ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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いま67

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「俺の人生一番のラッキーは、ナツと出逢えたことだよ。そしてナツに、好きになってもらえたこと」

 ハルくんの背景を彩るのは、彼が見せてくれたプレゼント。広い夜空の中で幾千もの星たちが、ぼくはここだよと光っている。

「ナツと初めて出逢った時から、俺はナツのことが気になってた。一見おとなしそうなのにけっこうツッコミ入れてくるとことか、好きなギャグ漫画が男っぽいとことか、肘でだって小突いてくるし。なんていうか、最初はギャップに惹かれたんだと思う」

 ずっと聞きたかったハルくんの気持ち。頭の中で、彼との思い出が駆け巡る。

「でもナツと過ごしているうちに、ギャップがどうとか言ってられなくなったんだ。ナツがメロンパンを頬張ってるだけでも可愛いと思ったり、保健室でふたりきりになった時もすっごいドキドキしたり。あの時、危うく本当にキスしそうになった。ナツの寝顔が愛らしかったから、つい」

 ゴチンとあたった鼻と額。
 あの時のわたしがもう少し長くたぬき寝入りをしていれば、そこからわたしたちの恋人関係はスタートしていたのかもしれない。

「俺はいつもナツを想ってた。一年の頃からずっと、俺の心の真ん中にはナツがいた」
 
 夢のような言葉が並べられて、今にも幸せで消えてしまいそうだった。徐々に軽くなっていくと感じた体は、その前兆か。

「放課後の部活中、ベランダからナツがこっそり応援してくれたの、本当は知ってたんだよね」

 だけどハルくんのその言葉で、一旦前兆からは解放された。
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