原田くんの赤信号

華子

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原田くんは、変わっている人だ

電池の話3

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「なにに替えるの?」
「新しい電池に」
「家に替えがなかったら?」
「買う」
「どこで?」
「電気屋かなあ」
「お店がお休みの、夜中に切れるかもよ?」
「じゃあコンビニ」

 便利な世の中になったなー、なんてまたおじさんくさい台詞を吐くけれど、エレン先生は得意げだ。

「じゃあさ」

 そして頬杖をついて、続ける。

「どこにも電池が売っていなかったら、どうするの?」

 その瞬間、部屋が途端に静かになった。

「今日は電池の切れる前夜です。さあ、考えてみて」

 うーんと考え始めた生徒たちを眺めるエレン先生は、ふんふんと鼻歌を奏でながら、どこか満足そう。しばらくして、ひとりの生徒が手を挙げた。

「使いません」

 それはどういう意味?とエレン先生が聞く。

「使わなかったら、少し復活するかもしれないから」
「電池自体がってこと?」
「はい」
「どうして?」
「な、なんとなく」

 今度試してみようかな、とエレン先生は頷いて、「答えてくれてありがとう」とウインクを投げる。

「真っ直ぐ目的地に向かうかなあ」

 二列目の、生徒が言った。

「どういう意味?」

 エレン先生が彼に聞く。

「レベルが低くても、最終ボスに挑んじゃうかもしれないです」
「お、勇敢者だね。どうやって戦おう」
「今持ってるありったけの剣とか槍とか装備して、仲間も連れて」
「勝てるかな」
「わからない」
「でも行くんだ、ボスのとこ」
「うん。だって電池切れるし、どっちにしろ終わるなら」
「かっこいい」
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