12 / 39
甘くて、ほろ苦い
3
しおりを挟む鈴兼 御廉は現在非常に暇していた。
国語、古文の授業中。
古今和歌集の中から自分の好きな和歌をプリントに書いてみよう、なんて一年の時にやれただろうテーマで自由に等しい作業時間。
気が向かない事を真面目にやっている周りが酷く立派に見える気すら起きてくる。
『ありつつも 君をば待たむ うち靡く 我が黒髪に 霜の置くまでに』
磐之媛命、俺はそんなに待てない。
白髪になってまで待てる恋ならば、それは恋ではなく憧れだろ。
この時代の恋愛が望まなくても結納させられ、決められた者の元へ嫁がなければならない、という時代背景前提で作られたものだからこそ共感し難い。
けれど、どの恋の歌も泣いたりしてたんだな。
好きでもない男に抱かれ、好きでもない女を抱く気持ちは今も昔も変わらず不快であることだけは確かだろうな。
少しだけ真剣に教科書に目を通せば、白紙のプリントに目もくれず窓の外を眺める作業に入る。
叶うはずの無い恋に対するやるせなさは理解できるつもりだ。
けれど、それを悔やむことだけはしたくないから俺は俺なりの方法でこの想いを伝えると決めている。
この和歌たちのように悲しみに明け暮れ想いを馳せるなんてごめんだ。
不意に、パサッという音が机の上で鳴り視線だけを机に戻せばルーズリーフを破り作った簡易的な手紙が投げ置かれている。
相手は容易に特定できるが、内容の無い悪戯の可能性があまりに高すぎる。
はぁ、と大きめの溜め息を吐いて外に視線を戻せば、ガタンと机に脚をぶつけるような音が近くからする。
やはり、予想通り。
無視して、外に目をやり続ければ、校庭の体育をやっているクラスが視界に入る。
例え、どんなに意識していなくとも、その他大勢、有象無象がそこに集まっていたとしても想いを寄せる。ただそれだけで何処にいようと見つけられる。
今日の体育は、持久走か。
転ぶだろうか、怪我なく終われるように願うしかない。
「皇祈!!、タイマー!!首から下げっぱ!!」
慌てたように少し離れた所から走る想い人は笑ってごめんと声の主の元へ行く。
その視線が全て、俺のものであれば…どれほど。
…
校庭に夢中になった御廉の机に置かれた手紙。
それは御廉の予想である悪戯ではなく、手紙の主が見つけた和歌。
これ、ミカの気持ちに近いんじゃない?という始まりに繋がり書かれたのは…
『飛ぶ鳥の 声も聞こえぬ 奥山の 深き心を 人は知らなむ』
0
あなたにおすすめの小説
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
眠りに落ちると、俺にキスをする男がいる
綿毛ぽぽ
BL
就寝後、毎日のように自分にキスをする男がいる事に気付いた男。容疑者は同室の相手である三人。誰が犯人なのか。平凡な男は悩むのだった。
総受けです。
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる