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第一章 家族編
1話 家族
僕は姉の入院している病院“レッド”に来ていた。姉の好きな苺を手に持って。普通りんごとかなのだろうけど、姉は生憎りんごは塩につけてすぐのしか好まないのだ。
ちなみにこの病院は普通のではない。世界唯一の奇病専門病院なのだ。通称__“奇病専門病院だ。そのため、とても静かだが院内はほとんど満床だ。しかし奇病者は世界でも少数のためいじめの対象になったり、奇病のならでもレアと言われたり、希少価値の高い奇病者は事件という名の誘拐に遭いやすい。姉はその1人、鉱石病の患者_csだ。しかも現在ステージ4。余命はおそらく二年もない。今はもう12月。僕の高校の卒業式までは残り三ヶ月弱。唯一の家族である姉。今のところ卒業式には来てくれるようだ。もう一度その話をしようと来たものの、姉の病室には知らないcsが入っていた。
「あの…僕の姉の…一ノ瀬梓は…」
通りかかったレッダー(レッドに所属する医者、また戦闘医)に声をかける。
「ああ、一ノ瀬さんね。彼女ならつい先程…言いづらいのだけど…5病棟に移られたわ。」
「もしかして…」
「ええ、ステージ5に進行しているわね。予定より五ヶ月も早まるなんて…」
ああ、卒業式は留守番してもらおう、と他人事のような他人事じゃないようなことを思いながら、5病棟へ向かっていた。
カラカラ…と個室の戸を開ける。冬なのにぽかぽかと暖かい陽気が姉へ降り注いでいるのは南側の部屋だからだろう。俺に気がついた姉は相変わらず子供のように笑い、大人のように手を振った。
「姉さん久しぶり」
「トーリもね、風邪は引いてない?」
「全く元気だよ。姉さん体の方は…」
「なんとか大丈夫かな…前よりも体は不自由で迷惑かけるかもしれないけど」
「迷惑じゃないよ?僕は姉さんが笑ってくれるのが好きなんだから。」
姉は僕を愛してくれる唯一無二の存在。人当たりもよく、優しい姉は奇病だからといっていじめられることも疎まれることもなかった。逆にみんなが姉を好きになり、姉に手を差し伸べてくれる。もちろん全て丁重に断るのが姉だ。姉は長くは無いだろう自分より僕を今後救ってほしい戸いう。でも僕も姉を尊敬してるが故に断りを入れる。それだけでは無い。自分で言うのも悲しいが僕は姉とは真反対に位置する存在だ。周囲の人は僕よりも姉に生きてほしいと思っているだろう。僕も思う。姉がなぜ苦しまなければいけないのか。優しい姉が。僕でよかったのでは無いかとよく思う。そんなこと意味がないと分かってはいるが。
「姉さん、苺食べれる?」
「まだ食べることはできるよ、その代わり食べさせてね」
「はいどうぞ」
「ど~もっ」
パクリと食べる姿が入院前の姉と重なる。鉱石病の代表的な病症の鉱石化によって色鮮やかな鉱石に身体が包まれたこと以外はほとんど何も変わらない姿。僕がいるから笑っているのか、心から笑っているのかは分からない。でも探ったら戻れないと言うのも分かっているので何も言わない。思えば、入院前より笑っている姿を見るのが多い気がする。考える素振りも何かに浸る姿もだんだんと少なくなっている気がする。
「姉さん卒業式のことなんだけど」
姉はピクリと反応し顔をあげた。その顔は姉とは思えない表情をしていた。不安にまみれた顔。何年ぶりだろうか。母さんと父さんが還らぬ人となってしまったと分かった時以来だろうか。いや、僕が中学の頃両親を亡くし、さらに姉が発病し、クラスの奴らにいじめを受け、精神的にフルボッコにされて不登校になった時以来かもしれない。
「病院で…「待って」」
「姉さん」
「まだ、大丈夫だから」
「でも、いつまた悪化するか分からないよ。僕は」
「私はもうトーリの成長を見ることが生きがいになっているの。お願いよ」
「…」
「“最後のお願い”なの」
「姉さん…」
普通こう言う時は“一生のお願い”と言うのではないのだろうか。僕の姉は“お願い”や“頼み事”を聞くことはあっても、自分から何かを望んだことはなかった。だからこそ違和感を感じたのだ“最後”なんて姉さんの口から一度も聞きたくなかった。
「分かったよ。だけどこれ以上悪化したらダメだよ。だから無理しないでね」
「分かってるわよ。まだ大丈夫…」
姉は小さく“きっと”と呟いた。僕はそれを聞こえなかったふりをするしかなかった。なんとなく、そうした方が姉も辛くないと思ったからだ。なんて自分勝手な弟だ。でも姉はそんな僕をちゃんと家族みてくれるのだからそれくらいいいとも思う。
ちなみにこの病院は普通のではない。世界唯一の奇病専門病院なのだ。通称__“奇病専門病院だ。そのため、とても静かだが院内はほとんど満床だ。しかし奇病者は世界でも少数のためいじめの対象になったり、奇病のならでもレアと言われたり、希少価値の高い奇病者は事件という名の誘拐に遭いやすい。姉はその1人、鉱石病の患者_csだ。しかも現在ステージ4。余命はおそらく二年もない。今はもう12月。僕の高校の卒業式までは残り三ヶ月弱。唯一の家族である姉。今のところ卒業式には来てくれるようだ。もう一度その話をしようと来たものの、姉の病室には知らないcsが入っていた。
「あの…僕の姉の…一ノ瀬梓は…」
通りかかったレッダー(レッドに所属する医者、また戦闘医)に声をかける。
「ああ、一ノ瀬さんね。彼女ならつい先程…言いづらいのだけど…5病棟に移られたわ。」
「もしかして…」
「ええ、ステージ5に進行しているわね。予定より五ヶ月も早まるなんて…」
ああ、卒業式は留守番してもらおう、と他人事のような他人事じゃないようなことを思いながら、5病棟へ向かっていた。
カラカラ…と個室の戸を開ける。冬なのにぽかぽかと暖かい陽気が姉へ降り注いでいるのは南側の部屋だからだろう。俺に気がついた姉は相変わらず子供のように笑い、大人のように手を振った。
「姉さん久しぶり」
「トーリもね、風邪は引いてない?」
「全く元気だよ。姉さん体の方は…」
「なんとか大丈夫かな…前よりも体は不自由で迷惑かけるかもしれないけど」
「迷惑じゃないよ?僕は姉さんが笑ってくれるのが好きなんだから。」
姉は僕を愛してくれる唯一無二の存在。人当たりもよく、優しい姉は奇病だからといっていじめられることも疎まれることもなかった。逆にみんなが姉を好きになり、姉に手を差し伸べてくれる。もちろん全て丁重に断るのが姉だ。姉は長くは無いだろう自分より僕を今後救ってほしい戸いう。でも僕も姉を尊敬してるが故に断りを入れる。それだけでは無い。自分で言うのも悲しいが僕は姉とは真反対に位置する存在だ。周囲の人は僕よりも姉に生きてほしいと思っているだろう。僕も思う。姉がなぜ苦しまなければいけないのか。優しい姉が。僕でよかったのでは無いかとよく思う。そんなこと意味がないと分かってはいるが。
「姉さん、苺食べれる?」
「まだ食べることはできるよ、その代わり食べさせてね」
「はいどうぞ」
「ど~もっ」
パクリと食べる姿が入院前の姉と重なる。鉱石病の代表的な病症の鉱石化によって色鮮やかな鉱石に身体が包まれたこと以外はほとんど何も変わらない姿。僕がいるから笑っているのか、心から笑っているのかは分からない。でも探ったら戻れないと言うのも分かっているので何も言わない。思えば、入院前より笑っている姿を見るのが多い気がする。考える素振りも何かに浸る姿もだんだんと少なくなっている気がする。
「姉さん卒業式のことなんだけど」
姉はピクリと反応し顔をあげた。その顔は姉とは思えない表情をしていた。不安にまみれた顔。何年ぶりだろうか。母さんと父さんが還らぬ人となってしまったと分かった時以来だろうか。いや、僕が中学の頃両親を亡くし、さらに姉が発病し、クラスの奴らにいじめを受け、精神的にフルボッコにされて不登校になった時以来かもしれない。
「病院で…「待って」」
「姉さん」
「まだ、大丈夫だから」
「でも、いつまた悪化するか分からないよ。僕は」
「私はもうトーリの成長を見ることが生きがいになっているの。お願いよ」
「…」
「“最後のお願い”なの」
「姉さん…」
普通こう言う時は“一生のお願い”と言うのではないのだろうか。僕の姉は“お願い”や“頼み事”を聞くことはあっても、自分から何かを望んだことはなかった。だからこそ違和感を感じたのだ“最後”なんて姉さんの口から一度も聞きたくなかった。
「分かったよ。だけどこれ以上悪化したらダメだよ。だから無理しないでね」
「分かってるわよ。まだ大丈夫…」
姉は小さく“きっと”と呟いた。僕はそれを聞こえなかったふりをするしかなかった。なんとなく、そうした方が姉も辛くないと思ったからだ。なんて自分勝手な弟だ。でも姉はそんな僕をちゃんと家族みてくれるのだからそれくらいいいとも思う。
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