ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学二年生、秋の頃4

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 場内は長らく、うっとりする星空と落ち着いたBGMで包まれていた。校外学習という名目を忘れたわたしがたっぷり癒されていると、ことんと肩に何かがあたる。

「え、ハルくん?」

 くかーっと気持ちよさそうなこの寝息は、ハルくんが寝落ちしてしまった証拠。

「ちょっとハルくん、起きてよっ」

 ねえねえと腕を叩き起こそうとするが、彼は深い眠りの中。

「もう、ハルくんってばあ……」

 こんなに密着して、一体どこまでわたしを虜にさせれば気が済むのだ。

「本当に寝てるんだよねえ?」

 ちょんっと自分の肩を上げてみる。彼はくかーっと返してくる。

「えいっ」

 つんっと頬を指で突つく。彼はくかーっと返してくる。

 覗いた寝顔はあどけない少年のよう。くすぐられた母性本能と年中抱いている恋愛感情とで、なんだかもう愛しすぎた。

 ハルくんが熟睡しているのだとわかれば出てしまう、大胆な行動。

 ことん。

 わたしも彼を真似て、自分の頭を彼の頭に乗せてみたのだ。

 ちょっとだけ、ちょっとだけ。ハルくんだって同じようなことしてるんだし、いいよね。

 心の中、そんな言い訳を身勝手にして、この行動を正当化した。
 幸せに浸るとはこのことだと思った。あいにく大好きな人は起きていないけれど、それでもハルくんと触れ合いながら眺める星空は、このうえない贅沢だと。

「大好きだよ、ハルくん」

 彼の側で呟いたのは、途端にあふれた恋心。この気持ちは一生ものだ。
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