僕らの10パーセントは無限大

華子

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あり得ない今と、あり得ない未来と

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 そう呼びかけてしまいそうになった寸前で、その名を叫ぶ声が耳をつんざく。

「こら、玲!なにやってるのよもう!勝手に走って行かないの!」

 声がした方へ視線を投げると、ユーイチのすぐわきを抜けてこちらへとやって来るひとりの女性がいた。

 あ、知ってる。この顔も。

 テメさんのボストンバッグの中から落ちた、ひとひらの写真。そこに写っていたテメさん以外のふたりの登場に、わたしの目は見開かれた。

 うそでしょ……?まさかこんなところで、テメさんの家族と会うなんてっ……

 ここは夏真っ只中の、海水浴場。都心からも地方からも、たくさんの人々が訪れる場所。だから誰に出くわしたって、不思議ではないのだけれど。

 だけど、そんな……偶然すぎるよ……

 邂逅遭遇かいこうそうぐうとは、まさにこれのことだと思った。
 偶然を超えた運命のいたずらに、わたしは口元に手をあてがった。

「え、玲?玲ってまさか、テメさんが今朝言ってたあの玲……?」

 眉をひそめてこちらへと走って来た女性の後ろでは、ひとりごとを呟きながら、戸惑うユーイチの姿があった。

 わたしと真正面で向き合っている今のユーイチの立ち位置からは、玲ちゃんの顔もテメさんの元奥さんの顔も視認できないだろうけれど、彼はわたしの反応と玲という名前で、ぴんときた様子だった。

 一秒、二秒も経てば、玲ちゃんの元まで辿り着いた女性。
 バンズを突ついていた玲ちゃんの手をパシンと払い、「落ちてるものを触っちゃだめ!」と怒鳴っていた。

「だってママあ、おねえちゃんのハンバーガーがっ」
「それはこのお姉ちゃんがどうにかするから、玲は関係ないのっ」
「……はあい」
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