みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない

兎束作哉

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番外編 新たな時代を切り拓く一歩

戦闘用ドレス

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 三階へ続く手すりに触れる。つるっとした断面はいつまでも触って痛くなるほど滑らかだ。

 この階段は、先ほどケルビー卿とキーランド卿と別れた場所から少し離れた場所にあった。そのため、戦闘が始まっただろうに音が全くと言っていいほど聞こえなくなってしまった。激しくない戦闘、もしくは決着がついてしまったか。
 二人が勝ってくれていればそれでいい。でもそうじゃなかったら――
 手すりをぎゅっと握りしめる。戻りたい衝動に駆られるが、彼らが回路を開いてくれたのだ。今戻ったら、何のためにここまで来たのか分からなくなる。


「ニル、大丈夫か?」
「……少し心配になっちゃったんだ。送り出してくれた彼らのこと」
「気になる気持ちはよく分かる。あの魔物も大概様子がおかしかったからな……もしかすると、フヤリル・スチェーネット伯爵令嬢の侍女だった女性のものかもしれないな」


 セシルはそう淡々と告げた。しかし、いつもとは違い言葉に強く怒りを含んでいるようにも感じた。ピリピリとうなじあたりが痛む。

 セシルの言う通りかもしれない。
 あの顔は、フヤリル令嬢の侍女のもの……エルバは、殺しを愉しむようなタイプではない。無駄な殺傷をして足が着くくらいならしないというのが彼女のスタンスにも思える。
 犠牲者が少ないからいい、とは完全に言えないし、すでに行方不明になった騎士たちは無残な姿に変えられてしまった。命の冒涜。許されるわけがない。

 ステュルカ聖王国は何故そうまでして、俺やフィルマメントを自国へ誘拐しようとしているのか。
 ズィーク・ドラッヘンが成し遂げられなかった悲願の達成。または、氷帝や竜に関わる何かに憑りつかれているのか。俺たちを狙う理由はそれしか考えられない。でも、俺たちをどう利用しようとしているのか、はっきりとは分からないのだ。未だに不明な点が多すぎる。


「ごめん、セシル。俺、こんなに怒ってるの初めてかも」
「ニルは優しいからな。今回の敵はあまりにも身勝手すぎる……我が国の騎士を冒涜し、ニルを傷つけた。これは万死に値する。情報を吐かせたのち、必ず……」
「引き留めちゃってごめん、三階へ行こうか。ここで立ち止まってても意味ないもんね」
「大丈夫か? この先に何かあるか分からないんだぞ?」


 引き返すという選択肢はない。
 しかし、この先に何が待ち構えているか正直見当もつかない。
 エルバは確実に戦力分散を狙った。この屋敷に仕掛けられたトラップのほとんどはカシュが仕掛けたもので間違いないだろう。だが、先ほどの蝙蝠の魔物に関してはエルバが先導してやったものだ。
 カシュはあくまで対ゼラフ用の足止め。カシュが出てこれば必ずやゼラフを足止めできるとエルバは知っているのだろう。そして、エルバ自身もゼラフとは戦いたくないと、一度目の交戦で思ったはずだ。

 エルバの弱点……ゼラフならばエルバを攻略できたのかもしれない。

 魔導士と騎士では、魔導士のほうに軍配が上がる。俺が魔法をフル活用して、セシルもエルバに極力近付くことができれば……数では勝っていても、相手の実力がすべてはかれたわけじゃない。やはり心してかからなければ。
 三階へ続く階段はもう少しで上り切ることができる。
 セシルはゼラフに教えてもらったのか、魔力解析を行いながら慎重に上っているようだった。彼がいたことでこの屋敷の攻略の難易度が下がっていたのは言うまでもないようだ。
 セシルもそれを十分理解しているようで、魔力解析の難しさに眉間にしわを寄せていた。


「……ヴィルベルヴィントが早く戻ってきてくれるといいんだが……すまない、弱音だな」
「ううん、ゼラフがすごく役に立ってくれたんだって、彼が離脱して俺も痛いほどわかっているから。もちろん、セシルが弱いとかじゃなくて……敵とは相性があるじゃん」
「精神攻撃系を得意としている相手だろう。それと、毒……まあ、相性が悪いわけではないが、仕掛けられたトラップの悪意は少しな……」


 珍しくセシルが困っている様子だ。
 それほど敵が強いのだろう。俺も彼女の魔法を食らったのでよく分かる。もう二度とあんなへまはしたくないし、セシルのお世話になるのは申し訳なさすぎる。


「大丈夫だよ。セシルがいてくれるから……って、俺も頑張るよ! 俺は、この間失態……チャラにはできないけど、あの事、すごく辛かったから。ちゃんと相手に食らわせないとって思ってる」
「ニルはたくましくていいな。俺は、お前のそういうところに惚れたんだ」
「……本当は弱い姿見せたくないんだけどね。君が受け入れてくれるから。けど、現状維持では満足しないよ。最近ちょっと筋トレを見直したんだ」
「ほぅ、これまでのメニューとは違うものにしたのか」
「筋肉量が落ちてきているし、これまでのと一緒だとさ、ほら、身体に無理がたたって逆にダメになるかもだし。父上に相談してまたちょっとずつね。本当は、全盛期まで戻したいんだけど、一度落ちたものを押し上げるのは相当難しいから。それと、言い訳になるかもだけど単純に時間がない」
「ニルが狙われなくて済む世界を作らなければな。そうすれば、お前は今やらなければならないことに集中できるのだし」
「それは、そう、だね……けど、俺も剣を振るうの好きだから。引退後の趣味も作っておかなきゃ」
「趣味か……」


 セシルはある? と聞こうとする前に、彼は自分について考えているようだった。
 俺のことやフィルマメントのことは大好きで尽くしたいと思っているセシルだが、個人的に俺たちが一切関係ない趣味はあるのだろうか。
 ちょっと気になるな、と和やかな話題に興味をそそられる。


「考えたこともなかったかもしれない。今からでも作れるだろうか」
「もちろんだよ。君は長いんだから」
「……っ、そうだな。そうだ。趣味はあるだけあったほうがいいな。長生きするのだから」


 セシルの瞳が一瞬揺らいだ。
 俺は素で言ってしまったが、彼の地雷に触れた気がしたのだ。

 寿命のこと――俺が切っても切れないものであり、セシルを残していくけど長生きしてねって彼にの呪いをかけてしまっている。フィルマメントのこと見てほしいという俺の願望なのだけど、それでも本当に長く生きてほしくて。俺の代わりに……俺がいなくなった後の世界で、セシルはどう生きるのだろうか。
 長生きすると俺に誓ってくれているが、今はまだ何も想像つかなかった。


「趣味、考えておこう。ニルに教えてもらおうとするか」
「それこそ、剣とか魔法を極める、とか?」
「一人でもできそうでいいな。だが、すぐに飽きてしまいそうだ」
「君も習得の速さが天才級だからね。長く続けられる穏やかな趣味か……少し平和になったら探しに行こうよ」
「平和になったらな」


 セシルはフッと眉を下げて笑った。
 平和な未来が見えないのは苦しいところだが……
 俺たちは暗い気持ちのまま階段を上り切る。屋敷の構造は入り組んでいない。そのため、行くべき場所は決まっていた。しかし、俺が最後の段を上り切った時、バッと俺たちの目の前に大きな扉が現れた。空間そのものが歪み、先ほどまであった廊下の類は消え失せてしまう。
 あまりにも奇怪な現象に俺たちは呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
 エルバも空間魔法が使えるのか。もしくは、カシュがもともと仕掛けていたものが今ここで発動したのか。


「どうやら敵は俺たちを自ら出迎えに来てくれたらしいな」
「……ここに、エルバが」


 まだ屋根裏部屋にいるのではないかと、可能性は残っていたがこうも分かりやすく扉が現れては、ここにいますと言っているようなものだ。
 本当は、このフロアにも何もなくて、屋根裏部屋……もしくは俺たちが散策しているうちに逃げたとか……交戦したくない気持ちも、ちょっとは俺の中にあったのだ。
 でも、こうして相手から挑戦状をたたきつけられてしまっては逃げるわけにもいかない。
 逃げたいと思うその気持ちを持った時点で俺の負けだ。


「セシル?」
「怖いのか?」
「……怖いって言っていい?」
「ああ、かまわない。怖いものの一つや二つあったほうがかわいいぞ」
「何それ……怖いよ。上手く立ち回れるかなとカ、フヤリル令嬢のこととか。俺、自分が弱くなった自覚あるから、本当は戦うのが怖い」
「ニルは十分強いじゃないか」
「それは、セシルの視点でだよ……俺は、俺の弱さが許せない。いつか、その弱さももっと認めてあげて、抱きしめられるように鳴ったらいいけど……今はまだ、もうちょっと無理かなって思う」


 弱音は吐きたくない。

 でも、弱い自分を認めないと次に進めないことも分かっている。そこは、学生時代よりも大人になったと感じているのだ。
 あの頃の俺は、弱い自分を絶対に認めたくなかった。弱音を吐きたくなかったし、セシルと並んでいたかった。その気持ちが強かったせいで、周りを見れていなかった。
 自分の弱点に気づけず、気づいても認めようとしなかった。停滞していた。
 ゼラフやアルチュール、レティツィアの強さを目の当たりにすると、自分の強さは……と悔しい気持ちでいっぱいになった。置いて行かれたくない。
 だからがむしゃらに走ることしかできなかったし、無理をすることしかできなかった。すごく子どもだったんだ。
 ようやく今、弱さや怖さを認めて、自分のことを客観視できるようになった。努力でどうにかならない穴のことも、全部全部ちゃんと……まあ、それでも意地っ張りだから認めたくないところはあるけど。
 セシルは、俺の手をそっと撫でた。そして、ギュッとつないで肩を寄せる。


「セシルには怖いものある?」
「ニルが死ぬこと。フィルがいなくなること」
「死ねないじゃん、俺」
「ああ、死なれては困る。だから守るんだ。守るために戦う。でも、今は守らなければならないものが増えた。皇帝になって、お前だけでをみるだけではダメだとな……民の平和を守り、大陸の平和を維持し……そしたら、お前のことも守れると」
「王として素晴らしい器だと思う」
「ディアークが背中を押してくれたんだ。不甲斐ないな……でも、友の力を借りて、今ここに立っていると思えば悪くないのかもしれない」


 強く手を握った後、セシルはその手をスッと離した。
 それから、扉のドアノブに手をかける。だが何を思ったのか「ニル、離れていろ」と俺に指示を出す。何をするのだろうか、と離れれば、セシルはその扉を蹴り飛ばしたのだ。
 衝撃の光景が目の前で起き、俺は顎が外れるくらい口を大きく開いてしまった。
 それは、ゼラフがやったことと同じだったから。
 あれだけ嫌っているはずの彼と同じ行動をとった。
 この空間……屋敷は、本来の屋敷の形を著しく変えている。だから、この扉を壊しても、実際の空間にある扉は無傷かもしれない。そう思ったら、やっぱり燃やしたほうが早いとか思っちゃう自分もいた。
 ただ、その方法を取った時、人質まで巻き込んでしまうのでいい手とはいいがたい。


(ま、まあ、確かに……慎重になって開けるよりは、中にいる相手もびっくりする奇想天外な開け方をしたほうが、いい、のかも……)


 ゼラフもそういう意味で先ほど扉を蹴飛ばしたのだろう。セシルが怒らなかったのもそれが理由だ。
 俺はゼラフの行動を理解するまでに少し時間がかかるが、セシルは瞬時に理解するのだろう。周りを排斥し、効率だけを求める二人は通じ合える部分が多いのかもしれない。
 蹴り飛ばされた扉はその場で粉々になってしまった。脆そうには見えなかったが、空間のゆがみによって消失したというほうが近い。
 扉は壊れ、中が見えるようになった。
 扉を蹴り飛ばしたセシルは、俺に手を差し出す。


「ニル、開いたぞ」
「……あ、あいた……うん、開いたね。じゃあ、すすもっか」


 恐ろしいくらい落ち着いているセシルにどう言葉を返せばいいか分からなかった。
 彼に差し出され手を取って、エスコートでもされるように部屋の中に入る。すると、壊れてしまったはずの扉は、再生し、俺たちの退路がふさがれる。


「……っ」
「あらあら、物騒ですわね。皇帝陛下様。レディの部屋に入ってくる礼儀がなっていないんじゃなくって?」
「趣味の悪い部屋になったものだな。スチェーネット伯爵の趣味でも、その娘の趣味でもないようだが」
「趣味が悪いって言いたいんですの? 開口一番にとっても罵ってくるじゃない。嫌いじゃないけど、気を付けたほうがいいわ。私じゃなきゃ、憤怒に飲まれていたかもしれないもの。人はね、自分のこと否定されるのが一番いやなのよ?」


 部屋の一番奥。
 最奥に置かれた机の上に座っていたのはエルバだった。しかし、その顔はこの間のものとは違った。フヤリル令嬢の顔ではない。
 赤と黒を基調としたドレスは胸元が開いており、上品なレースが何重にもあしらわれていた。それが一目でパーティー用のドレスだと分かり、彼女は俺たちが来るからと勝負服……戦闘服としてそれを着てきたのだと推察される。
 顔は誰もを魅了するほど美しく妖美であり、彼女が敵だと知らない相手からしてみればハニートラップでいちころだろう。艶やかな唇に、きめの細かい肌。少しつり上がった目は俺たちを値踏みしている。
 ラベンダー色の髪をふさっと払い、くすくすと口元に手を当て上品に笑っている。だが、その表情は俺たちを警戒しており、また同時に悪意に満ちていた。
 その足元には、メイド服を着せられた同じ色の髪の少女が手と足を縛られて踏みつけられている。
 猿轡をかまされ、目は黒いリボンで結ばれている。しかし、その布の隙間から見える肌は引きつっており、まるでやけどを負ったあとのような、針で縫われたような痕にも見えた。まるで、顔を縫い合わされたような……
 その女性がフヤリル令嬢であることはすぐに分かった。


「あらあら、私よりも彼女に目を奪われるなんて……ニル様は見る目がないわ」
「彼女を解放しろ。エルバ」
「一目でわかるのね。驚いたわ」


 エルバは尖ったヒールで彼女の頭を踏んでいた。猿轡で口の開けない彼女は声にもならない悲鳴を上げる。その黒い布が染みているのが見え、痛みに涙を流しているのが分かった。
 俺は今すぐやめろと身体が前に出たが、スッとセシルに制されてしまう。
 感情のまま動けば相手の思うつぼだ。冷静にならなければ……分かっている。
 セシルに止められ少しだけ落ち着きを取り戻せた。騎士時代はもっと冷静だったはずだ。俺もいろんなものを見て、触れて、本来の優しさがさらに膨らんだのかもしれない。弱くなったのか、いいように成長したのか。でも、優しいだけでは何も守れない。逆に利用されるがオチだ。
 皮膚に爪が食い込むほど拳を握り、キッとエルバを睨みつける。
 エルバは、自分が踏みつけている彼女がフヤリル令嬢であると気づいたことに驚きを隠せないようだった。どう考えても分かるだろう、という目を向けてやれば、彼女はぷっくりと膨れた唇に触れ、少し考え込むような仕草を見せる。
 俺たちが切りかかれないのは、人質がいるからだ。そうでなければ、彼女のシンキングタイムなどただの隙である。


「分かるだろう。お前が連れ去った、お前がそそのかし、顔を奪った彼女のことを。俺が分からないわけがない!!」
「まあ、顔見知りではあったから……かしら。でも、こんなにも醜くなって彼女だってわかるのが不思議なのよ」
「醜い? どこが」
「この布の隙間から見えるでしょう? 私は優しいから彼女に顔を返してあげたの。もう、この顔には利用価値がなかったしね。でもね、暴れたから上手く縫い付けられなかったのよ。最も、一度切り離した顔の皮を再びつけ直すなんてこと普通ならしないから上手くいかなくっても当然なんだけど」
「狂ってる……」


 美しくなければフヤリル・スチェーネット伯爵令嬢じゃないのか。
 エルバの基準は、美しいかそうでないかの二極らしい。俺にはその感性がない。醜いなんてない。心が醜いやつはいるし、それが顔に出るやつもいる。でも、フヤリル令嬢は心もきれいで努力家だ。それが分かる顔だった。顔をはぎとられても、縫い直されても、彼女の美しさが変わるわけじゃない。美しさとは心に宿るものだろう。それが表面に出てきて見えるだけだ。
 俺は彼女にそれを伝えようかと思ったが、どうせこの女が俺の言葉に耳を貸すわけがないと口を閉じる。

 無駄な時間だ。

 それよりも、隙の無い彼女にどう近付くかだ。フヤリル令嬢を救い出すことを最優先にする。どうせ、彼女は目的を達成できなければ自国へ帰れないわけなのだから。ここで彼女を逃したところで、また次の機会がある。ただ、長期戦になればなるほどこちらの手の内も割れていくし、労力と時間とお金がかかる。この事件にばかり人員を割いていられない。
 だからここで、彼女を倒さなければならない。
 一歩踏み出したところで、エルバに名前を呼ばれる。


「ニル様、簡単な取引をしませんか」
「……お前の条件はどうせろくでもない。フヤリル令嬢を無傷で返してくれるのなら」
「ニル、止めろ。どうせ、この女の目的はお前だ。スチェーネット伯爵令嬢がどうなろうが、この女はどうでもいいのだろう」
「人質がいるから動けない。かわいそうね」


 エルバは勝ち誇ったように笑っていた。
 やはり条件は俺だったか。俺が彼女について行けば、フヤリル令嬢を解放してもらえる……と。
 条件を飲むことは簡単だが、俺が攫われることによりその後に出る損失は大きいものに決まっている。


(いや、俺がいなくなってほしい人もいるだろうけど……)


 そういう人には耳を貸さないと決めているが、今回の作戦……俺を狙っている敵がいると知りながら、俺を囮に使おうとしたやつらがいた。俺のことを疎ましく思っており、皇后の座から引きずり下ろしたい一定数の人間がいるということ。表だって言わず「敵が欲しい餌を吊り下げれば、こちら側に尻尾を見せるだろう」と回りくどくいってこの作戦をまとめた。
 嫌われるようなことをした覚えはない。
 保守派の筆頭格であるあの人とは未だ分かり合えていないが、ここまで露骨に嫌っている感じではなかった。あの人はあくまで、俺の考えには賛同できない。これまでの大陸の歴史を考えて、そんな突飛なことをしたら多くの人が混乱してしまう。ゆえに現状維持を望む、という形だった。正面からやりあおうという気はしなかったし、とても静かで、しかしながら強い意志を感じた。
 ならば、あの人の派閥に与している考えの至らない誰か、か。まあ、今はどうだっていい。


「もちろん、こちらの条件はニル様が私と共にステュルカ聖王国についてきてくださることですわ。従順に……ね?」


 エルバはにたりと笑う。
 俺に手を差し出し、その手を取れと催促するように指を艶めかしく動かした。
 その足は強くフヤリル令嬢を踏みつけ、彼女の「――っ!!」と声にならない悲鳴が響く。
 その手を取ればフヤリル令嬢は解放される。簡単な条件だ。けど――


「――交渉決裂だな」


 
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