<竜騎傭兵> ナイン・スペード・ドラグドライブ

蒲生たかし

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第3話 ガンスミス・デリバリー

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ナインは街はずれの小さな工房に来ていた

「よう
 ライじい」
「なんじゃ
 ナインか」
ライじいと呼ばれたその老人は
チラッとナインの腰をみる
「なんじゃ!
 その腰のモンは!」
「ああ
 これか
 『愛の証』ってやつだ」
「ワイルドターキーじゃねーか
 ワシのラッキーストライクはどうした!」
「あげた」
「なに!?」
「いや
 正確には
 お互いに預かってるっていうか」
「見せろ!」
「別にライじいの銃を粗末に扱ったわけじゃなくて
 相手が大事だからこそというか」
「いいかは早く見せろ!」

ナインはワイルドターキーをその老人に渡す
老人はすぐに銃をチェックを始める
「ほう
 元の持ち主は中々いい腕をしている
 この銃も悪いモノじゃないが
 それ以上に整備の腕がいい
 お前さんの整備の腕はからきしだがな」
「だろ
 本当にいい娘でさ」
「お前が使うと右に少しずれるだろ」
「さすがライじい
 実はその調整をお願いしたくてさ」
「まっちょれ
 直ぐにやってやる
 ついでにそいつも出せ」
ナインはもう一つの銃ラッキーストライクを渡す
「頼むよ」
銃を見るなりライじいは少し微笑んだ
「ったく
 こき使われてるみたいじゃな」
奥に引っ込むライじいにナインは声をかける
「それと……」
「Jの事じゃろ
 あいにくと情報はない
 じゃあ待っとれ」
「待ってる間
 ライじいのコレクション
 試し打ちしていいかい?」
「弾代は請求するぞ」
「あいよ」

ライじいは元トランプ傭兵団
ナンバーネームはスリー・クラブ(3♣)
通称ライオット
現在68歳
銃の制作は世界的に工場作業が主流になっているが
ライじいは一つ一つがハンドメイド
その腕は世界随一で彼の作品のファンは世界中にいる
ライオット製の銃には魂がこもっているとさえ言う者もいる
一部のファンの間では
「ライオット・ガン」というブランド扱いまでされているほどだ

トランプ傭兵団が世界有数の傭兵団と呼ばれた所以は
スペードの戦闘力もさることながら
クラブたち職人の技術に支えられた事も大きかった
ライオットはそのクラブの長を務めていた
ナインの愛銃である2丁のラッキーストライクも彼の作品である
グリップの所にはその証である3♣のマークが入っている

ナインはライオットのコレクションを見ていた
その中から3丁ほど弾を込め試し撃ちをした
「さすがライじいの銃だ
 格が違うな」
「当たり前じゃ」
ライオットが調整の終えた銃を持って戻って来た
「ところであそこのマシンガンはなんだい?
 初めて見るけど」
額に収められた機関銃を指さし尋ねた
「そいつは
 テンペストの奴のオーダー品だ」
「団長の?
 でも団長は短銃2丁のツーハンドだっただろ
 俺もそれに倣ってる訳だし
 機関銃使ってる所なんて
 見た事ないぜ」
「団の終わりに近しい頃な
 奴からオーダーがあったんじゃよ
 圧倒的な数を相手に戦う事を想定してたみたいでな」
「そんな話
 団長から聞いた事ないぜ」
「まわりには口止めされてたからな
 奴はあの事件の事を予期していたのかもな」
ライオットが額からマシンガンを出す
「渡す前にあんな事になっちまってな
 長く手を付けられなかったんだが
 伴いの意味も含め
 最近やっと完成させたんじゃ」
「そうか」
「持っていけ
 可愛がられたお前なら
 奴も納得だろう」
ナインはマシンガンを受け取る
「名前は?」
「まだ付けとらん
「付けてくれるか」
「そうだな
 シンプルに
 『S-19<エス・ナインティーン>』
 だな」
「いつもの洒落た感じじゃないのか
 形式番号かい?」
「Sはスペード
 19は」
「俺(9)と団長(10)のナンバーの合計か」
「そうじゃよ」
「なるほど
 いいね
 気に入ったよその名前」

「じゃあその銃の代金じゃがな……」
「ただじゃねーのかよ」
「昔から団でも言ってたろ
 『只より高い物はない』
 ってな」
「分かったよ
 いくらだい?」
「これから納品があるから
 お前さんも付き合え
 どうせ暇じゃろ」
「暇じゃねーよ」
「いいから付き合え」
「納品なんて業者に頼めばいいだろ」
「最近は賊が出るらしく
 俺の品もやられたんじゃよ」
「なるほどね
 分かったよ」

ライオットの愛竜の名はフルゴラ
重量級で特殊な戦闘能力も持つ
厚い皮膚と鱗を持っているため並みの武器では傷つける事はできない
そしてその巨体は数トンの荷物の運用すら可能だ


道中
昼を越えた頃
「本当に出たね
 さてどうする?
 ライじい」
「決まってる
 皆殺しじゃ」
賊が銃を持ちライオットたちに近づく
お決まりのセリフ
「武器を置いて行け
 命だけは助けてやる」
それに対してライオット
「ナイン
 返事をしてやれ」
「あいよ」
それに呼応してナインが銃を抜く

銃声

賊が一人額を撃ち抜かれ倒れる
「頭!」
ボスが撃ち殺され賊が混乱する
「ライじい
 後は頼んだ」
言うなりナインはイザナミと瞬時にその場を後にする
「まったく手抜きをしおって」
両手にマシンガンを持ち立ち上がる
「やれ!!
 フルゴラァ!!」
呼びかけに答えライオットの愛竜が咆哮
同時に竜の角から幾つもの雷が放たれる

フルゴラは【雷竜】と呼ばれる種
電気を発する動物との配合で生まれた竜だ
自分の角に体内で作った電気をため
一気に放出する
一般的な雷竜は生物を痺れさせるほどの電気しか発せないが
フルゴラは雷ほどの電気を発生させられる
世界でも少数のレベルの竜だ

賊の竜たちはフルゴラに萎縮して動きを止める
そこにライオットがマシンガンを乱射
賊が次から次へと竜から落ちていく

崖の上から遠目に見ているナイン
「はは
 『雷帝』健在なりだね
 やっぱあのじいさん怒らせない方が賢明だ」

「フハハハハハハハハ!!!」
マシンガンを撃ち続けるライオット
中には逃げる賊も
それをすかさずナインがスナイプする
「襲っておいて逃げるは無しでしょう」

数分であたりは更地になり
賊は壊滅した

「なんだよ
 憂さ晴らしに付き合わされただけじゃないかよ」
「何を言っとるお前は遠くでさぼっちょったろ」
「ライじいの戦闘の近くはあぶねぇでしょうが
 それにちゃんと遠くから掃除の手伝いをしてましたって」
「まぁいい
 行くか
 夜になる前に届けたいでな」

二人はゆっくりとした歩で進んでいた
「ナイン
 ところで
 お前さんいつまで
 傭兵なんて続けるんだ」
「死ぬまで
 かな
 あいにくと
 俺は戦う事しかできないしな」
「なんならワシがお前を鍛えてやろうか」
「ムリムリ
 昔ライじいに手ほどき受けた時
 すげー怒られたじゃん
 筋がないって」
「誰も筋なんて持っちゃいねーんじゃよ
 あるのは修練とその積み重ねだけじゃ
 ワシもこの歳でやっと
 銃作りってのが分かってきたくらいじゃ」
「なんにせよ
 Jの野郎をやらない限り
 俺に次はないんだよ」
「それなら
 それを終わらしたらワシの所に来い」
「考えておくよ」

「ところで
 お前さんのイザナミ
 大分疲れがみえるぞ」
「そうなんだ
 ランサースの国に1年
 お姫様の護衛で行っててさ
 これが無茶ばっかする姫さんで
 そのお守りで俺もイザナミも骨が折れてさ」
「そういえばお主が隣国に行ってたって話は噂で聞いちょったな」
「ライじいに銃の調整してもらってから
 姐さんところに行こうと思ってたんだけど……」
「ミネルバのところか」
「そう
 でもさぁー
 あの人
 報酬の代わりに絶対無茶な仕事押し付けてくるから
 気が重くて」
「腕はぴか一なんだがな
 ワシも正直苦手じゃ
 あの嬢ちゃんは」
「雷帝でさえそれなのに
 ほんと気が重いよ
 ただイザナミの事考えたら
 あの人ほど信頼できる人はいないしさ」
「まぁ
 死なない程度に頑張れや」
「あいよ」
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