天才異能使いの穢れた侍は妖魔を断ち暗躍す

炭酸おん

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盗人の目

盗人潜む町の中

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 桜が剛山にお説教を受けている間、虎和とお藤は再び町にやって来た。例の盗難事件の調査のためだ。



「それにしても、桜様もお人好しなんだから。虎和君まで使って、わざわざ解決しようとするなんて」



「そう言いながらついて来てくれた君も、中々のお人好しなんじゃない?」



「私は桜様のご意向に沿っただけよ」



「まぁ、俺も同じだけどね。俺がお人好しっていうのだけは絶対に無い」



 二人は町人に変装して、豆腐屋風斗のある大通りで情報収取を行う事にした。お藤が手がけた変装は完璧で、二人の正体を見破れる者はいないだろう。流石くノ一。



「盗難事件? そりゃあもう最近金が盗まれまくってて困ってるよ!」



 最初に話を聞いた蕎麦屋の店主は声を荒げてそう言う。



「四日か五日に一回くらい、少ーしずつ金が盗まれてんだ。一回一回の被害は少額だが、こんなのが続いたらうちは潰れちまうよ! 夜もちゃんと戸締りしてるはずなのに、一体どうやって盗み出してるっていうんだ……」



 蕎麦屋の話は、豆太夫の物とほぼ同じだった。やはり、同一犯で間違いないだろう。



「四日から五日の期間で現れ、少額ずつ金を盗んでいき、戸締りしても関係なし……。これは間違いなく妖魔が絡んでるな」



「それは間違いないんだろうけど……、一体どんな妖魔なの? 私も色んな妖魔と戦って来たけど、少しも検討がつかないわ」



「あら、お二人とも、最近頻発している盗難事件を調べてらっしゃるの?」



 二人が考察しながら歩いていると、突然後ろから声をかけられた。

 上物の着物を着た美しい女だった。その着物や簪などから、裕福なのだと一目で分かる。また、両手に黒い手袋を着けているのも特徴的だった。



「はい。最近被害が大きくなっているようなので。もしかして、何かご存知なんですか?」



「いえ、私は何も。でも、私の行きつけのお店もほとんど被害にあっているみたいで。妖魔狩りの皆さんはこういう『人が死んでない事件』にはあまり積極的ではない方が多いので、ちゃんと解決しようとする人もいるんだなぁと」



 女は「頑張ってくださいね」と言い残して、その場を後にしていった。



「……確かに、あの人の言う通りだな。人が死んでる事件がどうしても優先されがちだけど、今回みたいにじわじわと人を苦しめるのを好む妖魔もいる。そういう事件も、ちゃんと解決していかなくちゃな」



「あんた達、今真奈子さんとお話してたよな? なぁ、どんな賭博の裏技を聞いたんだ?」



 女が去ってすぐに、今度は侍が話しかけてきた。女の話の内容がそんなに気になるのか、男は目を輝かせながら聞いてくる。



「真奈子? それがさっきの人の名前なのかしら?」



「何だ、真奈子さんを知らないのか? 最近、そこの賭場で名を上げ始めた天才賭博師さ。俺もどうやったら勝てるのか聞きたいんだが、中々話せなくてよぉ。そんな真奈子さんに話しかけられたお前らは、中々の幸運の持ち主って訳さ。そんな幸運があれば、賭博で一儲けできるんじゃないか?」



「悪いけど、賭博は趣味じゃないの。ごめんなさいね」



 お藤がそう言って、立ち去ろうとする。だが侍は彼女を引き留め、ある警告をした。



「ここで会ったのも何かの縁だろうし、一つ忠告しておこう。最近この通りでスリがよく起こってるらしいぜ。大事な元金が盗られちゃあたまらないからな。お二人も気をつけてな」



 連続盗難に続き、今度はスリ。しかも同じ通りで。



「これは……」



「あぁ。匂うな」



 どうやら黒幕の妖魔は、随分とお金が大好きらしい。



「盗みを好む妖魔は何種類か聞いたことがあるが、流石に手癖悪すぎだろ……」



 だがしかし、やはり真相に辿り着けない。戸締りを無視して中に入れる妖術と言えば「透過」があるが、それでは盗んだ物を外に持ち出すことができない。あくまで透過させられるのは自分自身だけだからだ。



「となると、一体どんな手口で盗んでるんだ……?」



 流石の虎和でも、今回は考えても一向に結論に辿り着けそうになかった。

 いい加減疲れてきたので、一度休憩を挟むことにした。適当な菓子屋に立ち寄り、菓子を買う。



「……あ」



 会計の時に懐に手を入れた虎和が呟いた。



「虎和君、どうしたの?」



「……盗られた」



 懐に入れていたはずのお金を入れた麻袋が、どこにも見当たらなかった。
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