みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない

兎束作哉

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発売記念SS

二度目の熱は◆

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 人生初めての恋人ができた。

 ゆっくりと彼のベッドに下ろされれば、鼻腔いっぱいに彼の匂いが入り込んでくる。まるで、彼――セシルに抱きしめられているような錯覚さえして、匂いと彼のベッドにいるというその事実にくらくらしてしまう。
 子どもの頃は何度かセシルの要望に応えて一緒に寝ていたが、その時と今は明らかに状況が違う。
 本当に恋人になったんだよな……? 時々不安は襲ってくるものの、確かに目の前に彼はいるし、先ほど一度寮の部屋で身体を重ねたばかりだ。でも、熱は引かない。


「セシルだ……」
「俺以外に誰がいるんだ」


 少し不服そうにいったセシルは、俺の上に覆いかぶさり、八つ当たりのようなキスを俺の額に落とした。
 もう何度もキスをされて、されていないところはないんじゃないかと思う。
 ああ、いや数か所……というかここから下はダメだと明確に拒んだ場所はあるからされつくされてはいない。
 そんな阿呆なことを考えながらセシルを見上げれば、俺が他に注意を逸らしたことが気に食わなかったのかまたむすっとした表情で俺を見下ろしていた。


「もしかして、下手だったか?」
「えぇ?」
「さっきの話だ。俺も初めてだったんだ……上手くできたか分からない。もちろん、イメージトレーニングはした。妄想の中で何度もお前を抱いた、ニル」


 急なカミングアウトに頬がぽっぽっと熱くなってしまう。
 聞いてもいないことを話すセシルはどこか恥ずかしそうで「ああ、クソッ……」と小さく悪態をついて、その美しい銀髪をかきあげてため息を吐く。その息もどことなく熱っぽくて、彼もまだ熱が引いていないことを察することができた。
 学園で身体を重ねた。俺たちが三年間生活してきた学園内にある寮の部屋。普段は、二段ベッドであるため同じ布団で眠ることはない……のだが、俺が死にかけた後の学園生活では度々セシルは俺のベッドへ侵入してきた。押し返すこともできず、流されるまま抱きしめられて寝不足になったのはいい思い出である。あの時のこと、しっかり聞けていないのだがあれはわざとだったのか、まさか本当に無意識だったのかどっちだったのだろうか。
 俺がセシルの質問に対し答えないでいると、彼はしびれを切らして俺の頬を撫でる。そして小指をそっと耳の後ろにあててこしょっとくすぐった。


「あっ……も、もう、くすぐったいよ。セシル」
「それでどうなんだ。俺は下手だったか」
「下手って言ったら?」
「傷つく」
「言えないじゃん」
「へ、下手だったのか?」


 ちょっとからかうつもりで、答えを渋ればあからさまに傷ついた顔になった。
 下手なわけがない。というか、本人も、うまいだろうみたいな自信満々に俺を抱いたのだ。それに、俺があれだけ喘いでいたのに気付かないはずもない。まさか俺が演技していたとでも思っているのだろうか。そんなことは無理だ。人生初めて誰かと身体を重ねるのに演技なんてできるはずもない。俺は前世俳優でも何でもないのだから。
 セシルを見れば、不安そうに夜空の瞳を揺らしていた。
 俺を抱いたセシルが一番わかっているだろうに、不安になっても仕方ないじゃないか。
 俺がナカを締め付けて、クッ……と気持ちよさげに声を漏らしていただろう。俺だってあの時気持ちよかったんだ。
 どうしたら伝わるだろうかと考えてみたが、こればかりはもう一度シなきゃ分からないだろう。


「下手なわけないでしょ。むしろ、もう他の人とシ、シたのかな……って思ったくらい」
「そんなわけがない。お前以外俺は抱けない、反応しない!」
「そんな大きな声で言わなくても聞こえるよ!!」


 あまりにも迫力のある否定だったので、俺は思わず耳を塞いでしまった。
 嬉しい反面、間髪入れずに否定してきたので怪しさも……いや、ない。セシルに限ってないだろう。こんなことで嘘をつく人間でもないし、ついたところでメリットもない。
 ということは、俺以外抱かないし、反応しない……彼はこれまで、格式の高いご令嬢と結婚して世継ぎを残すものとばかり思っていたから、俺にしか反応しないなんてかわいそうな気もする。同時に、優越感もあって複雑だ。


「お前以外抱かないと約束する。何があってもだ。それに、まずニル以外に反応しないだろう」
「き、きれいなご令嬢に言い寄られても?」
「ああ」
「胸を押し当てられても?」
「ああ」
「……俺に似ている人に言い寄られても?」
「ああ。まず、判別できる。ニル・エヴィヘットという男はこの世でたった一人しかいない」
「あ、ありがとう……じゃ、じゃあそういう薬を飲まされたら?」
「お前のもとに一目散に行く……いや、お前を傷つけたくないから一人で処理する。もしも、目の前に薬を盛ったやつがいたとしても、そいつには反応しないだろうな」
「絶対的な自信……恐れ入るよ」


 信じてくれたか? と、セシルは俺に聞いてくる。
 俺も半信半疑だったが、ここまできっぱり言われてしまえば疑う余地もない。
 本気で俺のことが大好きなんだと、こっちが恥ずかしくなってくる。先ほどのセシルのようだ。
 愛されているってこんなに心地がいいんだ。胸がいっぱいになって、好きな人のこと以外考えられない。
 俺が笑っていることに気づいたのか、セシルはどうして笑っているんだと顔を近づけてくる。セシルは自分の顔の良さを知らないのだろう。その顔が暴力の一種であることにそろそろ気づいてほしい。それに、好きな人の顔が目の前にあったら恥ずかしいし、俺が正気でいられない。
 熱っぽい夜空の瞳が俺の真昼の瞳を見つめている。俺以外見ていくて、その焦点は俺からズレることなく固定されている。形のいい唇がそこに在り、逆光になって顔が暗くなっても、彼の表情ははっきりと見えた。整いすぎている。
 俺はこのまま見つめていたら沸騰しそうだったので、思わずギュッと目を閉じてしまう。
 すると、セシルがすぅっと息を吸い込んだ音が聞こえた。二人しかいない、しかも夜中ということもあって、より二人の音しか聞こえない。息遣いから布が擦れる音まで。感覚が鋭くなっているのか、どんな音も聞き逃さなかった。


「キス待ちか?」
「え、え、え?」
「目を閉じて、唇を突き出して……キスしたいというようにしか見えない」
「セシルがしたいんじゃん!」
「ああ、俺はしたい。だから、していいか?」
「……不意打ちよりかはまし」
「何だましって。嫌なのか?」
「……セ、セシルは! なんか慣れてるっぽいけど……俺は、こういうの慣れてないんだよ。俺の認識で初めて君とキスをしたときから……」


 キスが気持ちいいものだったなんて知らなかった。
 セシルに全部教えられた。
 好きとは、燃える感情とはどういうことなのか。キスの気持ちよさ、抱かれることで得られる快感と満足感。愛される喜び……俺はセシルに初めてをもらってばかりだ。知らない自分がずるずると引きずり出されていく。俺の知らない俺まで丸裸にされるようで恥ずかしい。でも、見てほしい。知らない俺を引きずり出して……その責任を取ってほしい。


「セシルとのキスは気持ちいいよ。すごく、さ」
「俺もとても幸せだ」
「……君ってば、本当に俺しか見てないんだね」
「今更か? 十八年もの間ずっと一緒に生きてきたはずなのにな……ニルはこういうことに疎いんだな。覚えた」
「覚えなくてもいいよ。もうわかったから。分かったし、君をもっとちゃんと見ようって思えたから」


 もう迷うことは一切ない。彼のストレートな愛を受けてしまえば、もう何も疑うことはないのだ。大好きな彼を信じる。俺がすることはそれだけでいい。


「それで? キスをしていいか。できるならその続きも……」


 セシルは俺の耳元で吐息を一杯含んだ声を放つ。耳が妊娠するからやめてほしいとふいっと顔を逸らせば、彼の唇が俺の耳に触れた。そして、次の瞬間カプっと俺の耳に噛みついたのだ。とはいってもかなり優しい噛み方で、歯形が残るような強いものではない。それでもくすぐったさはあって身を捩れば、彼の手が俺の太ももに触れる。ガシッと握ったかと思えば、太ももの感触を楽しむように揉まれてしまい、段々と手が上がっていききわどいところまで来てしまう。


「そこは……っ」
「キス、したい」
「それ以上のことしてる!」


 俺の耳から口を離し、改めて俺を見下ろす。
 夜空の瞳は先ほどより輝きを増していた。食われそうだ。もういい、食われてしまいたい。
 俺は震える唇を動かし、消えそうな声で「いいよ」と彼に許可を出す。俺もキスをしたい、のほうがよかったに決まっている。俺の気持ちを伝えたかった。相手だけが求めている風になっていないだろうか。そんなつもりは一切ないんだ!
 頭の中はまたぐるぐると回っていく。付き合ったばかりで冷められるとか……何としてでも避けたいこと。
 セシルは「ああ」と感嘆のような声を漏らし、俺の唇をそっと奪った。最初こそ触れるだけのキスだった。だが、角度を変え啄むようなキスに変わってから明らかにキスの濃度が変わり、息継ぎのために開いた口に無理やり舌をねじ込んできた。あっという間に長くて分厚い舌が、俺の口内を蹂躙し始める。
 逃げ場なんてない小さな口の中。引っ込めた俺の舌は秒で彼にからめとられ、擦られる。わざと音を出すように、唾液を絡ませて激しく動いた。

 やっぱり気持ちいい。

 ズグンと、下半身に熱が集まるのを感じる。
 すぐにも俺の口の中はどちらか分からない唾液でいっぱいになり、口の端から唾液がつぅと流れていく。
 息ができない。まるで溺れているみたいだ。
 そんなキスだけで気持ちよくなっている俺の身体にセシルは手を這わせていた。服の上から胸を撫で、先ほどのように下半身のきわどい部分に触れる。そして、俺のモノが勃っていることに気が付くと、嬉しそうに舌を吸い上げた。そんなことされたらイってしまう。
 服の上から俺のモノを撫でる。まるで俺のモノの形を確かめているようだ。
 その手はまた一旦離れ、俺の服を脱がしていく。そういえば着替えたんだったな、と寮から帰ってからのことを思い出したが、これまた曖昧な記憶だった。あまりにも初体験が良すぎて、帰ってからもぽーっとしていたような気がする。
 そして、いつのまにかセシルの部屋に来ており「ああ、またここでするのかな」と期待に胸を躍らせていたのだ。それが今――
 彼は俺の上半身の服のボタンをすべて外し、服の中に熱くて大きな手を忍ばせた。その指は迷うことなく俺の胸を掠め、乳輪の周りをくるくると円を描くように回し始める。


「あっ……ぁんっ」


 喘ぎ声が出そうになった瞬間セシルが口を離したので、べたべたな口から自分でも信じられないほど高い声が出てしまう。
 先ほども触れられて「ピンクだな」と指摘された胸だ。一度目の行為中に舐められ、吸われて痛気持ちいいという快感を味わった。それが残っているのか、セシルに触れられるとすぐにピンと己を主張する。


「いい声だな」
「……やだよ。恥ずかしい」
「俺しか聞いていない。それに、わざわざ声を押し殺さなくていいからな? 俺はニルの声を聴いただけでイケる」
「早漏じゃん……あっ、やだっ、つねないでっ」


 今のは自分でも失言だと思った。
 セシルは、俺の言葉を聞いた直後ギュッと俺の乳首を摘まんだ。少し痛いくらいだが、上に引っ張られると先ほどの快感を思い出してか、身体がバカみたいに反応する。腰がふわりと浮き、さらに下半身に熱が集まり始める。
 自分の身体が自分じゃないみたいだ。
 まだ、二回目……のはずなのに。


「先ほども思ったが感度が良すぎるな」
「び、敏感って言ってよ。あ、んっ……舐めないで」
「熟れた果実みたいでおいしそうだ。このまま食べつくしたいくらいだ」


 セシルはそういうと、俺の胸に吸い付いた。先ほどまで俺の口で暴れていた熱い舌がねっとりと俺の小さな飾りを包み込み、吸い付くように口に含む。
 これにはたまらず声を上げるしかなかった。


「あっ、んんっ、はっ……」


 声を殺すなと言われたが、自分の声も耳に入ってくるから嫌だ。
 セシルは俺の声でイケるといったが、自分自身の声を聞くのは辛いものがある。そう思って口を塞ごうとすると、セシルにいとも簡単に片手で両手を縛られてしまった。


「ちょっと!」
「悪い手だから縛っただけだ。聞かせてくれ。いっぱい聞きたい……普段聞けないニルの声を」
「そんなっ……あんっ、あっ、ああっ!!」


 俺の喘ぎ声を引き出したいという意図を感じずにはいられない。
 ちゅううっと、俺の胸を強く吸い上げる。たまらず腰を逸らせ、足がピンと伸びる。
 ダメだ、このままでは胸だけで達してしまう。


「あ、ぁ……んっ……あっ」


 それからまた舌の先端で、胸の一番感じる部分をつつく。次に、甘噛みされて軽く歯を立てられる。
 そんな愛撫を繰り返されているうちに、俺の突起はすっかり固くなってしまっていた。きっと、さっきみたいに真っ赤になっているに違いない。
 下半身がうずうずする。俺ってこんなに性欲が強かったっけ……


「せし……っ」
「下も触ってほしそうだな。いいか? このまま」
「うん、ぅん、いいから……」


 セシルは手際よく俺のズボンと下着を脱がせていく。言うまでもないが、そこはすでに勃ち上がっており、隠すものがなくなりそこは丸裸にされてしまった。
 羞恥心で体温が上がるが、セシルは俺の身体に触れるたび「冷たいな」というので、上がっているような気がして、実は俺の間違いという可能性もある。でも、触れられたところは確かに熱くて痛いくらいなのだ。
 セシルは、フッと俺のモノに息を吹きかける。その微々たる刺激だけでも俺の身体は大きく震えてしまった。
 そして彼はぴとりと俺の後孔に指を這わせる。


「もうすでに吸い付いてきている」
「そ、そんなはずないよ」
「いいや? 自分でもわかっているはずだ。すごく、ひくひくしていてかわいい」


 その感覚は分からない。でも、セシルがつぷっと指を押し込めばすぐにも彼を飲み込んでしまい締め付けているのがなんとなくわかった。自分の身体だからよく知ってる。
 俺はその現実を突きつけられ、浅ましさに顔を覆ってしまう。もう拘束はほどかれているので顔など隠し放題なのだが、力が入らないためただ顔に手を乗せているだけの状態になってしまっている。


「すごいな……まだシたばかりだから柔らかいな」
「俺の、ナカの! 感覚確かめないでよ」
「吸い付いてくる……かわいい」
 分からない。何がかわいいのか。
「すごいな……まだシたばかりだから柔らかいな」
「俺の、ナカの! 感覚確かめないでよ」
「吸い付いてくる……かわいい」


 分からない。何がかわいいのか。
 一本だった指は二本に増え、ばらばらと動く。探るような指の動きが続いた後、彼の指はある一点を掠めた。刹那、身体に電流が走る。


「ああっ!!」


 コリコリと弾力のあるそこを徹底的に苛め抜く。キャパシティーを超えた快楽は、俺に射精を促した。俺はあっという間に達してしまい、くたりとベッドに沈み込む。
 そのあと、俺に気づかれないようにとセシルは指をピッと引き抜いた。


「今のでイったのか。やはり感度がいいな」
「セシルが上手いからでしょ」
「お前の気持ちいいところは覚えている。だから、今後もニルを気持ちよくさせられる」


 何故か自信ありげに言われてしまい、その誇らしげな表情を見ているとなんだかイライラしてきた。イライラとムラムラが交互に来て身体がおかしい。
 本当にセシルは何もかも呑み込みが早い。先ほどまで童貞だったくせに、何でテクニシャンになっているのだろうか。
 俺ばかりが責め続けられるのは癪だと思うのに、未だ断続的に襲ってくる快感から逃げられない。俺もスキルを磨いて、セシルのことを気持ちよくさせてあげたい。互いに気持ちよくなきゃフェアじゃないだろう。
 でも今は無理だ。
 彼から与えられた快楽のせいで、身体が思うように動かない。
 セシルは、ぐったりとしている俺をよそにひくつくそこに顔を寄せていた。


「み、見ないでよ」
「見ないともったいないだろ」
「何ももったいなくないよ! もう……そんなに言うんだったら、挿れてよ……」
「いいのか?」
「驚いた顔、しないで……俺、つながりたいよ。君と」


 セシルのズボンもパンパンに膨れ上がっており、その形がくっきりと視認できた。俺ばかり気持ちよくなってセシルを我慢させるのはよくない。
 セシルが俺とのつながりを気持ちいいと言ってくれるなら、つながりたい。俺はちょっと体力がないけど。
 セシルは、俺の足にツンとつつかれビクンと身体を揺らした。


「ニル……そういうのはよくないぞ」
「我慢のほうが体に良くないよ」
「……俺は自制が聞きそうにない。だから、少し間を置こうと思ったのに」
「俺に気を遣わないで。俺に夢中で必死になってるセシルのこと好きだから……さっき寮の部屋で見たときも、今までに見たことないセシルで、ちょっとキュンとした」
「引いていないのか?」
「まさか……こんなことで引かないよ。むしろ嬉しい」


 俺が君によって知らない自分を引き出されるように、君も俺によって知らないセシルを引き出してほしい。
 ちょっと欲張りだろうか。
 俺は、彼に手を伸ばす。誘い方は分からない。でも、彼をその気にさせないと。
 セシルは、自制が利かないとか言ってすごく頑固で我慢強い。口と行動がイマイチあっていないような気もするのだ。だから、彼の理性を決壊させる言動が分からない。
 俺が両手を伸ばせば、チッとわずかに舌打ちの音が聞こえた……かと思えば、彼がグイッと俺の左足を抱え己の屹立を俺の後孔に宛がった。
 熱くてビクンビクンと脈打っている。今すぐに暴発しそうだ。


「後悔しないな」
「するわけないよ。君を早く受け入れたい」
「ニル、お前ってやつは――っ」
「……っ!?」


 ドチュンとその熱が穿たれ、目の前に星が散る。
 そして、次に肉を開いて奥まで届いたそれの快感が体を押そう。


「あ、あああっ!!」


 激しい快感。
 あとから波のように押し寄せたそれは先ほど与えられたものとけた違いだった。俺はすぐに押し返そうとしたが、ナカは俺の意志とは反して彼のモノをぎゅうぎゅうと締め付けている。いや……出さずにイっているような、そんな感覚だ。彼のモノを逃がさないとでもいっているようだ。
 生理的に涙が滲み、開いた口が塞がらない。
 そんな俺にお構いなしに、彼は俺の左足を肩にかけ、もう片方の手を腰に添えてゆっくりと己の腰を引く。長い彼のモノは俺のナカをずるずると擦りながらも、全て抜けてしまわないように調節する。そして、カリ首がギリギリ俺の入り口付近に辿り着いたところで再度奥を突いた。
 もう頭も身体もいっぱいだ。
 腰を盛大に逸らし、どうにか快感を逃そうとしたが無駄だった。足の先はピンと伸びて、脳まで震えている。
 与えられた快楽は強烈で、セシルのこと以外考えられなくなる。
 気持ちよさそうに顔をゆがめ、玉のような汗を振りまきながら彼は腰を振り続けた。激しいピストンに、パンパンと乾いた肌と肌同士がぶつかり合う音が響く。


「ニルッ、ニルッ!」
「はぅ、あっ、せしっ、せしるっ」


 お互いに名前を呼ぶ。
 俺は激しいこの動作に振り落とされないようにと、シーツを掴んでいた手を彼に手を伸ばす。
 するとセシルは俺の足をいったんおろし、俺のほうに顔を寄せ、頬にチュッとキスをする。あまりの熱に溶けそうだ。ううん、もう溶け合っている。
 嬉しくてきゅっとナカを締めれば、あの低い気持ちよさげな声が耳元で聞こえる。


「締めないでくれ。イってしまいそうになる」
「俺のナカでイって?」
「ニル、そうやって煽るのはよくない。本当に止まらなくなる」
「いいよ。それがいい、セシル……」


 俺から彼の唇を奪えば、よりいっそ俺の中で彼のモノは膨張する。だがまだ射精には達しない。忍耐がすごいのか、それともまだこれ以上大きくなるのか。
 俺は、セシルを見上げる。
 セシルは今までに見せたことのない言葉では言い表せない表情で俺を見下ろしていた。


「……好きすぎてどうにかなった」
「なりそうじゃなくて、なったんだ」
「ニルが悪い」
「俺のせい?」


 理不尽なような気もしたが、悪い気はしなかった。
 彼は「動くぞ」と少し緩めていた腰を再び動かし始める。そのたび、いいところが擦れて、甲高い声を上げてしまう。その声にセシルは「かわいい」とお決まりのセリフを吐く。
 息が上がる。心臓が飛び出しそうなほどうるさい。
 相手の体温、息遣い……何をとっても素敵だった。時々キスをしてくれて、身体に愛しているという痕を残してくれる。奥を突いて、穿って。その後抱きしめて、掻いて……
 この瞬間、一秒たりとも無駄にしない。瞬きは厳禁だ。
 セシルを全身で感じているこの瞬間、俺は世界一幸せに包まれていた。

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