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頂点に行けばどんな景色が見られるのだろう?
どんな気持ちを味わえるのだろう?
上へ。もっと上へ。他の人とは違う特別な存在になりたい。
そして僕はーー壊れた。
初陽がほつれ一つない学生服をよりいっそう輝かせる中、僕はある紙を睨みつけていた。そこには無情な数字と、同じ長さの棒が並んだグラフが書かれていた。僕はため息さえも出ないこの状況に落胆していた。
「これ、本当に僕のものか?」
紙の氏名欄を確認する。僕の名前に間違えはない。もう一度数字を確認する。しかし、当然その数字が小さくなることもない。
……50位。
一口に50位といっても、そこにはいろんな解釈が生まれる。
学校の偏差値によっても違うだろうし、個人の価値観によっても大きく変わるものである。
僕の場合、この50位というのは間違っても人には見せられない、黒歴史確定の順位だった。
唇を強く噛みしめる。
僕は姉の影響もあり、親や教師の反対を押し切ってこの高校に入学した。反対されたのは、僕の学力のレベルよりも下の学校を選択したからだ。
「自分の学力に見合った学校、あるいはそれ以上を選んだ方が将来のためだよ。高校は、一種のブランドなんだから」
大人達は口を揃えて僕に言った。しかし、僕は一応話は聞くも、受け入れなかった。それは、自分の学力より一つ上の学校に入学して底辺にいるよりも、ワンランク下げて上位にいた方がいいと考えたからだ。
ーー鶏口牛後。
……いや、それは体のいい言い訳で、本当は楽をしたかっただけなのかもしれない。あるいは中学で成績が良かった僕の価値を下げたくなかったのかもしれない。
どちらにせよ、高校ではいきなり1位とまではいかずとも、常に10位以内には入るつもりでいた。しかし、入学式の翌日に行われた学力診断テストの結果はこれだった。
手を抜いたつもりはない。むしろ、高校初めてのテストだからと意気込んで、中学の内容を満遍なく復習していた。
「このままじゃ僕は特別になれない」
ーー特別。僕にとっての特別。
それは、頂点に立つこと。人から与えられたものではなく、自分で掴み取る頂点。
それは目立ちたいということではない。むしろ目立つのは緊張や不安が伴うため、避けたいことであった。傍から見れば、この矛盾にも思える僕の思考をおかしいと思うかもしれない。
しかし、これは紛れもなく僕の本心である。世間ではこれを「両価性」と言っている。
愛しているけど、憎い。
会いたいけど、会いたくない。
目立ちたくないけど、他とは違う存在でありたい。
理解を得にくいこの気持ちを、誰に打ち明けるわけもなく胸の奥にしまい込む。そして、桜の花びらを失った大きな木に僕は誓いを立てる。
「僕は必ず特別な存在になって見せる」と。
地面に落ちた花片を見ながら、中学時代の記憶を回想するーー。
どんな気持ちを味わえるのだろう?
上へ。もっと上へ。他の人とは違う特別な存在になりたい。
そして僕はーー壊れた。
初陽がほつれ一つない学生服をよりいっそう輝かせる中、僕はある紙を睨みつけていた。そこには無情な数字と、同じ長さの棒が並んだグラフが書かれていた。僕はため息さえも出ないこの状況に落胆していた。
「これ、本当に僕のものか?」
紙の氏名欄を確認する。僕の名前に間違えはない。もう一度数字を確認する。しかし、当然その数字が小さくなることもない。
……50位。
一口に50位といっても、そこにはいろんな解釈が生まれる。
学校の偏差値によっても違うだろうし、個人の価値観によっても大きく変わるものである。
僕の場合、この50位というのは間違っても人には見せられない、黒歴史確定の順位だった。
唇を強く噛みしめる。
僕は姉の影響もあり、親や教師の反対を押し切ってこの高校に入学した。反対されたのは、僕の学力のレベルよりも下の学校を選択したからだ。
「自分の学力に見合った学校、あるいはそれ以上を選んだ方が将来のためだよ。高校は、一種のブランドなんだから」
大人達は口を揃えて僕に言った。しかし、僕は一応話は聞くも、受け入れなかった。それは、自分の学力より一つ上の学校に入学して底辺にいるよりも、ワンランク下げて上位にいた方がいいと考えたからだ。
ーー鶏口牛後。
……いや、それは体のいい言い訳で、本当は楽をしたかっただけなのかもしれない。あるいは中学で成績が良かった僕の価値を下げたくなかったのかもしれない。
どちらにせよ、高校ではいきなり1位とまではいかずとも、常に10位以内には入るつもりでいた。しかし、入学式の翌日に行われた学力診断テストの結果はこれだった。
手を抜いたつもりはない。むしろ、高校初めてのテストだからと意気込んで、中学の内容を満遍なく復習していた。
「このままじゃ僕は特別になれない」
ーー特別。僕にとっての特別。
それは、頂点に立つこと。人から与えられたものではなく、自分で掴み取る頂点。
それは目立ちたいということではない。むしろ目立つのは緊張や不安が伴うため、避けたいことであった。傍から見れば、この矛盾にも思える僕の思考をおかしいと思うかもしれない。
しかし、これは紛れもなく僕の本心である。世間ではこれを「両価性」と言っている。
愛しているけど、憎い。
会いたいけど、会いたくない。
目立ちたくないけど、他とは違う存在でありたい。
理解を得にくいこの気持ちを、誰に打ち明けるわけもなく胸の奥にしまい込む。そして、桜の花びらを失った大きな木に僕は誓いを立てる。
「僕は必ず特別な存在になって見せる」と。
地面に落ちた花片を見ながら、中学時代の記憶を回想するーー。
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