1 / 33
第一話 まずはフェンリル!
よくある話のはじまり
しおりを挟む
「アルテイシア・フォン・リリエンタール! 本日ただいまをもって、きさまとの婚約を破棄する!」
第二王子アマルの声が朗々と響き渡る。
その日、王家に次ぐ国内第二の格式を誇る大貴族、リリエンタール家の令嬢アルテイシアは、婚約者であった第二王子から婚約破棄を突きつけられた。
王子の隣でかの人にしなだれかかり、勝者の笑みを浮かべてアルテイシアを見下しているのはイメルダ・フォン・リリエンタール。
陰謀家の義妹。
アルテイシアはこの陰謀家の義妹によって婚約者を寝取られ、家を乗っ取られ、そして、王都を追放された。
よくある話のはじまり。しかし――。
この物語の先にざまぁはない。
成りあがりもない。
なぜなら、アルテイシアにはそんなことはどうでもいいと思えるほどに巨大な野望があったから。その野望とは――。
「この世界の神獣たちのおっぱいを使って、チーズを作る!」
アルテイシアは現代日本からの転生者。
「おっぱいは体内の血液から作られる! つまり、母は自分の命を分け与えて子供を育てる。そのおっぱいを使って作られるチーズはまさに! 母の愛そのもの!」
そのことを知って、感動して以来、チーズ一筋の人生。
「あたしはチーズで世界を幸せにする!」
そう誓い、チーズ職人となった。ところが――。
不慮の事故に遭い、若くして死んでしまった。
しかし、チーズへの限りない愛が奇跡を起こしたのか、かの人の魂は異世界の貴族の娘として転生した。そのことに気がついたとき、かの人が思ったことはひとつ。
「この世界ならいままでに見たことも、聞いたこともないチーズが作れる!」
そう。
この世界には、かつての世界では伝説のなかにしかいなかった神獣たちが実在している。
ペガサス。
ユニコーン。
グリフォン。
「魔獣と呼び、神獣と呼ぶ。獣と言うからには哺乳類。哺乳類ならおっぱいを出す! 伝説の魔獣神獣たちのおっぱいを使ってチーズを作ったら、どんなに素晴らしいチーズができるでしょう。ああ、ワクワクがとまりません!」
ちなみに、かの人が『おっぱい』と言う場合、純粋に『赤ちゃんにおっぱいをあげる』という意味での『おっぱい』として使っている。性的な意味はまったくない。というか、思い浮かばない。なにしろ、チーズ一筋の人生でキスすらしたことがないまま死んでしまったので。
そして、かの人にはもうひとつ、格好のチートスキルまであった。
携帯農場。
その名の通り、自由に持ち運びできる農場。
しかも、そこには立派な加工施設のある農家までついていた。
「これはもう、やるしかありません! 伝説の魔獣神獣たちのおっぱいから作られるチーズなら、特別な効能があるはずです。あたしはそのチーズを使って世界を幸せにします!」
そう思い定めたそのときから、アルテイシアは毎日まいにち日記をしたため、将来のための計画を立ててきた。
浮気者の婚約者も、陰謀家の妹も、すべてはどうでもよかった。なにしろ、かの人の頭のなかにはチーズのことしかなかったので。
そして、今日。
ついに!
婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられ、追放されたことで、窮屈な貴族生活から解放され、思う存分チーズ作りに励める日々を手に入れたのだ!
「ありがとう、イメルダ。感謝します。どうかこのまま、あたしのことは忘れて幸せになってください。あたしはチーズで世界を幸せにします。
そうとなったらもう『アルテイシア・フォン・リリエンタール』なんて長ったらしい、嫌味な名前とはおさらばです。今日からあたしはカッテージ・カマンベール。チーズ職人のカティ! さあ、行きますよ。世界一のチーズ職人目指して世界の果てまで行進です!」
これが――。
よくある話からはじまる、若きチーズ令嬢カティの旅立ちだった。
第二王子アマルの声が朗々と響き渡る。
その日、王家に次ぐ国内第二の格式を誇る大貴族、リリエンタール家の令嬢アルテイシアは、婚約者であった第二王子から婚約破棄を突きつけられた。
王子の隣でかの人にしなだれかかり、勝者の笑みを浮かべてアルテイシアを見下しているのはイメルダ・フォン・リリエンタール。
陰謀家の義妹。
アルテイシアはこの陰謀家の義妹によって婚約者を寝取られ、家を乗っ取られ、そして、王都を追放された。
よくある話のはじまり。しかし――。
この物語の先にざまぁはない。
成りあがりもない。
なぜなら、アルテイシアにはそんなことはどうでもいいと思えるほどに巨大な野望があったから。その野望とは――。
「この世界の神獣たちのおっぱいを使って、チーズを作る!」
アルテイシアは現代日本からの転生者。
「おっぱいは体内の血液から作られる! つまり、母は自分の命を分け与えて子供を育てる。そのおっぱいを使って作られるチーズはまさに! 母の愛そのもの!」
そのことを知って、感動して以来、チーズ一筋の人生。
「あたしはチーズで世界を幸せにする!」
そう誓い、チーズ職人となった。ところが――。
不慮の事故に遭い、若くして死んでしまった。
しかし、チーズへの限りない愛が奇跡を起こしたのか、かの人の魂は異世界の貴族の娘として転生した。そのことに気がついたとき、かの人が思ったことはひとつ。
「この世界ならいままでに見たことも、聞いたこともないチーズが作れる!」
そう。
この世界には、かつての世界では伝説のなかにしかいなかった神獣たちが実在している。
ペガサス。
ユニコーン。
グリフォン。
「魔獣と呼び、神獣と呼ぶ。獣と言うからには哺乳類。哺乳類ならおっぱいを出す! 伝説の魔獣神獣たちのおっぱいを使ってチーズを作ったら、どんなに素晴らしいチーズができるでしょう。ああ、ワクワクがとまりません!」
ちなみに、かの人が『おっぱい』と言う場合、純粋に『赤ちゃんにおっぱいをあげる』という意味での『おっぱい』として使っている。性的な意味はまったくない。というか、思い浮かばない。なにしろ、チーズ一筋の人生でキスすらしたことがないまま死んでしまったので。
そして、かの人にはもうひとつ、格好のチートスキルまであった。
携帯農場。
その名の通り、自由に持ち運びできる農場。
しかも、そこには立派な加工施設のある農家までついていた。
「これはもう、やるしかありません! 伝説の魔獣神獣たちのおっぱいから作られるチーズなら、特別な効能があるはずです。あたしはそのチーズを使って世界を幸せにします!」
そう思い定めたそのときから、アルテイシアは毎日まいにち日記をしたため、将来のための計画を立ててきた。
浮気者の婚約者も、陰謀家の妹も、すべてはどうでもよかった。なにしろ、かの人の頭のなかにはチーズのことしかなかったので。
そして、今日。
ついに!
婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられ、追放されたことで、窮屈な貴族生活から解放され、思う存分チーズ作りに励める日々を手に入れたのだ!
「ありがとう、イメルダ。感謝します。どうかこのまま、あたしのことは忘れて幸せになってください。あたしはチーズで世界を幸せにします。
そうとなったらもう『アルテイシア・フォン・リリエンタール』なんて長ったらしい、嫌味な名前とはおさらばです。今日からあたしはカッテージ・カマンベール。チーズ職人のカティ! さあ、行きますよ。世界一のチーズ職人目指して世界の果てまで行進です!」
これが――。
よくある話からはじまる、若きチーズ令嬢カティの旅立ちだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました
黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」
ブラック企業で過労死した俺、相川大地。
女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!?
右も左もわからない荒野でのサバイバル。
だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに!
美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。
これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。
農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!
【読切短編】転生したら辺境伯家の三男でした ~のんびり暮らしたいのに、なぜか領地が発展していく~
Lihito
ファンタジー
過労死したシステムエンジニアは、異世界の辺境伯家に転生した。
三男。継承権は遠い。期待もされない。
——最高じゃないか。
「今度こそ、のんびり生きよう」
兄たちの継承争いに巻き込まれないよう、誰も欲しがらない荒れ地を引き受けた。
静かに暮らすつもりだった。
だが、彼には「構造把握」という能力があった。
物事の問題点が、図解のように見える力。
井戸が枯れた。見て見ぬふりができなかった。
作物が育たない。見て見ぬふりができなかった。
気づけば——領地が勝手に発展していた。
「俺ののんびりライフ、どこ行った……」
これは、静かに暮らしたかった男が、なぜか成り上がっていく物語。
過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました
黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。
これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。
追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。
絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」!
畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。
はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。
これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる