22 / 25
どうかしてる小説家
奇妙な儀式
しおりを挟む
事情を桜とお藤に説明した所、思った以上に快く承諾してくれた。曰く、「御茶之介先生の頼みなら断る訳にはいかないでしょ」との事。桜も一緒に行きたがってはいたが、怪異が起きている場所に自ら突っ込むという行動が許されるはずもなく。今回はお藤と共にお留守番という事になった。
虎和と御茶之介は、駕籠(人を乗せて人力で運ぶ乗り物)に乗って村へと移動していた。
「それで、その村で行われてる『奇妙な儀式』っていうのは?」
「僕も人づてに聞いただけなんだけど、何やら数カ月に一度くらいの頻度で生贄が捧げられているらしいんだ。まぁ、それくらいしか分からないんだけど」
「……そんな事だろうと思って、調べてきたよ。久遠村は三年前から、年貢の徴収が上手くいっていないらしい。それ程に裏にいる妖魔が農民たちを支配しているのかも。もしくは、生贄だけじゃなく農作物も捧げられてるのかも」
これらは虎和が城からこっそり持ち出した機密情報だ。駕籠を運んでいる人に聞こえないよう、小声で御茶之介に伝える。
「ふむ……少なくとも生贄を求めたり儀式を行ったりする辺り、相当な知能がありそうだな。それ程の強敵って事か……」
知能が高い妖魔はほとんどの場合、比例するように強力である。御茶之介はその妖魔の強大さに怯えている……のではなく、嬉々とした表情を浮かべていた。
「強い妖魔か……実に良い! そんな強さの妖魔と対峙できるなんて中々無い経験だ! これは良い小説の題材になりそうだァ!」
「……やっぱり狂ってるわこの人」
やはり小説の事しか頭にない御茶之介の狂い具合に、虎和は頭を抱える。果たしてこんな奴と共に怪異を解決できるのだろうか。
~~~
しばらくして、目標の久遠村に到着する。
「ここが久遠村……見た感じは普通の農村だな」
「成程……これが農村の風景! 農村を訪れる事なんて中々無いだろうから今のうちに記録しておかなくては……!」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ。とりあえず村長に挨拶に行きますよ」
村に入って早々にいつも通りに暴走しようとする御茶之介をなだめ、二人は久遠村の村長の元へと向かった。
「この村に来客とは珍しい……。保馬城の方から来られたのですね。わざわざご苦労様です。私はこの村の村長の竹永と言います。本日はどういったご用件で?」
「この村で行われている奇妙な儀式について———」
「俺は藩の者です。ここ数年、年貢の徴収が上手くいっていない事があるようですが、何かあったのですか?」
あまりにも直球に聞こうとする御茶之介を押さえ、虎和が竹永に質問する。
「それが実は……三年前から鬼がこの村に住み着いて、生贄や農作物を要求するようになったんです」
竹永は小声で語りだした。話しながら震えているその姿は、いかにその鬼が恐ろしいかを物語っている。
「鬼、ですか」
「はい。鬼は斑雷と言って、雷の妖術で村の戦える者達を一瞬で倒してしまいました。それからこの村は実質的に斑雷に支配されて、一カ月の頻度で生贄を一人と農作物を要求されるように……」
鬼は妖魔の中でもかなり上位に位置する妖魔だ。位で言えば以前虎和が祓った煙ヶ羅と同格か、個体によってはそれ以上である。
「それがこの村で行われていた儀式の正体だったのか……。実に面白い。これは良い小説の題材に———」
「俺達は怪異を解決し、この村がまた健全に年貢を納めて生活を送れるような状態に戻すためにここに来ました。その斑雷という鬼、俺達が倒します」
またもや無神経な事を言おうとする御茶之介を黙らせて、虎和が宣言する。それを聞いた竹永は感激し、涙した。
「お二人とも……ありがとうございます! 斑雷に支配されて三年、我々ももう限界です。明日が一カ月に一回の儀式の日なんです。なのでお二人には、そこで斑雷を討っていただきたい。……お願いします!」
「分かりました。人間を利用して利益を被る邪悪な妖魔は俺が許しません」
決戦は明日。それまで虎和と御茶之介は竹永の家で泊めてもらう事になった。
「なぁ虎和君、どうして君はそんなに僕の言う事を遮るんだい? 流石の僕でも悲しいんだけど」
「それはあなたが無神経な事ばかり言おうとするからでしょ」
虎和と御茶之介は、駕籠(人を乗せて人力で運ぶ乗り物)に乗って村へと移動していた。
「それで、その村で行われてる『奇妙な儀式』っていうのは?」
「僕も人づてに聞いただけなんだけど、何やら数カ月に一度くらいの頻度で生贄が捧げられているらしいんだ。まぁ、それくらいしか分からないんだけど」
「……そんな事だろうと思って、調べてきたよ。久遠村は三年前から、年貢の徴収が上手くいっていないらしい。それ程に裏にいる妖魔が農民たちを支配しているのかも。もしくは、生贄だけじゃなく農作物も捧げられてるのかも」
これらは虎和が城からこっそり持ち出した機密情報だ。駕籠を運んでいる人に聞こえないよう、小声で御茶之介に伝える。
「ふむ……少なくとも生贄を求めたり儀式を行ったりする辺り、相当な知能がありそうだな。それ程の強敵って事か……」
知能が高い妖魔はほとんどの場合、比例するように強力である。御茶之介はその妖魔の強大さに怯えている……のではなく、嬉々とした表情を浮かべていた。
「強い妖魔か……実に良い! そんな強さの妖魔と対峙できるなんて中々無い経験だ! これは良い小説の題材になりそうだァ!」
「……やっぱり狂ってるわこの人」
やはり小説の事しか頭にない御茶之介の狂い具合に、虎和は頭を抱える。果たしてこんな奴と共に怪異を解決できるのだろうか。
~~~
しばらくして、目標の久遠村に到着する。
「ここが久遠村……見た感じは普通の農村だな」
「成程……これが農村の風景! 農村を訪れる事なんて中々無いだろうから今のうちに記録しておかなくては……!」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ。とりあえず村長に挨拶に行きますよ」
村に入って早々にいつも通りに暴走しようとする御茶之介をなだめ、二人は久遠村の村長の元へと向かった。
「この村に来客とは珍しい……。保馬城の方から来られたのですね。わざわざご苦労様です。私はこの村の村長の竹永と言います。本日はどういったご用件で?」
「この村で行われている奇妙な儀式について———」
「俺は藩の者です。ここ数年、年貢の徴収が上手くいっていない事があるようですが、何かあったのですか?」
あまりにも直球に聞こうとする御茶之介を押さえ、虎和が竹永に質問する。
「それが実は……三年前から鬼がこの村に住み着いて、生贄や農作物を要求するようになったんです」
竹永は小声で語りだした。話しながら震えているその姿は、いかにその鬼が恐ろしいかを物語っている。
「鬼、ですか」
「はい。鬼は斑雷と言って、雷の妖術で村の戦える者達を一瞬で倒してしまいました。それからこの村は実質的に斑雷に支配されて、一カ月の頻度で生贄を一人と農作物を要求されるように……」
鬼は妖魔の中でもかなり上位に位置する妖魔だ。位で言えば以前虎和が祓った煙ヶ羅と同格か、個体によってはそれ以上である。
「それがこの村で行われていた儀式の正体だったのか……。実に面白い。これは良い小説の題材に———」
「俺達は怪異を解決し、この村がまた健全に年貢を納めて生活を送れるような状態に戻すためにここに来ました。その斑雷という鬼、俺達が倒します」
またもや無神経な事を言おうとする御茶之介を黙らせて、虎和が宣言する。それを聞いた竹永は感激し、涙した。
「お二人とも……ありがとうございます! 斑雷に支配されて三年、我々ももう限界です。明日が一カ月に一回の儀式の日なんです。なのでお二人には、そこで斑雷を討っていただきたい。……お願いします!」
「分かりました。人間を利用して利益を被る邪悪な妖魔は俺が許しません」
決戦は明日。それまで虎和と御茶之介は竹永の家で泊めてもらう事になった。
「なぁ虎和君、どうして君はそんなに僕の言う事を遮るんだい? 流石の僕でも悲しいんだけど」
「それはあなたが無神経な事ばかり言おうとするからでしょ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる