65 / 66
9.再生
9-4
貧血が治れば、香梨奈は故郷に帰らなければならない。
経過観察という名目で通院でもさせない限り、彼女が自分から血や飛鳥の遺伝子成分を摂取することは不可能だ。それらが欠ければ、彼女は子孫ではないもう一つの滅び……テロメア欠損による爆死、に向かってしまう。
だが実家のある北海道東部には、飛鳥の頼みを聞いてくれるような、知り合いの医師はいない。もう少し手前の旭川、帯広……せめてそこまで遠出してくれるなら、どうにかアテは見つかる。香梨奈にも親を説得してもらえれば、話は簡単に進むかもしれない。
そしてさっきあの声に言われた、香梨奈を妬む者から守る方法。
狙われた場合に、相手の記憶を消す暗示を与えた。ほんの数分、記憶を奪うだけの暗示。香梨奈のことを、追うべき血の持ち主だと、わからなくなれば相手も襲えない。
これは香梨奈には自覚のない、自動催眠の力だ。
バンパイアには、緊急時に相手の記憶を消すことができる。何でも、とは言わないが、自分が吸血しているところを見られたりした場合に使える。自己の存在が危ぶまれた時に、発動を許すものだ。
これが万全かは疑問だけど、今のところこれくらいしかない。今後もう側にいられないのだから、この力を代わりに盾として渡す。
そうまでしても飛鳥は、テロメア・バンパイアの逃れられない特性……子供についての、は与えたくはなかったのだ。その問いに、まず自身が挑まなくてはいけないから。共に宿命に苦しみ、さまよう身にはしたくなかったから。
ふと、この暗示を沢村響子や他の娘たちに、最初から与えていたら……。いや、今言ってももう仕方ないことだ。
彼女らのことは大事だったが、いずれ自分の正体を明かせはしなかったのだから。
「香梨奈、うちに帰ってもー」
赤い目が、虚ろにこちらを見ている。
反応が鈍い?もしや異常反応か?ベッドに駆け寄り、顔を覗き込む。
「香梨奈……?」
しばし沈黙の後、ゆるりと幼い笑みを浮かべ、彼女は応えた。
「おつきさま!」
飛鳥は目を見張る。二の句が継げなかった。
髪も、そして肌も異常に白く見えている。それに気づいて愕然とする。
これは飛鳥が接していた、精神体の香梨奈ではない。
悪態をつく、頭のよい少女。いつも人を見透かすような、聡明で鋭い瞳をして……。
もうそこに、彼女は見当たらなかった。赤い目は同じでも、これは人々が見ている精神遅滞の……外側の、彼女の姿だ。
まさか。香梨奈はもう。
震える手を押さえ、歩みよる。
「ほし、かりな、すきっ!」
あの、見慣れた鋭い瞳の光はもはやなかった。いや、輝きはますます澄んで、あどけなく無垢な魂を表していた。
「香梨奈!」
飛鳥はとっさに抱きしめ、真実を確かめようとする。少女の中に隠れている、あの理知的な香梨奈を呼び覚まそうとして。
お前はどこにいる?この身体の、器の中のどこに。
「香梨奈、応えて?」
……返事はない。
「おほしさま。かりな……、見たい、のっ!」
悲しいほど無邪気な声が響いた。
駄々をこねる、その振る舞いは皆が認める通常の香梨奈だった。カーテンを開けてやると、まだ明けぬ夜空にまたたく星を見て、歓喜の声をあげた。
彼女は、交信不能の幼女に戻ってしまった。
生死の境をさまよい、そしてテロメア・バンパイアの力を一部得て。命と引き換えにESP能力を失った。
「つみき。あそぶの。取って」
表向きの香梨奈が好むおもちゃだった。さっき、叔母が持ってきたのを見ていたのか。
積み木のそばに、タロットカードの束があった。飛鳥は思わず、それをつかんで差し出す。
お前の好きなものは、これのはずだろう?
「つみき!これちがうもん。いらないもん」
突っ返した拍子に、カードはばらけて飛鳥の足元に散らばる。
”女神”のカードが一番上になっていた。
飛鳥はしゃがみ、カードを拾う。これをつてにして、二人で母のところへ会いに行ったのだ。思い返すうち……なぜか、目の前が曇った。
「せんせい……泣いている?」
とっさに目頭を拭う。見られたくはなかったのに。
香梨奈はベッドを降りて、一緒にカードを集め出す。
「ごめんね、せんせい。かりな、悪い子」
同じ声、同じ抑揚。なのに彼女はもう……。
人を癒すことが、自分の存在意義だと言っていたのに。その力を奪ったのは、僕自身だ。
「せんせい、泣かないで。ごめんね、ごめんね」
なぜお前が謝る。
涙を止めようとしても無駄だった。なすがままに頬を伝い続けた。
もうあの香梨奈には会えない。なぜこうも、別れは突然に訪れるのか。
「香梨奈」
医師だとか、成人だとかいう分別が剥がれ落ちた飛鳥は、少女を思わず抱きしめる。
無垢な子供そのままに、恥じらうこともなく香梨奈は腕の中に収まった。
なぜ、お前は答えない?本当に、本当にもう……いないのか?
「せんせい、泣いちゃだめ」
そう語りかけているのは、どっちの香梨奈だ?声も、言葉もまるで変わらないのに。消えてしまったのか。それともこの小さな体の中で、表現する方法を絶たれただけで、まだ存在しているのか。
たとえ人が来ても、はばかる気はなかった。感情がもう、抑えられなかった。
身体だけ助けても、中にいるべき精神を失ってしまったら……それはあまりに救われないではないか。
あの香梨奈を、ここに、この世に、目の前に、自分と共にいるこの世界に。残したかった。……なのに。
飛鳥は瞳を閉じて少女にすがる。
「……香梨奈、何か言って」
中に、いるんだよな?……消えてなんか、ないよな?香梨奈。
その声の中に、言葉に、お前がいると感じたい。
「せんせい……」
そう言って、香梨奈も黙った。
もうすぐ本当の別れが来る。
血を与えるという役目がある以上、完全に絆が切れることはない。彼女の身体に自分の血が流れていて、この先同じ時をたぶん長く生きる。他の誰が滅んでも、彼女だけは消えない。
だから決して嘆くことではないのだけど。
「もう少しだけ、……このままで、いて」
「だいじょうぶ?つらいの?……かりな、ずっとこうしてていいよ」
赤い目が、本気で心配して見返した。
力を失くしても、その優しさは変わらない。どうして、それでも悲しいのだろう。あの、香梨奈と会えないことが。肉体があって、ないような……まさに天使。心の君といつも対話してきた。
温かな体、呼吸、そして肌の感触。そうだ、それでも香梨奈は生きている。それが守れたなら、何も悲しむことなんてない……。
愛している。そう伝えたかった、あの香梨奈に。
お前も、そうだったろうか……。それを問うてももう、この香梨奈はたぶん答えられない。
「助かって、良かったな」
思いをこらえ、ようやくそう言った。
「たすけてくれたのは、せんせいだよね?」
何を言う。お前が俺を助けたんだ。だから、助けたかった。
「ありがとう」
かわいらしく、そう言った。
それがなぜか、中にいるかもしれない香梨奈の声に思えた。
「……こちらこそ」
そう言うのがやっとだった。
「えっ?」香梨奈は首をかしげる。
「……いや。わからなくてもいい」
「せんせい……」
お前はきっと、この身体の中で生きているんだな。……だったら、それでいい。
名残惜しげに、香梨奈の細い身体を再度抱きしめた。もうすぐ去って行く、そのぬくもりと感触を強く写し取ろうとして。
「せんせい?どうしたの」
「……元気でな」
決して君のことを、忘れないから……。君も僕を忘れないでいて。たとえもう、会うことがなくても。血で僕たちは繋がっている。永遠に。
経過観察という名目で通院でもさせない限り、彼女が自分から血や飛鳥の遺伝子成分を摂取することは不可能だ。それらが欠ければ、彼女は子孫ではないもう一つの滅び……テロメア欠損による爆死、に向かってしまう。
だが実家のある北海道東部には、飛鳥の頼みを聞いてくれるような、知り合いの医師はいない。もう少し手前の旭川、帯広……せめてそこまで遠出してくれるなら、どうにかアテは見つかる。香梨奈にも親を説得してもらえれば、話は簡単に進むかもしれない。
そしてさっきあの声に言われた、香梨奈を妬む者から守る方法。
狙われた場合に、相手の記憶を消す暗示を与えた。ほんの数分、記憶を奪うだけの暗示。香梨奈のことを、追うべき血の持ち主だと、わからなくなれば相手も襲えない。
これは香梨奈には自覚のない、自動催眠の力だ。
バンパイアには、緊急時に相手の記憶を消すことができる。何でも、とは言わないが、自分が吸血しているところを見られたりした場合に使える。自己の存在が危ぶまれた時に、発動を許すものだ。
これが万全かは疑問だけど、今のところこれくらいしかない。今後もう側にいられないのだから、この力を代わりに盾として渡す。
そうまでしても飛鳥は、テロメア・バンパイアの逃れられない特性……子供についての、は与えたくはなかったのだ。その問いに、まず自身が挑まなくてはいけないから。共に宿命に苦しみ、さまよう身にはしたくなかったから。
ふと、この暗示を沢村響子や他の娘たちに、最初から与えていたら……。いや、今言ってももう仕方ないことだ。
彼女らのことは大事だったが、いずれ自分の正体を明かせはしなかったのだから。
「香梨奈、うちに帰ってもー」
赤い目が、虚ろにこちらを見ている。
反応が鈍い?もしや異常反応か?ベッドに駆け寄り、顔を覗き込む。
「香梨奈……?」
しばし沈黙の後、ゆるりと幼い笑みを浮かべ、彼女は応えた。
「おつきさま!」
飛鳥は目を見張る。二の句が継げなかった。
髪も、そして肌も異常に白く見えている。それに気づいて愕然とする。
これは飛鳥が接していた、精神体の香梨奈ではない。
悪態をつく、頭のよい少女。いつも人を見透かすような、聡明で鋭い瞳をして……。
もうそこに、彼女は見当たらなかった。赤い目は同じでも、これは人々が見ている精神遅滞の……外側の、彼女の姿だ。
まさか。香梨奈はもう。
震える手を押さえ、歩みよる。
「ほし、かりな、すきっ!」
あの、見慣れた鋭い瞳の光はもはやなかった。いや、輝きはますます澄んで、あどけなく無垢な魂を表していた。
「香梨奈!」
飛鳥はとっさに抱きしめ、真実を確かめようとする。少女の中に隠れている、あの理知的な香梨奈を呼び覚まそうとして。
お前はどこにいる?この身体の、器の中のどこに。
「香梨奈、応えて?」
……返事はない。
「おほしさま。かりな……、見たい、のっ!」
悲しいほど無邪気な声が響いた。
駄々をこねる、その振る舞いは皆が認める通常の香梨奈だった。カーテンを開けてやると、まだ明けぬ夜空にまたたく星を見て、歓喜の声をあげた。
彼女は、交信不能の幼女に戻ってしまった。
生死の境をさまよい、そしてテロメア・バンパイアの力を一部得て。命と引き換えにESP能力を失った。
「つみき。あそぶの。取って」
表向きの香梨奈が好むおもちゃだった。さっき、叔母が持ってきたのを見ていたのか。
積み木のそばに、タロットカードの束があった。飛鳥は思わず、それをつかんで差し出す。
お前の好きなものは、これのはずだろう?
「つみき!これちがうもん。いらないもん」
突っ返した拍子に、カードはばらけて飛鳥の足元に散らばる。
”女神”のカードが一番上になっていた。
飛鳥はしゃがみ、カードを拾う。これをつてにして、二人で母のところへ会いに行ったのだ。思い返すうち……なぜか、目の前が曇った。
「せんせい……泣いている?」
とっさに目頭を拭う。見られたくはなかったのに。
香梨奈はベッドを降りて、一緒にカードを集め出す。
「ごめんね、せんせい。かりな、悪い子」
同じ声、同じ抑揚。なのに彼女はもう……。
人を癒すことが、自分の存在意義だと言っていたのに。その力を奪ったのは、僕自身だ。
「せんせい、泣かないで。ごめんね、ごめんね」
なぜお前が謝る。
涙を止めようとしても無駄だった。なすがままに頬を伝い続けた。
もうあの香梨奈には会えない。なぜこうも、別れは突然に訪れるのか。
「香梨奈」
医師だとか、成人だとかいう分別が剥がれ落ちた飛鳥は、少女を思わず抱きしめる。
無垢な子供そのままに、恥じらうこともなく香梨奈は腕の中に収まった。
なぜ、お前は答えない?本当に、本当にもう……いないのか?
「せんせい、泣いちゃだめ」
そう語りかけているのは、どっちの香梨奈だ?声も、言葉もまるで変わらないのに。消えてしまったのか。それともこの小さな体の中で、表現する方法を絶たれただけで、まだ存在しているのか。
たとえ人が来ても、はばかる気はなかった。感情がもう、抑えられなかった。
身体だけ助けても、中にいるべき精神を失ってしまったら……それはあまりに救われないではないか。
あの香梨奈を、ここに、この世に、目の前に、自分と共にいるこの世界に。残したかった。……なのに。
飛鳥は瞳を閉じて少女にすがる。
「……香梨奈、何か言って」
中に、いるんだよな?……消えてなんか、ないよな?香梨奈。
その声の中に、言葉に、お前がいると感じたい。
「せんせい……」
そう言って、香梨奈も黙った。
もうすぐ本当の別れが来る。
血を与えるという役目がある以上、完全に絆が切れることはない。彼女の身体に自分の血が流れていて、この先同じ時をたぶん長く生きる。他の誰が滅んでも、彼女だけは消えない。
だから決して嘆くことではないのだけど。
「もう少しだけ、……このままで、いて」
「だいじょうぶ?つらいの?……かりな、ずっとこうしてていいよ」
赤い目が、本気で心配して見返した。
力を失くしても、その優しさは変わらない。どうして、それでも悲しいのだろう。あの、香梨奈と会えないことが。肉体があって、ないような……まさに天使。心の君といつも対話してきた。
温かな体、呼吸、そして肌の感触。そうだ、それでも香梨奈は生きている。それが守れたなら、何も悲しむことなんてない……。
愛している。そう伝えたかった、あの香梨奈に。
お前も、そうだったろうか……。それを問うてももう、この香梨奈はたぶん答えられない。
「助かって、良かったな」
思いをこらえ、ようやくそう言った。
「たすけてくれたのは、せんせいだよね?」
何を言う。お前が俺を助けたんだ。だから、助けたかった。
「ありがとう」
かわいらしく、そう言った。
それがなぜか、中にいるかもしれない香梨奈の声に思えた。
「……こちらこそ」
そう言うのがやっとだった。
「えっ?」香梨奈は首をかしげる。
「……いや。わからなくてもいい」
「せんせい……」
お前はきっと、この身体の中で生きているんだな。……だったら、それでいい。
名残惜しげに、香梨奈の細い身体を再度抱きしめた。もうすぐ去って行く、そのぬくもりと感触を強く写し取ろうとして。
「せんせい?どうしたの」
「……元気でな」
決して君のことを、忘れないから……。君も僕を忘れないでいて。たとえもう、会うことがなくても。血で僕たちは繋がっている。永遠に。
あなたにおすすめの小説
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな児童書大賞で奨励賞を受賞しました)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
近づいてはならぬ、敬して去るべし
句ノ休(くのやすめ)
ホラー
山中、もしあなたがそれに出会ったら……
近づいてはいけない。
敬して去るべし。
山を降りろ。
六年勤めた会社を辞めた。お荷物だとはわかっていたし、むしろ清々しくもあった。
28歳のコウイチには、仕事より大切なものがあった。
田舎歩きだ。そこ大事なのが学生のときにかじった民俗学だ。廃集落、古い祠、忘れられた神々——それを訪ねることは、彼のたった一つの愉しみだった。
大学時代、民俗学の講義で准教授はこう言った。「神々は神ではない」。人が畏れ、従い、忖度したものがかみになる。その言葉がコウイチを変えた。
会社の営業で関東のあちこちを歩きまわった。コウイチは仕事よりも土地の古老の話に耳を傾けることに熱中したほどだった。
失業後、ふと見つけた資料にコウイチは目を奪われた。
「名付け得ぬ神」。
東京の西、檜原村の奥深く、コボレザワという場所にその祭祀を担った一族がいたという。山奥には祠があるらしい。だがもう六十年も前に無人になってしまっているようだ。
コウイチは訪ねてみることにする。
道中、奇妙な老人に出会う。一人目は気のいい古書店主。二人目は何かを知りながら口を閉ざす資料館の老人。そして三人目は——
深い山中でコウイチはついに祠を見つけた。巨大な岩を背にした祠は古び、壊れていたが、まだ人が来ている痕跡があった。
不穏な気配にコウイチは振り向くが、なにもない。
日本の中心地・東京。そこからわずかにはずれた山の中に潜む秘密をめぐる奇譚。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。