンを騙していたのに……。
「食べ終わったのなら、もう休め。寝室はこっちだ」
また手を握られて部屋の奥へ進むと、天蓋つきの巨大なベッドが部屋の中央に置かれている。枕元に置かれたたくさんのクッションは、どう見てもひとり用ではない。シーナはガチガチに緊張して、ベッドの横で固まってしまった。
「おい、どうしたんだ。シーナ?」
「あっ、あの……わたしは長椅子で寝ますので……!」
レクオンは逃げ出そうとしたシーナを軽々と抱き上げ、ベッドへ無理やり寝かせる。シーナは真っ青になって目をつぶった。レクオンと一緒に馬車に乗ってから、こうなることは覚悟していたはずだった。でも実際にその瞬間を迎えたら怖くてたまらない。
広いベッドの真ん中でぶるぶる震えながら早く終わってと願ったが、いつまで待ってもレクオンは動かなかった。そして、ふわりと体の上に毛布をかけられる。
「……え?」
「逃げたりするなよ。俺はとなりの部屋にいるからな」
レクオンはおやすみと呟いて出て行ってしまった。変な心配をしていた自分が恥ずかしくなり、シーナは赤い顔でしばらくベッドの上を転がった。
「……っいえ、別に」
「なるほど、乳母の言うとおりだ。きみは自分の気持ちを隠したがる」
「乳母って……マリベルに会ったんですか!?」
思わずレクオンにすがり付いた時、アンネが入ってきて「お食事です」と告げた。彼女が引いてきたカートに温かな料理が並び、ふわふわと白い湯気がのぼっている。
「まだ夕食をとっていなかっただろう? なにか食べたほうがいい」
「レクオン様は……」
「俺のことは気にしなくていいから。さあ、こっちへおいで」
レクオンは自ら椅子を引き、シーナに座るようにいう。公爵様に給仕をさせるわけにはいかず、シーナは慌てて席についた。
「あの、自分でやりますから」
「ちゃんと食べるか見てるからな。残すんじゃないぞ」
まるで親のような台詞に、シーナは笑いそうになった。そう言えば子供の頃、マリベルにも同じことを言われた覚えがある。レクオンは向かい側でテーブルに肘をつき、ぼんやりとシーナの様子を眺めていた。
「マリベルはルターナが死んだときに解雇されたんだ。きみを逃がしたという罪でな」
「そんな。わたしが勝手に逃げたのに……」
「ケルホーン伯はそう思わなかった。必ず手引きした人間がいるはずだと考え、使用人を集めて知っているものは名乗り出ろと叫んだらしい。誰もいなければ、全員を鞭で打つと」
「鞭で――」
ふいに背中がズキリと痛み、シーナは無意識に手で傷に触れた。今でも打たれたときの感触や痛みは覚えている。鞭と聞くだけで、体が震えてしまう。
「どうした?」
「い、いえ……。じゃあマリベルは、自分から言い出したのですね」
「ああ。使用人すべてを巻き込むわけにはいかないから、自分からクビにしてくださいと言ったらしい。マリベルが王都から出ることなく働いていたのは幸運だった。今は俺の城にいる」
マリベルは無事なのだ。シーナは安堵して食事を続けた。本当はレクオンにいつマリベルと会ったのかとか、どうして公爵になったのかと訊きたかったが、また怖いレクオンに戻るのかと思うとできなかった。それに、簡単に訊いてはいけないような気もする。
ルターナもシーナも王宮でのレクオンを知らないままだったのに、王家の複雑な事情を今さら教えてくれというのはあまりにもずうずうしい。自分たちは三年もレクオンを騙していたのに……。
「食べ終わったのなら、もう休め。寝室はこっちだ」
また手を握られて部屋の奥へ進むと、天蓋つきの巨大なベッドが部屋の中央に置かれている。枕元に置かれたたくさんのクッションは、どう見てもひとり用ではない。シーナはガチガチに緊張して、ベッドの横で固まってしまった。
「おい、どうしたんだ。シーナ?」
「あっ、あの……わたしは長椅子で寝ますので……!」
レクオンは逃げ出そうとしたシーナを軽々と抱き上げ、ベッドへ無理やり寝かせる。シーナは真っ青になって目をつぶった。レクオンと一緒に馬車に乗ってから、こうなることは覚悟していたはずだった。でも実際にその瞬間を迎えたら怖くてたまらない。
広いベッドの真ん中でぶるぶる震えながら早く終わってと願ったが、いつまで待ってもレクオンは動かなかった。そして、ふわりと体の上に毛布をかけられる。
「……え?」
「逃げたりするなよ。俺はとなりの部屋にいるからな」
レクオンはおやすみと呟いて出て行ってしまった。変な心配をしていた自分が恥ずかしくなり、シーナは赤い顔でしばらくベッドの上を転がった。
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