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時雨に
英雄は共に/1
しおりを挟む戦争の記憶は消えることがない。燃える火、落ちることの無い赤、耳から離れることの無い悲鳴。
何ヵ月も経ってから行われたこの終戦記念のパーティーに集まる貴族の連中らは知ることはないだろうし教えたところで理解など出来やしないのだ。
『英雄』そう呼ばれるようになった今日、俺は死んだのだ。
貴族の笑い声、雑談する声、英雄と話したいと群がる声。どれを取っても煩わしい。
王の座る玉座の正面に跪き名を告げれば、此度の活躍大層であった。褒美は何が良いか。そなたの家柄は確か子爵であったはず。伯爵位まで上げても良いのだぞ。と興味の無い話が上がり、後ろの方で自分の家族が騒ぎ立てるのが聞こえて腹が立つ。
「褒美を自ら選べるのならこれに勝る喜びはございません」
英雄が自らの意思で発した言葉はその場をどっと盛り上げる。世の中の成り上がるものは貪欲でなければ、と笑う声、子爵程度が自ら選ぶとは随分と偉そうにと僻む声。普段ならば即座に糺弾されるのも赦されるのは英雄だから、だろう。
「うむ、何でも言うが良い。望むもの全てを叶えよう」
王の言葉は想定内であった。
自らの権威に溺れ、多くの死者を出し今もまだ復旧に追われる国民を投げ捨て貴族と豪華絢爛なパーティーを開けるのだ。浮かれている脳みそではこれからいう褒美は青天の霹靂であろう。
「褒美は『貴族位を返還し平民となり、王城ならびに主要貴族の場への招集が二度と来ないようにする』でお願い致します。王は何でも叶えると仰いました、違えることがありませんよう」
その後は知らぬ。阿鼻叫喚と化した本丸より帰路を辿るための馬車へ乗り込み、道中で降ろしてくれと頼み降りて馬車と別れるように森の中へと足を進めた。
王は言った、何でも叶えると。今頃何て事を言ったのだと悔やみ唇を噛んでいるところだろうか。そんなことを思いながら進む道は心なしか軽やかであった。
徒歩で二日、野宿も併せて歩けば到達するのは隣国の国境。通門書を渡せば通れるが、通った事実があるのは忍びない。
裏道から一人の門番に金を握らせ隣国へと入り、更にそこから一晩歩けば辿り着ける小さな辺境の村。
その村の奥にある石造りの一軒家へと足を進めればトマトシチューの匂いが漂う。
二回扉をノックし「やっと全てが終わったよ」と言葉を落とせばパタパタと足音が近付き扉が開かれる。
抱き寄せた料理の匂いと暖炉の温かみをそのままにした人を抱えて家の中へと消え、扉が閉まる。
「………ただいま」
「……思ったよりも早かったんだね、無事?」
「もちろんだ、何もなく無事に終わった」
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