白馬のプリンスくんには、どうやら好きな人がいるらしい

兎束作哉

文字の大きさ
25 / 41
第3章 修学旅行に行ったらば

05 りんご飴

しおりを挟む
 
 ジェットコースターに乗って酔った。

 寝不足なわけじゃないが、それに近い疲労感はあり、その状態で乗ったのが良くなかったと思う。
 だが、修学旅行の班行動。水を差したくなくて黙っていた。でも、燈司だけは俺の体調の変化に気づいてくれ、俺の歩くスピードに合わせて隣を歩いてくれている。


「凛、どこかで休む?」
「いいよ。俺のために皆巻き込むの悪いし。ジェットコースター以外なら乗れる」
「そっか……そういえば、俺、酔ってからでも効く酔い止めあるから。水……自動販売機で買ってくるから」
「いいって。燈司。遊園地の中の自動販売機って高いじゃん。つばで飲み込む」
「それって危険だよ?」


 燈司は、俺の背中をさすりながら優しく注意する。
 俺は、そんな心地のいい燈司の声を聞きながら、先を歩いていた秀人が物珍しそうにある店の前で足を止めたことに気が付いた。その店は、りんご飴専門店らしく、甘い飴の香りがこちらまで漂ってくる。


「この遊園地の名物だな」
「おっ、毒島。詳しぃな~」
「前に弟ときたことがあるからな。ここのりんご飴はおいしい」


 珍しく修二が口を開き、秀人や光晴に説明を始めた。
 そんな会話を盗み聞きしているうちに、俺もりんご飴が食べたくなってきて、先ほどの気持ち悪さが徐々に抜けていくのを感じた。
 それから、どうやらみんなでりんご飴を買ってベンチで食べると決まったらしく、俺と燈司を呼びつけてメニューの書いてある紙を手渡した。メニューには、キャラメルリンゴや、チョコリンゴ、りんご飴専門店とは言いつつも飴だけにとどまらないバリエーション豊富なリンゴが並んでいた。どれもワンコインとちょっとで買える値段で手ごろだ。
 値段が安いこともあり、秀人はすかさず「よーし、凛ちゃんおごってあげよう」と俺をニヤニヤとみてくる。
 俺は、そんな秀人に呆れつつも、燈司と一枚の紙を一緒に見ていた。


「燈司は何にする?」
「俺かあ……キャラメルリンゴっておいしそう。あっ、でもシナモンもいいよね」
「お前の食べたいの二つ選べよ。それで、シェアしようぜ。あの時みたいに」
「ワッフル?」


 燈司の問いかけに「そう」と答えれば、また燈司は嬉しそうに笑っていた。
 なんだかんだ言って、あの日のデートは記憶に残っている。当日着てきた燈司の服も、会話も、映画の内容は少し忘れたけど、ワッフルと、見送ってくれたけど最後は一緒に電車に揺られて帰ったことも。
 そういえば、あの日以来遊びに行ってないことを思い出した。
 燈司は本当の恋人とデートに行ったのだろうか。
 酔ったせいか、頭の中に昔のこととちょっと前のことが巡っていく。でも、その渦の中心にいるのは常に燈司だ。
 秀人がなかなか決まらない俺たちにしびれを切らしやってくる。まるでヤンキーのように「決まったか? あ?」と言ってきたため、俺は燈司に二つ好きのを選ばせた。秀人はオーダーを聞くと店に走っていき、最後尾に並んだ。知らぬ間に列ができており、このりんご飴が人気であることが証明された瞬間だった。


「凛、よかった?」
「フレーバーか? ああ、うん。燈司と一緒に食べられるなら何でもいいや。俺、リンゴ好きだし」
「確かに。凛って、誕生日ケーキいっつもリンゴのケーキだもんね。アップルパイとか、タルトタタンとか」
「よく覚えてるな。今年も行きつけのお店のアップルパイがいいなーって母ちゃんに言っておいた。燈司もよかったら食べにこいよ」
「予定が合えばね。でも、ちゃんとお祝いはするからね」


 燈司はそういうと、カチューシャを直して、へへっと笑う。何だか、今日はいつにも増して笑ってくれる気がする。


(燈司の笑顔っていいよな。声もだけど、顔も……)


 声と顔だけじゃない。
 燈司は毎年しっかり俺の誕生日を祝ってくれる。俺も忘れないけど、燈司はスマホを持ち始めてから毎年零時ぴったりにおめでとうとメッセージを入れてくれるのだ。
 俺なんか、零時にはバタンキューと倒れて寝てしまっているのに。でも、自分の誕生日の日だけは寝ていても起きてしまう。モーニングコールと似た、燈司のおめでとうメッセージが入るから。毎年、手打ちしているのが分かる文面に、スタンプに。
 燈司は、俺よりも早く寝て、朝早いタイプだが、俺の誕生日前日だけは零時まで起きていてくれる。そんな燈司のことが俺は――


「おうじくんのも俺の驕りな?」
「いいの、秀人?」
「まあ、凛ちゃんだけじゃなくて俺たちとも仲良くしてくれるし。な、光晴」
「そうそう。おうじくんにはいつも助かってる!」


 キャラメルリンゴとシナモンリンゴが入ったカップを持って帰ってきた秀人は、これは自分のおごりだと言って燈司に手渡した。
 俺には雑に押し付けるように渡したのに、燈司には丁寧に渡している。俺の扱いの悪さが伺えてイラっと来たが、秀人はこういうやつだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

だって、君は210日のポラリス

大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺 モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。 一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、 突然人生の岐路に立たされた。 ――立春から210日、夏休みの終わる頃。 それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて―― 📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。  エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。

自分勝手な恋

すずかけあおい
BL
高校の卒業式後に幼馴染の拓斗から告白された。 拓斗への感情が恋愛感情かどうか迷った俺は拓斗を振った。 時が過ぎ、気まぐれで会いに行くと、拓斗には恋人ができていた。 馬鹿な俺は今更自覚する。 拓斗が好きだ、と――。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

【完結】恋愛初学者の僕、完璧すぎる幼馴染に「恋」を学ぶ

鳥羽ミワ
BL
志村春希は高校二年生で、同い年の幼馴染・須藤涼太のことが大好き。その仲良しぶりといったら、お互い「リョウちゃん」「ハルくん」と呼び合うほどだ。 勉強が好きな春希には、どうしてもひとつだけ、全く理解できないことがあった。それは、恋心。学年一位の天才でもある涼太にそのもどかしさを愚痴ったら、「恋」を教えようかと提案される。 仮初の恋人になる二人だけど、春希が恋を知ったら、幼馴染の友達同士のままではいられない。慌てる春希に「パラダイムシフトを起こそうよ」と提案する涼太。手を重ねて、耳元で囁く涼太。水族館デートに誘う涼太。あまあまに迫られて、恋愛初学者の春希が陥落しないはずもなく……。 恋を知ったら友達でいられない。でもこの思いは止められない。 葛藤する春希の隣で涼太だけが、この関係は両片思いだと知っていた。 幼馴染の溺愛恋愛ケーススタディ、開幕! 最後はもちろんハッピーエンド! ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうへ投稿しています

前世が悪女の男は誰にも会いたくない

イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です ーーーやってしまった。 『もういい。お前の顔は見たくない』 旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。 前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める 頑張って運命を回避しようとする話です

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

処理中です...