ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学一年生、冬の頃3

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「うっわ、最悪……」

 ハルくんを玄関で待たせ、ちらっと覗いた一階のリビング。そこへ広がる光景に、気が滅入る。

 祈り虚しく目に映るのは、お父さんの穴あき靴下。その隣にはお母さんのベージュ色パンツも仲良く干してあるし、ふざけた柄のわたしのパジャマもきちんと目立つとこにかけられていた。
 極め付けは、もわっとしたこの空間に漂う柔軟剤の香り。洗濯機投入時はフローラルなそれも、数時間閉め切った湿気たっぷりの部屋に閉じ込め続けられれば、鼻をつく武器に変わる。

 こんなリビングで、何が図鑑だ星座だ星空だ。

 そっと扉を閉めたわたしは、玄関で待つハルくんの元へ急いだ。

「ごめんハルくん。ちょっと今、うちのリビング人に見せられる状態じゃなくて……狭いけどわたしの部屋でもいいかな」
「俺はどこでもいいよ」
「じゃ、じゃあ二階行こっ」

 自室の方が、まだマシな記憶はあった。だけどとんとんとふたりで階段を上っていくとともに、わたしの緊張は高まった。
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