ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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いま19

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 ハルくんを待っている間、校庭で野球をする彼が何度も三年五組のベランダを見上げてくるから、その度に目が合った。
 手は振らない、きっと振り返してくれないから。けれど時折笑顔は見せた。

 一年生の頃、五階から見下ろしていた時よりも、三年生になってずっと近くなった校庭との距離。ハルくんが今どんな表情でいるのか、辛そうだったり楽しそうだったり悔しそうだったり、一年生の時は目をらさないとわからなかったことも、簡単に確認できるようになった。

 そうか、だから最近のわたしは頻繁に、放課後のここを訪れてしまうんだ。滑り込みで一塁へ間に合った時に見せるはじける笑顔も、カキンとホームランまがいなボールを打った時の大喜びも、クタクタなのに友だちとはしゃぐ顔も、全部全部、見えるから。

「ハルくん、好き」

 ハルくんが好き。自分でも信じられないくらい、これは強い想い。
 こんなにも大好きなハルくんから「好き」だと聞ける日がもし来たのなら、わたしは一体どうなっちゃうんだろうと、ふと想像してみた。

 失神するか、泣いて喜ぶか。もしかしたらこのまま死んでもいいとですら、思っちゃうかもしれないな。
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