天才異能使いの穢れた侍は妖魔を断ち暗躍す

炭酸おん

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盗人の目

桜の閃き

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「で、何の手掛かりも得られなかった上に、しっかり盗まれて帰って来たと」



「言ってる事は概ね正しいんだけど、少し手厳しすぎない?」



 城に戻った虎和は、桜とお藤に昨夜の事を報告した。報告を終えて早々、お藤の手厳しい一言が虎和を襲う。



「まぁまぁお藤さん、虎和さんも一晩中見張ってて疲れてるでしょうから、少しはお手柔らかに……」



「確かに、それもそうね。多分私が行ってたとしても、虎和君と同じ結果になってただろうし。でも本当に、相手はどんな術を使ったのかしら……?」



 昨晩は虎和がずっと見張っていたが、怪しい影は少しも無かった。だが今朝になって、虎和と豆太夫が少し目を離した隙に盗みは完遂されていた。一体相手は何者なのか。人の仕業では絶対に無い事しか分からない。



「透明化の妖術が使える妖魔の仕業……? いやでも、それだと戸締りしても関係なく盗んでくる事が説明できない……」



「そもそも透明化したとしても、気配は絶対に感じ取れるはず。それすら無かったとなると、もう説明のしようがないな……」



 虎和とお藤、数々の妖魔と戦い退治してきた二人を以てしても、全く真相が見えてこなかった。



「……あのー、少し思ったことがあるんですけど。二人よりも妖魔の知識に乏しい私が言うのも何だと思うんですけど、どうして二人は外から妖魔が入って来たという事にこだわってるんですか? 最初から妖魔が店の中にいた可能性もあるんじゃ……?」



 堂々巡りの議論の最中、遠慮がちに口を開いたのは桜だった。

 虎和とお藤は驚きを隠しきれないといった表情で桜を凝視した。



「あ、やっぱり無いですよね! すいません私みたいな素人が偉そうな事言っちゃって」



「いや桜様、その可能性は滅茶苦茶ありますよ!」



「確かに、最初から店の中にいたとすれば、戸締りしても盗まれるのにも納得がいく……! 流石です桜様!」



 桜の新しい視点に、二人は驚愕と賛美を述べる。外から来たのではなくずっと中にいたとするなら、色々な事に説明がついた。

 だがそれにもまた、新たな疑問が生まれた。



「でも冷静に考えてみたら、俺が昨晩見張っててそんな気配はしなかったんですよ。そもそも、店内に隠れていたとして、いつ店から脱出しているんでしょうか。誰にも気付かれずに複数の店に潜伏して金を盗み出すなんて事、本当にできるんですかね?」



「確かにそれもそうね……。虎和君ほどの妖魔狩りがそんな気配を見逃すわけが無い。私も豆腐屋風斗の中は一通り見てみたけど、人が一人隠れられるような場所は無かったわ。妖魔は一体どこに隠れていたのか……」



「思ったんですけど、その妖魔はすごく小さいんじゃないですか? 小さければ物陰とかに隠れられるだろうし、気配も探りづらいんじゃないですか? それに、毎回少額しか盗まれていないのも、体が小さいから一回にそれだけしか盗めないからとかだったりして……」



 またも桜が自信なさげに言うと、虎和とお藤は衝撃の余りに桜に頭を下げた。



「おっしゃる通りでございます桜様! 多分それほぼ正解です!」



「多分通りでのスリも同じなんでしょう。小型の妖魔が懐などに忍び込んで、金を抜き取っていた。やはり桜様は天才だ!」



「ちょっと、やめてくださいよ! そんなに褒められると照れ臭いです!」



 堂々と土下座する二人を前に、桜は顔を赤くしながら叫んだ。



「まぁでも少し捕捉するなら、相手は多分、『小型の分身か何か』を操れる妖魔なんでしょうね。小型の妖魔が人間の間で使われるお金を盗む理由は少ない。人に近い容姿をした妖魔が、小さな分身を使ってお金を盗み出していると考えた方が自然だ。これなら、複数個所で同時に盗みが起きている事にも説明がつく」



 ようやく相手の正体が掴めてきた。あとは、どうにかして辿り着くだけだ。



「正体は分かって来たけど、どうやって相手を見つければ良いのかしら。今朝の一件を見るに、その分身は相当隠れるのが上手いし、警戒心が強い。盗みが行われる日に店中をくまなく探しても、逃げられる可能性が高そうだけど……」



「いや、策はある。とっておきの捨て身の策が」



 そう言う虎和の目は、覚悟を宿していた。



「捨て身……? 虎和さん、一体何をするつもりなんですか?」



「餌をまく。もう一回あの通りで俺のお金を盗ませるんです」



 金欠虎和にとっては、捨て身と言っても過言ではない作戦だった。



「でも多分、相手も私達に勘付いてる。それなのにまだ盗みを続けるのかしら?」



「あぁ。相手は必ず盗む。現に、俺が一晩中見張ってた今朝も、俺が目を離した一瞬の隙を突いて盗んでいった。見つかる可能性が高いにも関わらずだ。相手は相当お金にがめついか……あるいは、この状況を楽しんでいるか。だから絶対に餌に食いつく」



 正体不明の妖魔の尻尾を、虎和達は掴みかけていた。
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