白馬のプリンスくんには、どうやら好きな人がいるらしい

兎束作哉

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第2章 球技大会で見せつけろ

09 準優勝

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「凛、トスあげろ! トス!!」
「わかってる……トスっ!!」
「低い! 凛ちゃんのへたくそ! ああ、クソ、チッ……!」


 理人が後ろでレシーブしたボールが前方へ飛んでくる。その軌道は緩やかで高さもあった。しかし、眩しい白い太陽のせいで落下地点に入るのが遅れ、低いトスを秀人に返すことしかできなかった。秀人は舌打ちを鳴らしながらも、俺のへなちょこトスでどうにか相手コートへアタックを決める。
 ボールはネットすれすれで相手コートに入ったものの、決定点となるものではなく、簡単に抑え込まれてしまった。

 午前の部が終わり、なんとか決勝トーナメントに勝ち進んだ俺たちは、準決勝に臨んでいた。ここで勝てれば決勝戦が待っている。
 相手は、バレー部で固めた最強チームで、予選の総当たり戦で全勝、相手をゼロ点に抑え勝ち進んできた強豪だ。もうすでに、四点も差が開いており状況はかなり絶望的。
 安定した三段攻撃は見事なもので、すぐに味方コートにボールが戻ってくる。
 消える魔球や、バチーン!! とけたたましくなるアタックは、受け身を取るのも憚られる恐ろしさだ。
 帰ってきたボールはかなり早く、受けるのでも精いっぱいだったが、後方にいた燈司が受け止める。あの小さい身体で、痣ができるような強烈な攻撃をきれいに受け止め、緩やかに上げ前方へ戻してくれた。


「おい、今度はちゃんとしろよ。凛ちゃん!」
「わかってるって、トス!」
「ほい来た。今度は俺が打つ!」


 秀人がアタックを討つと見せかけて、光晴がぬるっと秀人の後ろから出てきた。相手も予期していなかったようで反応に遅れる。
 光晴は、今度は狙ってネット際に落とした。タッチネットは減点なため相手チームはボールを取ることができず、ポーンポン、と白いバレーボールが砂地の上をバウンドした。

 一点――審判が俺たちのチームに得点を入れる。

 イエーイ! と、得点を入れた光晴は秀人とハイタッチをしていた。
 男子部門の準決勝ということもあり、予選落ちしたクラスメイトの女子たちが俺たちの試合会コートを囲んでいる。


「白雪くん、大きいだけでへたくそじゃん」
「このチームで失点につながってるのって、白雪くんだよね」
「それに比べて、おうじくん! わたしたちより華奢なのに、あんなボール受け止めるなんて。運動神経よすぎ」


 俺に文句を垂れつつも、そのほかのメンバーを褒めちぎり、キャッキャッとはしゃぎながら観戦していた。


(悪かったですねー身長が高いだけで、運動神経よくなくて)


 俺は、すでにサーブで二失点もしている。周りに見られているという緊張があったかからか、と聞かれたら否定はできないが、サーブは体育の授業から苦手だった。そのため「凛ちゃんにはサーブ打たせるな」と、体育の授業でクラスメイトに言われ白い目を向けられた。

 二年になってもバレーはあるが、サーブだけはどうもうまくできなかった。

 こちらに点数が入ったので、一巡し、今度は光晴がサーブを打つ番だ。俺の後ろにはちょうど燈司がいる。
 光晴はまたもポーンとネットギリギリに落としたが、今度は読まれていたため、簡単に拾い上げられる。そして、お返しと言わんばかりに相手もネットすれすれを狙って手ではじくよう俺たちのコートにボールを入れた。

 俺は何とか片手で上にあげ秀人が二撃目で返す。
 反応できたからよかったものの、ここで落としていたらまた俺のせいにされただろう。
 相手チームはまたも華麗な三段攻撃をし、今度は前方か後方かどちらがとればいいか判断に迷う位置にボールを返してきた。


(これ、俺がいったほうがいいか……?)


 そう判断し、俺は落下地点に入るため後ろに下がった。しかし、後ろから燈司が走ってくるのが聴こえ、俺は足を止める。このままでは、燈司とぶつかってあの日のようなことが起きかねない。
 俺は靴を砂利の上で滑らせ足に踏ん張りを聞かせる。だが、ボールが落ちたのは、俺と燈司……いや、俺がとらなければならない位置だった。
 ボールが地面につき、相手チームに一点が加算される。

 ギャラリーにいた女子たちは「今の取れないってどういうこと!」とブーイングをかましている。
 そんな俺を不憫に思ったのか、秀人も光晴もドンマイと声をかけてくれる。

 だが、今の一点は大きい。
 あと二点取られたら終わりだ。


「凛……!!」
「ああ、いや、わりぃ。俺となくて」
「……じゃなくて。俺がとるべきだったと思って、でも」
「ちょっと怖かったんだよな。お前が前に掛け上がってきてるの気付いてさ。このまま後ろに行ったら衝突するかもって。あの日みたいに」


 燈司は、自分がとるべきだったと謝ったが俺は取れたかもしれないのに足を止めてしまったと伝えた。あの日のように、俺が燈司を押し倒して怪我させてしまう可能性が頭をよぎった。燈司は小さいから、俺のせいで骨折なんかしたら……
 だから、怖くて後ろに下がれなかった。
 結果、一点をとられてしまい外野からヤジを飛ばされた。


「大丈夫だよ。凛」
「な、何が大丈夫なんだよ」
「俺、凛のこと受け止めるよ。倒れない、絶対に。だから、かまわず下がってきて。あと二点だし、意地でも死守しなきゃ」


 燈司は、俺がボールを取れなかったことを怒るでもなく、下がっても受け止めるからというイケメン発言をした。
 額には汗がにじんでおり、頬を伝って落ちていく。リストバンドをした右手で額の汗をぬぐい、燈司はうん、と頷いた。


「そうだな。あと二点。今からでも挽回すっか」


 そんな燈司を見ていると、くよくよしていられないな、と俺は持ち直す。
 相手側のサーブがやってくる。俺は腰を低くし、いつでも対応できるよう、ボールに集中した。
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