14 / 48
第二話 発動! プロジェクト・太陽ドル
プロジェクト2 新人アイドルに突撃せよ!
しおりを挟む
「ほら、あの子よ、あの子。端っこの席にいるショートカットの……」
「あの、なんか地味っぽい子?」
「そうそう、いかにも冴えない陰キャって感じの子」」
と、なかなかひどいことをさらりと言う校内スピーカーであった。
『伝説の校内スピーカー!』を自認するかの人の名前は広渡風噂。
――『風の噂』なんて、すごい名前を付ける親もいたものね。
さくらはそう思ったが、よく聞くとそうではなかった。『風噂』と言うのは本人が校内スピーカーたるの矜持に懸けて名乗っているもので、言わばペンネーム。戸籍上の表記は『風砂』。
なんでも、母親がちょっとは知られた風景写真家で、とくに風によって生まれる砂漠の文様に魅せられて世界中の砂漠に撮影に行っているとのこと。そこから付けた名前が『風砂』。
――まあ、そうよね。いくら何でも、自分の子供に『風の噂』なんてものすごい名前を付ける親がいるわけないか。
さくらはそう思い、心から納得した。
ただし、当の風噂はと言うと『どうせ『ふうさ』なんて付けるなら、この字にしてくれればよかったのに!』と、本気で親の決定に不満をもっているらしい。校内スピーカーになったのも親の影響らしい。
「あたしもママみたいに世界中を飛びまわって、『知られざる事実』を世界中の人に伝えるジャーナリストになるのよ!」
そう熱く語っていた。
校内スピーカーになったのもそのための訓練……らしい。
――ジャーナリストと校内スピーカーじゃあ、かなりちがうと思うけど。
さくらはそう思ったが、一応『将来の夢』に向かって努力しているのは確かだし、その点にケチを付けるのも野暮だと思うので黙っていた。
ともかく、さくらはいま、その公ナイスヒーカー広渡風噂に連れられて特待科の教室にやってきていた。目当ては新人アイドルだという新入生。
「『ふぁいからりーふ』って言う、デビューした手の五人組アイドルユニットのひとりで『白葉』って言うんだって」
「ふぁいからりーふ? 白葉? 聞いた覚え、全然ないけど」
「まだ、デビューしたてらしいからねえ。でも、正直、そんなに可愛くないよねえ」
風噂の声には露骨な失望の響きがある。
失礼な、とは思ったけれど、さくらも正直、同感だった。
可愛くない、とまでは言わないが、決して目立つ顔立ちではない。あの程度の女子ならその辺にいくらでも歩いている。それになにより、妙に地味な印象で『アイドル』という言葉から感じられるキラキラ感がまったくない。
――アイドルってもっとキラキラしているものなんじゃないの?
アイドルに知り合いがいるわけではないし、そもそも、アイドルに興味なんてない。だから、アイドルのなんたるかを知っているわけでは、もちろんない。それでも、ごく一般的なイメージとして『アイドル=キラキラ』という印象がある。そのキラキラ感があまりにもないので『本当にアイドルなの?』と、ついつい思ってしまう。
――それとも、キラキラしてるのは仕事中だけで、普段はあんなものなのかな?
たしかに、日頃からキラキラ感を振りまいていては悪い意味で目だって大変だろうし、普段は地味にしていると言われれば納得できる。とは言え――。
――あの子がテレビのなかでキラキラしている姿は想像できないなあ。
と、やっぱりそう思うさくらであった。
「とにかく、ここでじっと見ててもラチがあかないわよね。ターゲットには接触あるのみ! 突撃、とつげき~」
「ちょ、ちょっと、風噂!」
と、風噂はこちらの方がよっぽどキラキラ感をまき散らしながらターゲット目がけて小走りに駆けていく。さくらもつられて後を追った。
「突撃タ~イム! ねえねえ、あなた、新人アイドルの白葉なんでしょ?」
「な、なに……⁉」
白葉というアイドル少女はよほど驚いたのだろう。思わず立ちあがり、走って逃げたしそうな様子になった。
――そりゃまあ、あんな勢いで詰め寄られたら逃げたくもなるわよね。
さくらはそう納得した。
なにしろ、風噂の勢いときたら、そのまま『かみついて離さない!』という感じのものだったので。
放っておいたらよけい、怯えさせるだけだと思ったのでさくらはふたりの間に割って入った。風噂の『突撃タイム!』とやらから白葉を守るため、風噂の視線を背中で遮り、挨拶する。
「ごめんなさい。驚かせちゃったわね。あたしは緑山さくら。この子は広渡風噂って言うの。どっちも普通科の一年生」
「あ、ご丁寧にどうも」
白葉はあわてた様子でペコリと頭をさげた。
芸能活動をしているだけあって礼儀はわきまえているようだが、いかにも世慣れていない印象。言ってしまえば『普通の田舎娘』。素朴で控えめ、印象は悪くはないが、華やかさという点ではまったく欠ける。
――やっぱり、アイドルって感じじゃないなあ。
どうしても、そう思う。
こうして目の前にしてみても特にかわいいわけではないし、胸が大きいわけでもない。スタイルはずんどうで、脚も決して長くない。なにより、見た目の印象がやはり、地味。とてもではないが、舞台の上でキラキラしている姿は想像できない。
――この程度なら、もっと目立つ子は中学にも何人もいたものね。
「あ、あの……」
いきなり押しかけてきた相手が、自分を見つめたまま押し黙ってしまったので不安に駆られたのだろう。白葉がうかがうように声をかけてきた。さくらはその声にハッとした。
「あ、ごめんなさい」
あわててそう言った。
そう言ったはいいが、あとの言葉がつづかない。
――え、ええと、なにを話せばいいんだろう?
「あたしの兄が協力してくれるアイドルを探しているの。一度、会ってみてくれない?」
なんて、いきなり言ったらどう考えても怪しい勧誘。かと言って、
「あなた、本当にアイドル? 地味だし、平凡だし、とてもそうは思えないんだけど」
なんて、正直に言ってしまうわけにはなおさら行かない。
――だいたい、風噂につられて出てきただけで、話をしにきたわけじゃないなあ。
さくらが困っていると、その陰から風噂がひょこっと顔を出した。こちらは躊躇とか、ためらいといったものをまったくもたずに話しはじめる。
「やっほ~、あたし、広渡風噂。新聞部の期待のホープ! 注目の新人アイドルにぜひとも取材したくってねえ」
「取材?」
その言葉に――。
白葉の瞳にギラリとしたものが宿った。
――うわ。こんな地味で平凡な子でも、こんな目をするんだ。
やっぱり、芸能人なんだ。
さくらはそう思い、少し見直した。
風噂は相変わらずの調子の良さで話しかける。
「そうそう、取材、取材。受けてくれたら校内新聞で大々的に報道しちゃうよお」
「それはぜひ、お願いします! なんでも聞いてください」
と、今度は白葉のほうが食い付かんばかりの勢いになっている。
つい先ほどまでの地味で平凡な印象とのギャップに面食らいながら、さくらは口をはさんだ。
「いいの? そんなに簡単に承知しちゃって。少しは警戒した方がいいと思うんだけど」
「リスクは承知の上です!」と、白葉。
「でも、あたし、人気ないから……グループのメンバーにも迷惑かけちゃってるし、少しでも知名度をあげるチャンスは逃したくないの」
そう語る表情の必死さ、真剣さに、
――やっぱり、プロなんだ。
と、そう思うさくらであった。
「ふぁいからりーふの白葉ね。聞いたことないな」
「うむ。わたしもない。わたしとしたことが、そんな新人アイドルグループがデビューしていることを知らなかったとはうかつであった。まさに、痛恨の極み」
森也が言うと、女子アイドル大好きのあきらが悔しさを噛みしめながら呻いた。
森也とあきらが共同経営者として運営するクリエイターズ・カフェ。そこで、ウエイトレスのアルバイトをしているさくらはバイト時間の終わったあと、ふたりに今日の出来事を報告していた。
「うん。アイドルって言ってもとくにかわいいわけじゃないし、普通の女の子なんだけどね」
「なにを言っている。それが良いのではないか。普通の女の子が自らの未熟さに苦悩し、迷い、悩みながら、輝きを放つ一流アイドルへと成長していく。その姿こそがなによりも尊いのだ。そして、その成長を見守り、後押しする。それこそが、我らドルヲタの使命であり、幸福そのもの!」
例によって例のごとく、背景に砕ける波濤を背負いながら力説するあきらである。
「このドルヲタのことは放っておいてだ」
と、こちらもいつも通り素っ気ない態度で言い切って、森也が妹に尋ねた。
「とにかく、都合のいいことにお前の学校に新人アイドルがいたわけだ」
「うん。まだ兄さんのことや、プロジェクト・太陽ドルのことはなにも話していないんだけどね」
「それがいい。いきなり、そんなことを話しても『おかしなやつ』と思われるだけだからな」
「それで、どうする兄さん? 誘ってみる?」
「ふむ」
と、森也は風噂が聞き出したプロフィールを見ながら首をかしげた。
『一応、プロなので事務所を通さない写真撮影は出来ない』というもっともな理由で写真を撮るのは断られたが、一通りの経歴は記されている。
「白葉。五人組の新人アイドルユニット『ふぁいからりーふ』の一員。出身地は茨城。所属事務所は『ハンターキャッツ』か」
「メジャーなプロとは言えんな。場末、というほどではないが、一流と呼ぶには遠い。しかし、社長の倉田葵は若いながらになかなかのやり手だそうだぞ」
あきらが説明した。さすが、女子ドルヲタだけあって芸能プロに関してもよく知っている。
「聞いた限りではまだまだ地下アイドルレベルのようだな。全国区のアイドルや芸能プロが興味をもつとも思えないから、その点はむしろ、好都合だが……やはり、本人に会ってみないとな。容姿や能力はカバーしようもあるが、本人の真剣さが足りなければどうしようもない」
「真剣さはあるように見えたけど」
「ゴチャゴチャ言っていないで直に会ってみればよかろう。妹よ。ライブの予定ぐらいは聞いてきたのだろうな?」
「あ、はい。聞くまでもなく、向こうから言ってきました。今度、横浜のライブハウスに出演するそうです」
「では、まずはそのライブを見に行くとしよう。ライブを見れば能力ややる気も大体わかるし、他のメンバーも確認できる」と、森也。
「おお、それがよい! ライブ後は控え室に突撃して即、交渉だ! なあに、心配するな。この赤岩あきらさまの名前があれば控え室に突撃するなど楽勝だ!」
そう言い放ち、豪快に高笑いするあきらであった。
「あの、なんか地味っぽい子?」
「そうそう、いかにも冴えない陰キャって感じの子」」
と、なかなかひどいことをさらりと言う校内スピーカーであった。
『伝説の校内スピーカー!』を自認するかの人の名前は広渡風噂。
――『風の噂』なんて、すごい名前を付ける親もいたものね。
さくらはそう思ったが、よく聞くとそうではなかった。『風噂』と言うのは本人が校内スピーカーたるの矜持に懸けて名乗っているもので、言わばペンネーム。戸籍上の表記は『風砂』。
なんでも、母親がちょっとは知られた風景写真家で、とくに風によって生まれる砂漠の文様に魅せられて世界中の砂漠に撮影に行っているとのこと。そこから付けた名前が『風砂』。
――まあ、そうよね。いくら何でも、自分の子供に『風の噂』なんてものすごい名前を付ける親がいるわけないか。
さくらはそう思い、心から納得した。
ただし、当の風噂はと言うと『どうせ『ふうさ』なんて付けるなら、この字にしてくれればよかったのに!』と、本気で親の決定に不満をもっているらしい。校内スピーカーになったのも親の影響らしい。
「あたしもママみたいに世界中を飛びまわって、『知られざる事実』を世界中の人に伝えるジャーナリストになるのよ!」
そう熱く語っていた。
校内スピーカーになったのもそのための訓練……らしい。
――ジャーナリストと校内スピーカーじゃあ、かなりちがうと思うけど。
さくらはそう思ったが、一応『将来の夢』に向かって努力しているのは確かだし、その点にケチを付けるのも野暮だと思うので黙っていた。
ともかく、さくらはいま、その公ナイスヒーカー広渡風噂に連れられて特待科の教室にやってきていた。目当ては新人アイドルだという新入生。
「『ふぁいからりーふ』って言う、デビューした手の五人組アイドルユニットのひとりで『白葉』って言うんだって」
「ふぁいからりーふ? 白葉? 聞いた覚え、全然ないけど」
「まだ、デビューしたてらしいからねえ。でも、正直、そんなに可愛くないよねえ」
風噂の声には露骨な失望の響きがある。
失礼な、とは思ったけれど、さくらも正直、同感だった。
可愛くない、とまでは言わないが、決して目立つ顔立ちではない。あの程度の女子ならその辺にいくらでも歩いている。それになにより、妙に地味な印象で『アイドル』という言葉から感じられるキラキラ感がまったくない。
――アイドルってもっとキラキラしているものなんじゃないの?
アイドルに知り合いがいるわけではないし、そもそも、アイドルに興味なんてない。だから、アイドルのなんたるかを知っているわけでは、もちろんない。それでも、ごく一般的なイメージとして『アイドル=キラキラ』という印象がある。そのキラキラ感があまりにもないので『本当にアイドルなの?』と、ついつい思ってしまう。
――それとも、キラキラしてるのは仕事中だけで、普段はあんなものなのかな?
たしかに、日頃からキラキラ感を振りまいていては悪い意味で目だって大変だろうし、普段は地味にしていると言われれば納得できる。とは言え――。
――あの子がテレビのなかでキラキラしている姿は想像できないなあ。
と、やっぱりそう思うさくらであった。
「とにかく、ここでじっと見ててもラチがあかないわよね。ターゲットには接触あるのみ! 突撃、とつげき~」
「ちょ、ちょっと、風噂!」
と、風噂はこちらの方がよっぽどキラキラ感をまき散らしながらターゲット目がけて小走りに駆けていく。さくらもつられて後を追った。
「突撃タ~イム! ねえねえ、あなた、新人アイドルの白葉なんでしょ?」
「な、なに……⁉」
白葉というアイドル少女はよほど驚いたのだろう。思わず立ちあがり、走って逃げたしそうな様子になった。
――そりゃまあ、あんな勢いで詰め寄られたら逃げたくもなるわよね。
さくらはそう納得した。
なにしろ、風噂の勢いときたら、そのまま『かみついて離さない!』という感じのものだったので。
放っておいたらよけい、怯えさせるだけだと思ったのでさくらはふたりの間に割って入った。風噂の『突撃タイム!』とやらから白葉を守るため、風噂の視線を背中で遮り、挨拶する。
「ごめんなさい。驚かせちゃったわね。あたしは緑山さくら。この子は広渡風噂って言うの。どっちも普通科の一年生」
「あ、ご丁寧にどうも」
白葉はあわてた様子でペコリと頭をさげた。
芸能活動をしているだけあって礼儀はわきまえているようだが、いかにも世慣れていない印象。言ってしまえば『普通の田舎娘』。素朴で控えめ、印象は悪くはないが、華やかさという点ではまったく欠ける。
――やっぱり、アイドルって感じじゃないなあ。
どうしても、そう思う。
こうして目の前にしてみても特にかわいいわけではないし、胸が大きいわけでもない。スタイルはずんどうで、脚も決して長くない。なにより、見た目の印象がやはり、地味。とてもではないが、舞台の上でキラキラしている姿は想像できない。
――この程度なら、もっと目立つ子は中学にも何人もいたものね。
「あ、あの……」
いきなり押しかけてきた相手が、自分を見つめたまま押し黙ってしまったので不安に駆られたのだろう。白葉がうかがうように声をかけてきた。さくらはその声にハッとした。
「あ、ごめんなさい」
あわててそう言った。
そう言ったはいいが、あとの言葉がつづかない。
――え、ええと、なにを話せばいいんだろう?
「あたしの兄が協力してくれるアイドルを探しているの。一度、会ってみてくれない?」
なんて、いきなり言ったらどう考えても怪しい勧誘。かと言って、
「あなた、本当にアイドル? 地味だし、平凡だし、とてもそうは思えないんだけど」
なんて、正直に言ってしまうわけにはなおさら行かない。
――だいたい、風噂につられて出てきただけで、話をしにきたわけじゃないなあ。
さくらが困っていると、その陰から風噂がひょこっと顔を出した。こちらは躊躇とか、ためらいといったものをまったくもたずに話しはじめる。
「やっほ~、あたし、広渡風噂。新聞部の期待のホープ! 注目の新人アイドルにぜひとも取材したくってねえ」
「取材?」
その言葉に――。
白葉の瞳にギラリとしたものが宿った。
――うわ。こんな地味で平凡な子でも、こんな目をするんだ。
やっぱり、芸能人なんだ。
さくらはそう思い、少し見直した。
風噂は相変わらずの調子の良さで話しかける。
「そうそう、取材、取材。受けてくれたら校内新聞で大々的に報道しちゃうよお」
「それはぜひ、お願いします! なんでも聞いてください」
と、今度は白葉のほうが食い付かんばかりの勢いになっている。
つい先ほどまでの地味で平凡な印象とのギャップに面食らいながら、さくらは口をはさんだ。
「いいの? そんなに簡単に承知しちゃって。少しは警戒した方がいいと思うんだけど」
「リスクは承知の上です!」と、白葉。
「でも、あたし、人気ないから……グループのメンバーにも迷惑かけちゃってるし、少しでも知名度をあげるチャンスは逃したくないの」
そう語る表情の必死さ、真剣さに、
――やっぱり、プロなんだ。
と、そう思うさくらであった。
「ふぁいからりーふの白葉ね。聞いたことないな」
「うむ。わたしもない。わたしとしたことが、そんな新人アイドルグループがデビューしていることを知らなかったとはうかつであった。まさに、痛恨の極み」
森也が言うと、女子アイドル大好きのあきらが悔しさを噛みしめながら呻いた。
森也とあきらが共同経営者として運営するクリエイターズ・カフェ。そこで、ウエイトレスのアルバイトをしているさくらはバイト時間の終わったあと、ふたりに今日の出来事を報告していた。
「うん。アイドルって言ってもとくにかわいいわけじゃないし、普通の女の子なんだけどね」
「なにを言っている。それが良いのではないか。普通の女の子が自らの未熟さに苦悩し、迷い、悩みながら、輝きを放つ一流アイドルへと成長していく。その姿こそがなによりも尊いのだ。そして、その成長を見守り、後押しする。それこそが、我らドルヲタの使命であり、幸福そのもの!」
例によって例のごとく、背景に砕ける波濤を背負いながら力説するあきらである。
「このドルヲタのことは放っておいてだ」
と、こちらもいつも通り素っ気ない態度で言い切って、森也が妹に尋ねた。
「とにかく、都合のいいことにお前の学校に新人アイドルがいたわけだ」
「うん。まだ兄さんのことや、プロジェクト・太陽ドルのことはなにも話していないんだけどね」
「それがいい。いきなり、そんなことを話しても『おかしなやつ』と思われるだけだからな」
「それで、どうする兄さん? 誘ってみる?」
「ふむ」
と、森也は風噂が聞き出したプロフィールを見ながら首をかしげた。
『一応、プロなので事務所を通さない写真撮影は出来ない』というもっともな理由で写真を撮るのは断られたが、一通りの経歴は記されている。
「白葉。五人組の新人アイドルユニット『ふぁいからりーふ』の一員。出身地は茨城。所属事務所は『ハンターキャッツ』か」
「メジャーなプロとは言えんな。場末、というほどではないが、一流と呼ぶには遠い。しかし、社長の倉田葵は若いながらになかなかのやり手だそうだぞ」
あきらが説明した。さすが、女子ドルヲタだけあって芸能プロに関してもよく知っている。
「聞いた限りではまだまだ地下アイドルレベルのようだな。全国区のアイドルや芸能プロが興味をもつとも思えないから、その点はむしろ、好都合だが……やはり、本人に会ってみないとな。容姿や能力はカバーしようもあるが、本人の真剣さが足りなければどうしようもない」
「真剣さはあるように見えたけど」
「ゴチャゴチャ言っていないで直に会ってみればよかろう。妹よ。ライブの予定ぐらいは聞いてきたのだろうな?」
「あ、はい。聞くまでもなく、向こうから言ってきました。今度、横浜のライブハウスに出演するそうです」
「では、まずはそのライブを見に行くとしよう。ライブを見れば能力ややる気も大体わかるし、他のメンバーも確認できる」と、森也。
「おお、それがよい! ライブ後は控え室に突撃して即、交渉だ! なあに、心配するな。この赤岩あきらさまの名前があれば控え室に突撃するなど楽勝だ!」
そう言い放ち、豪快に高笑いするあきらであった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる