実らなかった啜を

安馬川 隠

文字の大きさ
24 / 39
成長期、そういうこと

3

しおりを挟む

 とても、困ったことがある。

 あの日、香佑と二回目の夜を過ごした日。理由は単純なのだろうが貞操具を気絶している間につけられていたようで、起きてから外して欲しいと頼んでも時間が足りず外してもらえぬまま三日が経とうとしている。
香佑と連絡先を交換し忘れていたせいで、どうやっても外すことが出来ない。
大学での着替えはほぼ無いに等しかったからこそ助かったものの、家でも興奮することを悉く制限されている現状に興奮してしまい痛く苦しい。

 なにかしらで連絡が取れずこのまま一生とさえ思うと流石に萎えて悲しい気持ちにはなるが、それでも良いかもしれないと一瞬でも思える自分が嫌だった。


 香佑としても、この三日間は好きで何もしなかったわけではなかった。
突然入ってくるクレームは、誰かが対応しなければならない問題で。『施工場に異常がある』といわれれば確認しなければならない、何度も確認し問題ないことは明白だとしても。
案の定、問題は何処にもなく複数人ですべての確認をし落ち着きを見せたのがあの日から三日経った今になる。


 ただ、互いに三日程度で根を上げるのは、と。負けず嫌いの性格があるせいか弱音だととれるような発言は出来なかった。


「この数日、草太の付き合いが悪い。彼女でも出来た?」


 不意に大学構内で言われた一言にドクンと胸が鳴る。数日の間、細かくはあの乱交パーティと化したパーティの後から。
 皆はノーマルで楽しむということの認識が違うことを強く感じさせられたことと、今こうして普通に人として話している草太という存在が誰もいなくなった空間では全裸でアソコに貞操具を付けられて涎を滴しながら悦んでしまう人間以下の存在だと知られたくなくて、何処かよそよそしくなってしまう。それを付き合い悪いと感じてしまうのも無理はない。


「彼女じゃないよ、最近バイトを探してるんだ。金欠でさ」

「えぇッ!?草太くんでも金欠になるの?良いバイト知ってるけど、どう?」


 話のネタはなんでも良かった。そういった疑問の目から逃げられるのなら。
香佑との全てを知られぬように、悟られぬように。









 動くには暑い日差しが照り付ける外の世界。工事現場の作業員の仕事はハードで余裕なんて仕事中にあるはずもない。
そういえば、連絡先を交換していなかったと後悔している間に施工ミスでもあれば大問題に繋がる。必死に仕事のことか無心になることに集中して手と脚を動かす。

 やっと迎えた休憩で、草太のバッグにつけた盗聴器と同期してあるイヤホンを耳に着けてコンビニで買った弁当を口にする。
その姿は端から見れば音楽を聴きながらコンビニ飯を食う冴えないおじさんであろう。
脱げば凄い、も脱がなければわからないのだから。


 香佑は草太が好きだ。それはもうストーカーをしているくらいには。
必死に人としてあろうとする姿が可愛くて仕方がない。その唯一に近い必死の壁を壊して家畜として家にいてほしい。一生溺れる程の愛情をもって飼い殺しにしてあげたい。

 盗聴器の向こうで楽しげに友人達と話をする声にすら嫉妬しそうになる。余裕があるのならまだ外さなくて良いか。スッと感情が落ちそう思えば何故か心がスッキリとした。
余裕がなくなって、香佑が居ないとだめだとわからせたい。その気持ちはそうそう消えるものでもない。快楽を発散させるために呼ぶ名前は一つであることを学ぶ機会なのだから。

 買ったお弁当と野菜ジュースを飲みきれば、吹っ切れたように仕事に向かうのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

バスケ部のイケメン先輩に誘惑されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 他にも書きたいのがいっぱいある。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

眠りに落ちると、俺にキスをする男がいる

綿毛ぽぽ
BL
就寝後、毎日のように自分にキスをする男がいる事に気付いた男。容疑者は同室の相手である三人。誰が犯人なのか。平凡な男は悩むのだった。 総受けです。

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。 勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。

処理中です...