幻魔少女物語〜神様の失敗で人間から異界人になった8人の話〜

campanella

文字の大きさ
6 / 58
第一章 運命の始まり

第4話  由紀の後悔

しおりを挟む
「ただいまー」
 誰もいない玄関で、私は言った。
「んにゃー」
 足元で何かが鳴いた。
 私の口元が緩む。
 飼い猫の「とらすけ」だ。続けて、白猫の「ホワイト」、黒猫の「くろみ」が駆けてくる。
「いい子にしてた」
 私が聞くと、3匹そろって、
「な~」と答える。
 足元でじゃれあっている猫たちをかき分け、居間に入る。部屋はまるで澄み切った空のように、何もなかった。強いて言えば、生け花くらいかな。
 私の家はもうすぐ築60年で、ひっそりとした佇まいをしている。
 それはもう不自然なくらいで、友だちが初めてうちに来た時に必ず家の前で、キョロキョロと歩くほどだ。
 私は、畳の上に無造作にスリーウェイバッグを置いた。そして、その日の宿題を速やかに終わらせる。
 すべて終わった時には、5時を過ぎていた。もうすぐ晴馬が帰ってくる。
 晴馬は、小学校の野球チームのピッチャーだ。そして、3か月後の県大会の出場者でもある。どこも一緒だとは思うが、大会に向けて猛特訓している。もちろん、晴馬も練習中だ。だから、最近は家族の中で私が一番早く帰宅するようになった。毎日誰もいなくて暇だった。
 ドサッと畳の上に寝転がる。
「なーんか面白いことないかなー」
 その時だった。床の間ってさ、なんか棚みたいなのあるじゃん?あの上。そこに一枚の写真があることに気付いた。写真を手に取ると、そこには、私ともう一人のまぶしい笑顔があった。そこで私は思い出す。
「そうだ。これは、加奈と一緒に遊園地に行った時の写真だ」
 一緒にジェットコースターに乗って、ポップコーン食べて、帰りの車では一緒に寝て・・・。
 楽しかった毎日。また、こんな輝かしい生活ができるだろうか。胸が躍るし、同時に痛む。
 私たちは今、ある意味けんか中だ。それを長く続けてはいけないということは判っている。でも、どうしても心の中の なにか が意地を張ろうとしているのだ。それで、今日も加奈につらくあたってしまった。それが心残りでどうしようもない。
「ああ、加奈。私はまた一緒に楽しみたいよ。昔から同じ通学路を通って、笑って。毎日のように、お互いの家で遊んで。戻りたいなあ、あの頃に。楽しかった、あの毎日に」
 なんだか、訳もわからず詩を唱えるようにつぶやいた。頬が涙のせいで冷たくなっている。
 足が、自分を支える力を失う。そのまま私は崩れ落ちた。
「かなあ・・・。うう・・・」
 ガチャリと音がして、晴馬が帰ってきた。
 それでも泣き続けた。弟にもはばからず、ひたすらに、ひたすらに。
 こうやって泣き叫ぶ日が何度続くのだろう。昨日も、おとといも、一週間前も。
 ずっと泣いてばかりいて、でも何もできなくて。
 どうしたらよいのだろう。どうしたら、どうしたら!
 とりあえず場所を変えよう。
 私は振り返って、
「お帰り」とだけ言うと、自室に退散した。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

処理中です...