白馬のプリンスくんには、どうやら好きな人がいるらしい

兎束作哉

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第4章 勇気を出してけ文化祭

02 文化祭準備

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 ホワイトボードにはデカデカと「文化祭について!」と書かれていた。
 仲のいい人たちで輪になり、あれこれと文化祭の出し物について話し合い、決まったところからホワイトボードに書きに行く。
 お化け屋敷や展示といった実現可能そうなものから、喫茶店やジェットコースターなど実現が難しそうなものが次々に書かれていく。しかし、ある女子が「劇をしたい!」と言い出したことを皮切りに、どんな劇をするか題材が書き込まれるようになっていった。


「こういうのは一軍女子に任せるのが限るなー」
「うんうん。俺たちは波流されるまま~文化祭を楽しめればいいし」
「お前ら気楽だなあ……一軍女子に任せると、だいたい『男子ちゃんとやる!』ってしょっ引かれるんだぞ?」


 いつものように、燈司、秀人と光晴と固まって喋っていれば、俺の物まねがツボったのかバカ二人は爆笑した。燈司は「声が大きいよ」と二人を心配していたが、二人は特に気にする様子はなかった。白い目で見られていることに慣れてしまったらしい。


(まあ、ぶっちゃけ。俺は出し物何でもいーけど)


 今俺の頭の中は燈司一色だから。それ以上何も入ってこない。


(はあ~文化祭早く来ねえかな。その時かっこよく告白して? んで、オッケーもらって?)


「……うわっ。凛ちゃん、今日朝から変じゃね?」
「鼻の下伸びてるよねーもしかして~」
「いや……まだ、そんなんじゃねえから!!」


 秀人と光晴にはやし立てられ、俺はバンバンと机をたたいてしまった。クラス中の視線が一気に集まり、俺は大きな身体をしゅんと丸めて椅子に座り直す。


「じゃねえよ、まだ」


 ほ~ん、と興味深そうに二人の声が聴こえたが、俺は机に突っ伏した。
 夏休みまでにそんな関係になれていたらよかった。でも、俺に勇気がなくて伝えられずにここまでずるずると来てしまったのだ。情けないことこの上ない。
 何を俺は迷っているのだろうか。


『もしかしたら、相手が違う人と進んじゃうかもだし。不安なんだよ』


「………………あ」


 燈司が言ったことが今になって頭の中をぐるぐると回っていく。
 修学旅行から二か月がたっている。燈司はモテるし、引く手あまただろうし。燈司の気さえ変われば、いつだってあいつは誰かと付き合える。
 俺の告白を二か月も黙って待っててくれるだろうか。


(文化祭、待たずしていったほうがいいよな……?)


 ドクン、ドクンと心臓が嫌ななり方をした。もし、燈司が俺のことないわーって思っていたら? 俺の告白を待っていなかったら?
 だとしても、俺は言うべきだろう。これだけ、お膳立てしてもらって言えないなんて。


「なあ、ととと、燈司」
「どうしたの、凛。今日、変だよ」
「ぐはっ……いや、何でもねえわ。はは」


 純粋なきょとんとした目。
 燈司は、ポーカーフェイスが得意だなと思う。俺は、考えれば考えるほどそれしか頭に浮かんでこなくなるし、それ以外が見えなくなる。
 こんなダサい俺を、何で好きになってくれたのか。
 悶々と悩んでいると「投票するよー」という声がかかる。どうやら、文化祭の出し物を何にするか決定するらしい。

 ホワイトボードに書かれていたのは、劇、お化け屋敷、展示と平凡な三つだった。先ほどまで劇になる流れだっただろと思ったが、男子がブーイングを出したらしい。
 学級委員が「みんな伏せてー」と言ったのと同時に、クラスのみんなが机に伏した。それから「劇がいい人ー」と投票が始まる。俺は、どれでもいいやと思いつつも、一番楽そうな展示に手を上げた。
 そうして、顔を上げたころには投票は済んでおり、ホワイトボードには劇が十二票、お化け屋敷が八票、展示が四票と書かれていた。どうやら誰か入れていないらしい。しかし、数を見れば明らかで劇に決定だ。
 それまでホワイトボードにぐちゃぐちゃと書かれていた文字たちはさっさと消されていく。次は、劇を何にするかという投票だ。
 しかし、ここで珍しく秀人が手を上げた。


「ここは、白雪姫だろ」
「はあっ!? おい、秀人……」


 別にこれと言って否定する意見はなかった。だが、陰キャでも陽キャでもない、むしろ陰キャよりの存在である秀人がそんなことを言って通るのだろうか。俺は後から恥かくぐらいなら大人しくしてろと、手を下げろと彼を宥める。


「白雪姫、確かにうちのクラスそれしかねーじゃん」


 意外にも秀人の意見に賛同するものは多く、教室のあちこちで「それじゃんねえ」と同意の声が上がっていく。満場一致といっても過言ではない。
 秀人は、椅子に座るとニヤリとこちらを見やった。それは、作戦通りといった顔で、その後ろから光晴もグッと親指を立ててる。


「お前らなあ~」


 俺たちに白雪姫カップルと名付けた生みの親。その変なあだ名はクラス中に広まっているため、皆もなじみ深かっただろう。
 俺は、文化祭に告白さえできればいいと思っていたが、どうやらもう一波乱あるらしいと肩を落とした。劇なんて小学生ぶりだ。
 パンパンと学級委員が手を鳴らし注目を集める。そして、議題は誰がどの役をやるかに移っていった。

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