原田くんの赤信号

華子

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原田くんは、変わっている人だ

魔法使いな原田くん7

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 放課後は、美希ちゃんの家にお邪魔した。仲が良いわたしたちは、何時間一緒にいたって飽きないのだ。

「瑠夏ちゃんいらっしゃい。ゆっくりしてってね」

 美希ちゃんのお母さんは、クッキーとチョコをトレーに乗せて、美希ちゃんの部屋まで持ってきてくれた。「はーい」と言って、早速つまむ一枚のクッキー。

「このクッキー、お母さんの手作り?」

 触れると温かかったそれに、思ったことを口にする。

「そうだよ」
「へぇー、すっご。上手だねえ」
「うちのお母さんはお菓子作りが趣味みたいなものだから、しょっちゅう作ってるよ」

 そう言って、あむっと美希ちゃんの口の中へ運ばれるクッキー。わたしはふと、こんなことを呟く。

「バレンタイン、こんな風に上手く作れたら、エレン先生もらってくれるかな……」

 最近の原田くんがやたらとバレンタインデーの日にちを連呼するものだから、わたしも気になってきてしまった。まだ一ヶ月先の、二月十四日のことを。

「瑠夏ってば、エレン先生に手作りチョコあげる気なの?」
「うん、あげたい……けど、それにはまず、エレン先生に予定聞かなきゃ」
「予定?」
「今年のバレンタインは日曜日なんだって。だから、学校では渡せないの」

 エレン先生と休日に待ち合わせをするなんて、そんなこと本当にできるのだろうか。というか、休日のエレン先生を誘い出すなんてハードルが高い気もしてきた。だったら直接会わずに、彼の家のポストにでもこそっとチョコを入れに行きたいと考えていたら。

「エレン先生の家って、確かうちの学校の近所だよねー」

 と美希ちゃんが言ったから、その計画を実行することにした。
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