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「また柚木さんに負けたの──今回の商品企画は私のレシピが通ると思ったのになぁ」
白ワインを飲みながりちびりちびりと愚痴る。
仕事が嫌いなのならすぐにでも辞めさせるのに、なんだかんだ言いつつ楽しんでいる。
それにしても飲み過ぎだ。
こりゃ明日からの連休は家でダラダラ過ごすのだろう。
まぁ僕は家でダラダラが好きだからいいけれどね。
「テーマはダイエットだったから私の得意分野だったのに!……悔しいなぁ」
得意分野と言うよりも、ほぼ毎日のように口にしているだけで得意ではないだろう。
今だって白ワインと一緒に木の実の蜂蜜漬けとチーズを食べている。
「聞いてる?為利と知り合ったのも私のダイエットウォーキングの時だったんだよ⁈」
知ってるよ。
その時、君に──了子に恋をしてどうにか印象を与えたくてワザと野良犬に襲われたフリをしたんだから。我ながらあの演技は下手だったけれど了子は阿呆の子だ。問題ない。
「──でも一番悔しいのは──そんな柚木さんを自分が好きなことかなぁ……悔しいな」
は?
聞いてないんですが。
僕と一緒に暮らしながら何?この展開。
酒の勢い?
遂、本音が出た?
「どこ行くのよ為利。トイレ?」
頭を冷やしに部屋を出る。
──けれども冷やせる心も頭もない。
本当に頭を冷やした方がいいのは了子だと悟る。
僕は好きだと態度にも表しているのにその男の前であの発言は許せない。
了子に男として見られていないのは知っていたけれど……それを利用して側にいたのだから文句を言える立場ではないのだけれど──もう従順で大人しい為利を脱ぎ捨てて本当の僕で了子に向き合おう。
そう思い──引き返す。
僕だって好きな女に告白するのは勇気がいる。
まして好きな奴のいる女にだ。
心を固め扉を開ける。
「──了子?」
寝ている。
なんだこの寝落ちの早さは。
いい加減にして欲しい。
──このまま抱いちゃおうかな─?
だってテーブルに突っ伏している了子の胸はテーブルに押しつぶされて見事な谷間を見せている。
これは見て欲しいのだろうし。
乱れた髪から頸が見えている。
ここに鼻を埋めて嗅いだ後、噛みたくなる。
「んっ…」
──完全に誘ってるよね?
「柚木さん──」
「違う──為利だよ」
了子の頬に触れ耳元で囁く。
瞳は閉じたままにその声に反応する。
「為利?──為利は犬だよ?」
狐だ。阿呆了子。
そう──でも今は人の形をしているんだよ。
なんでだと思う?
了子の寝顔に微笑んで見せる。
──彼女の瞳は閉じていて此方を見てもいないけれどね。
実際は狐でもない。
狐は自分の眷属でありその主人が自分だ。
世にいう神様だぞ。
と、心の中で呟く。
了子は祠の前をよく散歩していたけれど、神参りをしている訳ではない。
徳のある行いをした訳でもない。
ただ──僕が勝手に好きになり、了子の側にいられるように狐に化け──了子に飼われているだけだ。
了子は犬だと思っているが。
「狐だよ。了子」
そう囁けば小さく首を横に振る。
犬だと言いたいのだろう。
つくづく残念な女だ。
「神は嫉妬深く──祟ることもあるんだよ」
そう告げて──了子を抱きかかえてベットへと移す。
「ん?──なに?」
重い瞳を開いた了子の顔が強張る。
「──だ、誰?」
「──酷いな。僕を知らない振りをするなんて」
黒のワンピースタイプの部屋着と白い肌が自分の価値を分かっていないことを物語っていて煽情的だ。
了子の滑らかな肌をそれが隠しているのにその布さえ美しく感じる。
「──誰か知らないけれど──早く出て行かないと、この家には私以外にも人がいるんだから」
微かに震えながら虚勢を張る姿に嗜虐心が疼く。
「へぇ──誰かいるの?」
「い、いるわ‼︎ 彼氏が泊まっているから‼︎」
「──どこにいるの?」
「お風呂!お風呂に入ってるからすぐに出てくるわよ!」
怯える顔に下半身が疼く。
「彼の──名前は?」
喉を鳴らし唾を飲み込む了子の表情を見落とさないよう瞬きすらせずに待つ。
「為利」
了子。
よかったね。
君は今から僕に抱かれるけれどきっと別の名を呼んでいたら嗜虐的なんて言葉では足りない抱き方になっていた。
その言葉で優しく──厭らしく抱いてあげられるよ。
白ワインを飲みながりちびりちびりと愚痴る。
仕事が嫌いなのならすぐにでも辞めさせるのに、なんだかんだ言いつつ楽しんでいる。
それにしても飲み過ぎだ。
こりゃ明日からの連休は家でダラダラ過ごすのだろう。
まぁ僕は家でダラダラが好きだからいいけれどね。
「テーマはダイエットだったから私の得意分野だったのに!……悔しいなぁ」
得意分野と言うよりも、ほぼ毎日のように口にしているだけで得意ではないだろう。
今だって白ワインと一緒に木の実の蜂蜜漬けとチーズを食べている。
「聞いてる?為利と知り合ったのも私のダイエットウォーキングの時だったんだよ⁈」
知ってるよ。
その時、君に──了子に恋をしてどうにか印象を与えたくてワザと野良犬に襲われたフリをしたんだから。我ながらあの演技は下手だったけれど了子は阿呆の子だ。問題ない。
「──でも一番悔しいのは──そんな柚木さんを自分が好きなことかなぁ……悔しいな」
は?
聞いてないんですが。
僕と一緒に暮らしながら何?この展開。
酒の勢い?
遂、本音が出た?
「どこ行くのよ為利。トイレ?」
頭を冷やしに部屋を出る。
──けれども冷やせる心も頭もない。
本当に頭を冷やした方がいいのは了子だと悟る。
僕は好きだと態度にも表しているのにその男の前であの発言は許せない。
了子に男として見られていないのは知っていたけれど……それを利用して側にいたのだから文句を言える立場ではないのだけれど──もう従順で大人しい為利を脱ぎ捨てて本当の僕で了子に向き合おう。
そう思い──引き返す。
僕だって好きな女に告白するのは勇気がいる。
まして好きな奴のいる女にだ。
心を固め扉を開ける。
「──了子?」
寝ている。
なんだこの寝落ちの早さは。
いい加減にして欲しい。
──このまま抱いちゃおうかな─?
だってテーブルに突っ伏している了子の胸はテーブルに押しつぶされて見事な谷間を見せている。
これは見て欲しいのだろうし。
乱れた髪から頸が見えている。
ここに鼻を埋めて嗅いだ後、噛みたくなる。
「んっ…」
──完全に誘ってるよね?
「柚木さん──」
「違う──為利だよ」
了子の頬に触れ耳元で囁く。
瞳は閉じたままにその声に反応する。
「為利?──為利は犬だよ?」
狐だ。阿呆了子。
そう──でも今は人の形をしているんだよ。
なんでだと思う?
了子の寝顔に微笑んで見せる。
──彼女の瞳は閉じていて此方を見てもいないけれどね。
実際は狐でもない。
狐は自分の眷属でありその主人が自分だ。
世にいう神様だぞ。
と、心の中で呟く。
了子は祠の前をよく散歩していたけれど、神参りをしている訳ではない。
徳のある行いをした訳でもない。
ただ──僕が勝手に好きになり、了子の側にいられるように狐に化け──了子に飼われているだけだ。
了子は犬だと思っているが。
「狐だよ。了子」
そう囁けば小さく首を横に振る。
犬だと言いたいのだろう。
つくづく残念な女だ。
「神は嫉妬深く──祟ることもあるんだよ」
そう告げて──了子を抱きかかえてベットへと移す。
「ん?──なに?」
重い瞳を開いた了子の顔が強張る。
「──だ、誰?」
「──酷いな。僕を知らない振りをするなんて」
黒のワンピースタイプの部屋着と白い肌が自分の価値を分かっていないことを物語っていて煽情的だ。
了子の滑らかな肌をそれが隠しているのにその布さえ美しく感じる。
「──誰か知らないけれど──早く出て行かないと、この家には私以外にも人がいるんだから」
微かに震えながら虚勢を張る姿に嗜虐心が疼く。
「へぇ──誰かいるの?」
「い、いるわ‼︎ 彼氏が泊まっているから‼︎」
「──どこにいるの?」
「お風呂!お風呂に入ってるからすぐに出てくるわよ!」
怯える顔に下半身が疼く。
「彼の──名前は?」
喉を鳴らし唾を飲み込む了子の表情を見落とさないよう瞬きすらせずに待つ。
「為利」
了子。
よかったね。
君は今から僕に抱かれるけれどきっと別の名を呼んでいたら嗜虐的なんて言葉では足りない抱き方になっていた。
その言葉で優しく──厭らしく抱いてあげられるよ。
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