僕らの10パーセントは無限大

華子

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君の音色と、無限大の可能性と

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 受験生だというのにもかかわらず、家でだらけていた夏休み。外から聞こえてきたこの音に、俺は急いで窓へ向かう。

 ベッドに預けていた全身を、バネのように跳ねて起こして、一目散に駆ける俺。

 だってこの音は、和子かもしれないから。

 ただいま!ユーイチっ!

 窓を開ける時は、いつもそんな空耳が聞こえてくる。

 四角い枠の中、青い空と笑顔の和子。彼女がすぐそこにいるかもしれないと思えば、胸は高鳴る。



 もし、あなたなら。

 10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と
 90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。

 そのどちらを信じますか。



 そりゃもちろん、俺は俺が信じたいほうを信じるさ。
 だって俺等の10パーセントは、無限大の可能性を秘めているから。

「和子っ!」

 勢いよく開けた窓の先、俺の視界に飛び込んだのは──

 ただいま!ユーイチっ!

 青い空と、可愛らしい入道雲だった。


 了
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