原田くんの赤信号

華子

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原田くんは、変わっている人だ

魔法使いな原田くん4

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 耳穴に指を突っ込んで、わたしは扉へと歩き出す。原田くんの肩書きが、『変な人』から『しつこい変な人』に変わりそうになっていると。

「俺はもう、瑠夏に可哀想な思いさせたくねえんだよ!」

 なんて言ってくるものだから、足が止まった。おもむろに、振り返る。

「え……?」

 誰かを可哀想だと思っていいのは、その誰かの気持ちを知ってから。これはついさっき、エレン先生に教わったこと。だからわたしはこう思う。

「原田くんが、わたしのなにを知ってるの……?」

 原田くんは、親友の美希ちゃんじゃない。わたしは原田くんに自分のこと、そんなに話してない。

「原田くんは、わたしのなにを知ってるのよっ。なにも知らないのに、勝手に可哀想だなんて決めないで!」

 原田くんが、よくわからない。なんだかすごく、やきもきする。

 何も言い返してこなかった原田くんを残して、ひとり保健室をあとにした。しかしクラスへ着く寸前で追いつかれて、気まずいまま、一緒に入室。すると黒板にはでかでかと、明日のテスト範囲が書かれてあった。

「ええ!?テストお!?」

 小テスト好きの数学の先生は、時折こういうことをする。数学が苦手なわたしは絶望した。一方原田くんの方はと言えば、彼もわたしと成績がどっこいどっこいのはずなのに、不適な笑みを浮かべている。

「瑠夏は今夜、机にかじりついたほうがいいかもなっ。俺はゲームして寝ても、満点とれるから」

 そんなことできるわけないじゃん、と思わずツッコんだら微笑まれて。原田くんとの気まずい雰囲気は解消した。
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