天才異能使いの穢れた侍は妖魔を断ち暗躍す

炭酸おん

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狐は舞う

管狐

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「喰い殺せ、管狐!」

「半妖の肉の味、しかと味わわせてもらうぞ!」

 竹筒から放たれた管狐が、物凄い速度で仙明へと迫る。

「仙明さん!」

「なぁに、これ位大した事は無いわい!」

 迫りくる管狐を、仙明はその圧倒的な動体視力で捉えてみせた。喉を掻っ切ろうと振り下ろされた爪と仙明の刀が衝突し、火花を散らす。

「全く、式神になってまで人間を喰い荒らすとは……同じ狐の妖魔として恥ずかしいわ! 儂が断罪の炎をくれてやろう!」

 仙明は人間と妖魔の特性を両方受け継いでいるため、魂力と妖力の両方を使う事ができる。勿論、妖術もだ。仙明が得意とするのは、炎の妖術。
 仙明の掌から放たれた火の玉が、管狐に襲い掛かる。

「小賢しい……流石は半妖と言った所か。半分は人の身でありながら、ここまで高度な妖術を操るか!」

「伊達に長く生きとらんからのぉ! それより、儂ばかり注意してて良いのか? 儂の弟子は優秀じゃぞ?」

 仙明がそう言った瞬間、管狐に虎和が迫る。目に見えぬ程の速度の抜刀術が繰り出されていた。

「チッ、油断した!」

「そこ、隙ありじゃな」

 管狐も持ち前の速度で何とか虎和の攻撃を避けるが、その先に仙明の火の玉が放たれていた。火の玉は管狐に直撃し、その体毛を焼いた。

「いてぇぇぇぇぇ!」

「おい何やってる管狐! 地の利を生かせ!」

「……チッ、そうだな綱兵よ。よもや手を抜いている場合では無さそうだ。お前も援護しろ!」

 管狐はそう言うや否や、突如姿を消した。

「何だ、どこに消えた?」

「管狐は『筒や管の中を自由に移動できる』能力を持っている。そしてここは竹林、そこら中に『筒』がある! つまりここは完全に管狐の領域なんだよ!」

 綱兵がそう言った瞬間、虎和の背後の竹が勢いよく割れて、中から管狐が飛び出してきた。視覚外からの攻撃に反応しきれず、虎和は背中を斬られた。

「クックック、美しい血しぶきだ!」

「畜生……速すぎるせいで血の反撃ができない!」

 虎和は止血だけ済ませて、出血した血で小刀を作った。それを懐にしまい、再び姿を消した管狐の奇襲に備える。

(集中しろ……集中して気配を探れば大まかな居場所の見当は付くはずだ!)

「大人しく探らせる訳がねぇだろ! 喰らえ、これが俺の異能だ!」

 気配を探る虎和と仙明に、綱兵は唾を吐いた。

「……はぁ?」

 その異常行動に虎和は僅かに油断してしまう。故に、反応が遅れてしまった。

「———俺の唾は弾丸だ」

 刹那、先程放たれたばかりの唾が、虎和の肩を貫いていた。火縄銃にも匹敵する速度と威力だ。

「なッ……!?」

「油断したな。俺の異能は『唾』だ。これ程の速度で飛ばせるようになったのも修行の賜物だ」

 綱兵の異能「唾」は、文字通り唾を操るだけの異能。だが彼はこの異能を磨き、唾を銃弾の如き速度と威力で放つことができるようになったのだ。

「まずは侍、お前から仕留める」

 唾の不意打ちを喰らった虎和の背後から、管狐が迫る。
 詰み……かと思われたが、瞬き一つした頃には仙明が管狐を刀で受け止めていた。その動きの速さは、まるで管狐がどこから来るか分かっているかのようだ。

「半妖お前……我の居場所が分かっていたのか?」

「そりゃあ勿論。儂の嗅覚と『異能』のお陰でな。折角だし、儂の異能をお前にも見せてやろう」

 管狐を受け止めていた刀が、突然熱くなった。熱せられた刀は管狐の体を容赦なく焼いた。

「熱ッ!?」

「これが儂の異能じゃ、驚いたか!」

 仙明の異能は「熱」だ。熱を操るのは勿論、周囲の熱を感じ取る事もできる。妖魔といえど、発せられる熱はある。仙明はこの異能により、管狐の「熱」を追って居場所を特定していたのだ。

「仙明さん……ありがとうございます!」

「礼は後で良い! それより、さっさとこの二人に止めを刺してしまおうぞ!」

「了解です! 俺は綱兵を倒すので、仙明さんは管狐をお願いします!」

「よし任された!」

 形勢逆転。勢いに乗った虎和と仙明は、一気に攻め立てる。

「狐の恥さらしめ、儂の本気の炎を喰らうが良い!」

 仙明は妖術で発生させた炎を、自身の異能でさらに熱くした。これぞ、仙明の十八番であり奥義だ。

「竹に隠れる前に焼き尽くしてやるぞ!」

「おのれェェェ、半妖め!」

 迫りくる炎を前に、管狐は決死の逃走を試みる。だが炎より尚早く、仙明の抜刀術が管狐の体を切り裂いていた。

「この炎は火葬用じゃ。お前を屠るための物じゃないわい、馬鹿め」

 虎和の師匠なだけあり、騙しも抜刀術も超一流の仙明である。

「くっ管狐! なにやられてんだ!」

「お前にも再起不能になってもらうぞ」

 管狐を失い動揺する綱兵に虎和が迫る。血液操作で身体能力の上がった虎和に、町人である綱兵が敵うはずもなかった。

「クソ! 俺は負けられないんだ! こうなったら連打するしかねぇ!」

 娘を喰おうとする管狐は死んだが、虎和と仙明がいる限り奉行所(現代の警察)行きは免れないだろう。綱兵は二人を殺して平穏を手に入れる為に、戦闘を続ける選択をしたようだ。
 連続で吐き出された唾の弾丸が、虎和を襲う。

「その技はもう見た。強力な技ではあるが、それ一つに頼りすぎるのもどうかと思うぜ」

 虎和は血を硬化させ、血の鎧を作り出した。唾の弾丸は、血の鎧によって完璧に防がれた。

「嘘だ……唾弾が効かないなんて」

「事情は知らないが、あんたの妻と子を思いやる気持ちだけは本物だと思うよ。奉行所でしっかり裁いて貰って、それから普通の生活に戻っていきな」

 最後は虎和の情けで、綱兵は手刀を首元に叩きつけられて気絶した。

「ふぅ、終わった終わった。強くなったのぅ、虎和よ」

「仙明さんも、相変わらずの強さで安心しましたよ」

 虎和と仙明は互いに拳をぶつけ合った。派手に戦ったので、騒ぎを聞きつけた侍たちがじきに来るだろう。それまで虎和は仙明の尻尾を枕にしながら寝て待つことにした。
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