【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま

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第一部 そのモフモフは無自覚に世界を救う?

18 霊山の絵本

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 セル様が私を抱っこして、みんなで階段を登って廊下に出た。庭師のようなラフな格好をしたおじさんが二人いて、手には犬用の散歩紐を持っている。

「ガイ達、お散歩の時間だぞ。坊ちゃまは休んでいてくださいね」

 おじさん達は慣れた手つきで親ビンたちの首輪に紐をつけ、廊下にあった大きな掃きだし窓から外に出て行った。やっぱり犬だから散歩が日課なんだな。ペラペラ喋ってると相手が動物だという事を忘れてしまうけど、確かに親ビンたちは犬だった。

「僕たちは図書室に行こうか。学校を休んだ分、しっかり予習しておかなくちゃ」

「ペエ」
(休んだのに勉強するなんて、本当に真面目な子だなぁ。私だったらラッキー!と叫んでダラけてるわ)

 セル様はいちど自分の部屋に戻って教科書やノートらしき物を持ち、反対の手には私を抱えて歩き出した。昨日まで熱があったとは思えないほど軽い足どりで。

 このお城は学校の校舎みたいに渡り廊下であちこちが繋がっているらしく、セル様は日が当たる明るい廊下を渡って半球状の屋根がかぶさった建物に入った。

「ペエ……!」
(広い! 一階にも二階にも本がびっしりあるわ。学校の図書館より広いかも……!)

 ドアを開けると室内は吹き抜けになっていて、どの本棚にもびっしりと本が入っている。少しひんやりした空気と古い本の匂いが、いかにも図書館という雰囲気だ。窓際の明るい場所には机と椅子、そして直射日光が当たらない場所に本棚が置かれていた。

「僕はここで勉強するから、ペペも絵本を読んでていいよ。文字が少ない本なら読みやすいでしょ?」

 セル様は子供用の本棚から、ほとんど絵ばかりの本を何冊か持ってきてくれた。昨日セル様が読んでくれた本もついでに持ってきたから、文字の勉強でもしておく事にする。

(えぇと……この単語は、『私』とか『僕』って意味だよね。文法は英語に似てるから、単語さえ覚えたら何とかなりそう。まぁそれでも、かなり量が多いけど)

 何冊か見比べているうちに、良く使われる単語が分かってきた。見えない力が私を助けているのかと思うほど、するすると文字が頭の中に入っていく。文法が英語に似てるのも運が良かった。爽真に追いつきたくて必死に勉強してきたけど、あの努力は無駄じゃなかったんだ。

「んんーっ……。はぁ、この問題は分からないなぁ。兄上が帰ってきたら教えてもらおっと。ペペ、何か読んであげようか?」

「ペエ!」
 しばらく勉強していたセル様が大きく伸びをして、椅子から立ち上がって私の横にやってきた。一冊の本を差し出すと、セル様が懐かしそうに目を細める。

「世界の始まりについて書かれた絵本だね。僕も兄上になんども読んでもらったっけ……。“神様は大きな手で土をかき分け、世界を四つに分けました。そして砂遊びをするように一つずつ山を作り、大地を守る聖なる獣を棲まわせたのです”――」

(つまり、この世界には大陸が四つあるってことね。んで、大陸のどこかに霊山があって、聖なる獣が棲んでると……。プロクスみたいな奴だったらちょっとやだな)

「次のページに行くよ。“四つの山は霊山と呼ばれ、神様はそれぞれに名前をつけました。東の大陸にある霊山はキエフ。西はルゥラ。北はトドゥガル、そして南はオンブラフルです。人々は聖なる獣を神様のようにおそれ、霊山には近寄らないようにしました”――」

「ペエ?」
(あれ? 霊山って観光地じゃないの?)
 てっきり血の池地獄とか賽の河原とかがあって、温泉なんかも湧いているんだろうと思ったんだけど。私の勝手な思い込みだけど。

「どうかしたの?」
「ペェエ」
(なんでもないです。セル様、続きをお願いします)
 フリッパーでページをぺらりと捲る。

「ええと……。“聖なる獣の体は真っ白な羽毛で覆われ、広げた両翼からは魔を滅する光を放つと言われています”――。この絵、ちょっと怖いよね」
「ペエ」

 見開きにでかでかと描かれた聖獣は、険しい表情でクワッ!とくちばしを開けている。一見すると不死鳥に似てるように思うけど、体は赤じゃなくて白だ。雪みたいに真っ白。

「失礼いたします。セルディス様、昼食をお持ちしましたよ。ペペの分も持って参りました」
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