一席お付き合い

那偽沙

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夏の落語会

芝浜 1

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何文太なにもんたの一席の後少し間を置き、出囃子がなると
頑張亭がんばっていちゃれんぢが出てくる、客席に向かってイエーイと言わんばかりに両の手を大きく振り座布団に腰をおろす、


「お初にお目にかかります、何事にも全力投球明日は明日の風が吹く何事にも頑張る、頑張亭ちゃれんぢと申します、それではね落語を一席話したいんですけれども、小難しい事は考えずデラックス…じゃなかったリラックスして聞いてくださいね、え~先程は寿限無という子の名前にまつわるお話でしたね、子はかすがいと言いまして夫婦のえにしを繋ぐ物の為の物ですが、その鎹で繋げる戸板がなければございません、本日はその戸板…夫婦にまつわるお話でございます、夫婦にも色々ございまして、仲の良い夫婦に仲の悪い夫婦どちらにいたしましても、えんは異なもの味な物と申しますように、なにが起こるかわからないから人生は面白い、まぁ私にはね奥さんはおろか、何文太さんみたいに彼女すらいないのでわからないんでございますが、なんにしても素敵な物だとおもっております、今この場にもねご夫婦だったり、お子さんを連れたご家族でお越しの方もいらっしゃるのではとおもいますが、帰る道中だったりで馴れ初め等を語るの良いもので、もしくはねご夫婦で一緒にお酒でも飲みながら語るのも一興でございます。しかし飲みすぎるのも良くはない、酒は飲んでも飲まれるな、飲み過ぎてそのまま夢心地ゆめごこちになることもありまして…とある長屋に熊五郎という腕は良いが酒好き魚屋がおりました、前の晚も浴びるほど酒を飲みましてそのままねてしまった



『ちょいと、ちょいとアンタ、起きとくれよ』

『んだよ…うるさいなぁ、なんだよこんな時分じぶんに、まだ御天道様おてんとうさまも出てねぇじゃないか、もう少し寝かせろよ』

『そうもいかないよ、アンタ昨日あたしと約束しただろう、明日こそ商いあきなに行くから今日だけ酒を飲ませてくれって、あれだけ飲んだんだからさっさと商いに行っとくれよ』

『わかったよ行くよ行けば良いんだろ…けどあれだ番台ばんだいとか天秤棒てんびんぼうの準備が…』

『もう出来てるよ、ちゃんと手入れもしてる』

草鞋わらじの用意…』

『昨日絞めなおして出してる、観念しなよ昨日今日魚屋の女房にょうぼうになったんじゃないんだよ、いいからいっといで』

『わかったよ、行ってくるよ仕方ねぇなぁ』

さて熊五郎さんぶつくさと文句を良いながら商いに向かいました
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