原田くんの赤信号

華子

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原田くんは、思わせぶりな人だ

原田くんの天気予報8

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 今週末にでも美希ちゃんを誘って、一緒にラッピングを選んでもらおう。チョコも手作りしたいなら、材料買わないと。

「おい瑠夏」

 翌日。昨日から続いていた浮かれ気分は、昼休みに睨みつけてくる原田くんによって消え去った。

「な、なに」
「ちょっと来て」
「な、なんでよやだよ。わたし今から図書室に──」
「いいから!」

 無遠慮にわたしの腕を掴んだ原田くんは、そのままわたしを東階段へと連れて行く。美希ちゃんは、あらまあという顔で、図書室へと先に向かった。

 人通りが少ないから、原田くんはいつもここで変なことを言ってくるんだ。わたしに対して『好き』の『す』の字もない男友達を恋の相手に薦めてきたり、プランも何もないのに「二月十四日の朝から会いたい」って誘ってきたり、「俺が瑠夏と会いたい理由に心当たりないの?」って聞いてきたり。

 ああ、もう。東階段なんて立ち入り禁止にしちゃえばいいのに。

「瑠夏さあ……」

 今日のふたりの立ち位置は、原田くんがわたしの二段上。

「もしかして、エレン先生の家わかったの?」

 ギク。

 犯罪者のような方法でゲットしたエレン先生の住所は、胸を張って言えるものではなかった。思わず、カタコトになる。

「エーット……ドウシテソウオモウノ?」
「昨日、うちのクラスのやつが見たって言ってた。エレン先生のあとつけてる瑠夏たちの姿」
「ソ、ソウデスカ……」
「いいから答えろよ。お前、エレン先生の家知ったの?十四日に行くつもり?」
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