ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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いま4

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「ナ、ナツ……?」

 ふと聞こえてきた自分の名前にまぶたを開けると、制服姿のハルくんが目に入った。

「や、やっぱりナツだ。どうして、なんでここに……」

 青ざめたような彼の顔に一瞬戸惑ったけれど、教室の時計を窓越しに覗いて見れば夜六時半をまわっていて、わたしも青ざめた。

「え、もしかしてわたし、寝ちゃってたのっ?」

 見上げた先の空の色は、明るいオレンジから暗いネイビーブルーへと変わっている。布団も椅子もないこんな冷たいベランダの地べたで座り、就寝できた自分に驚愕した。

「び、びっくりさせちゃってごめん、ハルくんっ」

 急いで立ち上がりそう言うと、ハルくんはわたしの足元に目を落とす。その視線につられてわたしも下を見れば、そこには先ほど彼が放った野球のボールが転がっていた。

 結局届けに行かなかった。

 なんだか悪いことをした気分になり、サーッと血の気が引いていく。

「ああ、えーっとごめんっ。あとで渡しに行こうと思ってたんだけど……」

 自分目がけて飛んできたそれを、すぐ校庭にいる野球部の元へ届けに行けばよかったって、ただそれだけの話。それなのにこんなことでもいちいち勇気が必要なわたしは、度が過ぎる小心者だ。そのくせ大好きなハルくんには好きだと言いたい言われたいだなんて夢をみているのだから、自分でもほとほと呆れ返ってしまう。

 腰をかがめ、ゆっくりとボールを拾ったハルくんは、また時間をかけて腰の位置を戻していた。
 ハルくんの目がボールからわたしへ向けられるとほぼ同時、彼の眉間にしわが寄る。
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