20 / 40
第二章 異世界領主のスタート
第20話 辺境開拓騎士爵に叙任
しおりを挟む
――翌日、土曜日。
サラと二人で電動バイクに乗って、バルデュックの街にある商人ギルドに来た。
八月なので異世界も暑い。
それでも東京の暑さよりは、遥かにマシだ。
体感だけど二十八度とかじゃないかな?
湿度も低いみたいで、東京より遥かに過ごしやすい。
俺は、日本製の黒のジャージパンツと黒のポロシャツ姿。
サラは、日本製のグレーのパンツにピンクのシャツ。腰から剣をぶら下げる護衛スタイルだ。
ジャージ生地やパワーストーンの入った大きなリュックを背負って建物に入るといつもより沢山の人がいた。
商人ギルド長のサンマルチノさんが出迎えてくれる。
「ミネヤマ様、おはようございます! 王宮からご使者がいらっしゃっています!」
「王宮の使者!?」
一人立派な貴族服を着た顎髭細身の男がいる。
この人が使者かな?
「貴殿がミネヤマ殿ですか? 貴殿は辺境開拓騎士爵として認められました。こちらの承認書をお受け取り下さい」
顎髭細身の男は、クルリと赤いリボンで巻かれた紙を差し出した。
おおっ!
王宮にワイロ……いや、贈り物をした甲斐があったな。
俺は姿勢を正して両手で丁寧に受け取る。
「ありがとうございます」
「国王陛下に貴殿の贈り物は確かに届きました。国王陛下は大層お喜びで、貴殿の領主承認は異例の速さで行われました」
「なるほど、ありがたい事です」
「……」
「……」
俺と顎髭細身の男は、無言で見つめ合った。
あれ!?
まだ、何かあるのかな?
顎髭細身の男は、何か言いたげな……。
何だろう?
サンマルチノさんがコソコソと耳打ちをして来た。
「ミネヤマ様! ご使者には、ご足労をいただいたお礼をお渡しするのが慣わしですぞ」
ああ!
この人は、俺がお礼を出すのを待っているのね!
「いくらくらい包めば良いですか?」
「50万ゴルド、金貨五枚が相場です」
なるほど!
これがあるから、お金を持ってこいと伝言したのか。
俺は奮発して100万ゴルド、金貨十枚が入った袋を、顎髭細身の男に渡した。
「ご足労を頂きありがとうございます。これはお礼です」
「いやいや、お心遣いありがとうございます。それでは私はこれで……」
顎髭細身の男は、満面の笑みで商人ギルドを出て行った。
まあ、金貨十枚は必要経費ってヤツだな。
さて、この書類だ。
リボンを解いて受け取った書類を見る。
分厚い羊皮紙に黒いインクで手書きされている。
異世界の文字だから意味は分からないが、美しい筆致だ。
最後に赤い蝋が垂らされて、ドラゴンの紋章が押されてある。
このドラゴンの紋章が王様の紋章なのかな?
書類をサラに手渡す。
「サラ。読んでくれ」
「かしこまりました」
サラが書類を読みだしたが、高尚な修辞が多い文章だ。
偉大なるとか、遥かにとか、大変とか、王宮独特の言い回しなのだろう。
まとめると書いてある事は――
『国王は、マヨ・ミネヤマを、辺境開拓騎士爵として認める。マヨ・ミネヤマが開拓する土地とその周辺を、マヨ・ミネヤマの領地とする』
――と言う事だ。
「ご主人様! おめでとうございます! 凄いです!」
「ミネヤマ様、おめでとうございます!」
「「「「「「おめでとうございます!」」」」」」
「おおっ! ありがとう! ありがとう!」
皆から祝いの言葉が相次ぐ。
サラ、商人ギルド長のサンマルチノさん、宝石商のイシルダさん、いつもの繊維商人三人、サラを買った奴隷商人のブッチギーネも来ている。
他にも一人見かけない顔がいるが、祝いの言葉を口にした。
サンマルチノさんが、その男を紹介してくれる。
「ミネヤマ様。こちらはバルデュックの街の冒険者ギルド副ギルド長のラモン氏です」
「ラモンです。お見知りおきを」
「ご丁寧にどうも。ミネヤマです」
ラモンさんは、肉体派の体育教師って感じで、眼光鋭く、体格の良い人物だ。
着ている服はいたって普通の綿のズボンに半袖シャツなのだが、太い腕がやけに目立つ。
商人ギルドは、今日に限って椅子が大量に持ち込まれていた。
俺は応接ソファに座り、対面に商人ギルド長のサンマルチノさんが座る。
サンマルチノさんの後ろに並べられた椅子に商人たちが腰かけた。
サラは俺の後ろに立っている。
護衛でお付きの奴隷だからな。
どうやら、ここからは色々話があるらしい。
俺も聞きたい事があったから丁度良い。
全員が席に着いたところで、サンマルチノさんが話し始めた。
「ミネヤマ様。改めて辺境開拓騎士爵への叙任おめでとうございます」
「ありがとう! その……、辺境開拓騎士爵と言うのは……? 伯爵とか男爵と言うのは聞いた事あるが、辺境開拓騎士爵と言うのは初めて聞いた」
「辺境騎士爵と言うのは、一代限りの下級貴族でございます」
「一代限り?」
「はい。ミネヤマ様ご自身は下級とは言え貴族ですが、お子様に貴族の身分は世襲されません」
「なるほど……」
サンマルチノさんの説明は続く。
・魔の森を開拓する人は、最初は辺境開拓騎士爵からスタートする。
・開拓が成功して、自分の村や町が出来れば、騎士爵に爵位がアップする。
・騎士爵は、子供に貴族の地位を世襲できる。
・戦時に自分を含めて五人の兵を出せる体制になれば、村や町として認められる。
ふーん。
なるほどね。
仮免許みたいな制度だな。
想像するに、この辺境開拓騎士爵と言う制度がある理由だが――。
村や町を作るのに領主は貴族じゃないと国として具合が悪い。
しかし、開拓する人間を世襲できる貴族にすると、貴族が無限に増えてしまう。
そこで、一代限りの辺境開拓騎士爵があるって感じかな。
開拓が上手くいったら、世襲可能な貴族にしてやる。
開拓が失敗したら、はい、それまでよ。
「うーん、わかりました。そうすると開拓を成功させなければなりませんね」
俺が納得するとサンマルチノさんは、きりっとした表情になった。
「左様でございます。その為にも街道整備をお願いいたします」
「街道整備?」
サラと二人で電動バイクに乗って、バルデュックの街にある商人ギルドに来た。
八月なので異世界も暑い。
それでも東京の暑さよりは、遥かにマシだ。
体感だけど二十八度とかじゃないかな?
湿度も低いみたいで、東京より遥かに過ごしやすい。
俺は、日本製の黒のジャージパンツと黒のポロシャツ姿。
サラは、日本製のグレーのパンツにピンクのシャツ。腰から剣をぶら下げる護衛スタイルだ。
ジャージ生地やパワーストーンの入った大きなリュックを背負って建物に入るといつもより沢山の人がいた。
商人ギルド長のサンマルチノさんが出迎えてくれる。
「ミネヤマ様、おはようございます! 王宮からご使者がいらっしゃっています!」
「王宮の使者!?」
一人立派な貴族服を着た顎髭細身の男がいる。
この人が使者かな?
「貴殿がミネヤマ殿ですか? 貴殿は辺境開拓騎士爵として認められました。こちらの承認書をお受け取り下さい」
顎髭細身の男は、クルリと赤いリボンで巻かれた紙を差し出した。
おおっ!
王宮にワイロ……いや、贈り物をした甲斐があったな。
俺は姿勢を正して両手で丁寧に受け取る。
「ありがとうございます」
「国王陛下に貴殿の贈り物は確かに届きました。国王陛下は大層お喜びで、貴殿の領主承認は異例の速さで行われました」
「なるほど、ありがたい事です」
「……」
「……」
俺と顎髭細身の男は、無言で見つめ合った。
あれ!?
まだ、何かあるのかな?
顎髭細身の男は、何か言いたげな……。
何だろう?
サンマルチノさんがコソコソと耳打ちをして来た。
「ミネヤマ様! ご使者には、ご足労をいただいたお礼をお渡しするのが慣わしですぞ」
ああ!
この人は、俺がお礼を出すのを待っているのね!
「いくらくらい包めば良いですか?」
「50万ゴルド、金貨五枚が相場です」
なるほど!
これがあるから、お金を持ってこいと伝言したのか。
俺は奮発して100万ゴルド、金貨十枚が入った袋を、顎髭細身の男に渡した。
「ご足労を頂きありがとうございます。これはお礼です」
「いやいや、お心遣いありがとうございます。それでは私はこれで……」
顎髭細身の男は、満面の笑みで商人ギルドを出て行った。
まあ、金貨十枚は必要経費ってヤツだな。
さて、この書類だ。
リボンを解いて受け取った書類を見る。
分厚い羊皮紙に黒いインクで手書きされている。
異世界の文字だから意味は分からないが、美しい筆致だ。
最後に赤い蝋が垂らされて、ドラゴンの紋章が押されてある。
このドラゴンの紋章が王様の紋章なのかな?
書類をサラに手渡す。
「サラ。読んでくれ」
「かしこまりました」
サラが書類を読みだしたが、高尚な修辞が多い文章だ。
偉大なるとか、遥かにとか、大変とか、王宮独特の言い回しなのだろう。
まとめると書いてある事は――
『国王は、マヨ・ミネヤマを、辺境開拓騎士爵として認める。マヨ・ミネヤマが開拓する土地とその周辺を、マヨ・ミネヤマの領地とする』
――と言う事だ。
「ご主人様! おめでとうございます! 凄いです!」
「ミネヤマ様、おめでとうございます!」
「「「「「「おめでとうございます!」」」」」」
「おおっ! ありがとう! ありがとう!」
皆から祝いの言葉が相次ぐ。
サラ、商人ギルド長のサンマルチノさん、宝石商のイシルダさん、いつもの繊維商人三人、サラを買った奴隷商人のブッチギーネも来ている。
他にも一人見かけない顔がいるが、祝いの言葉を口にした。
サンマルチノさんが、その男を紹介してくれる。
「ミネヤマ様。こちらはバルデュックの街の冒険者ギルド副ギルド長のラモン氏です」
「ラモンです。お見知りおきを」
「ご丁寧にどうも。ミネヤマです」
ラモンさんは、肉体派の体育教師って感じで、眼光鋭く、体格の良い人物だ。
着ている服はいたって普通の綿のズボンに半袖シャツなのだが、太い腕がやけに目立つ。
商人ギルドは、今日に限って椅子が大量に持ち込まれていた。
俺は応接ソファに座り、対面に商人ギルド長のサンマルチノさんが座る。
サンマルチノさんの後ろに並べられた椅子に商人たちが腰かけた。
サラは俺の後ろに立っている。
護衛でお付きの奴隷だからな。
どうやら、ここからは色々話があるらしい。
俺も聞きたい事があったから丁度良い。
全員が席に着いたところで、サンマルチノさんが話し始めた。
「ミネヤマ様。改めて辺境開拓騎士爵への叙任おめでとうございます」
「ありがとう! その……、辺境開拓騎士爵と言うのは……? 伯爵とか男爵と言うのは聞いた事あるが、辺境開拓騎士爵と言うのは初めて聞いた」
「辺境騎士爵と言うのは、一代限りの下級貴族でございます」
「一代限り?」
「はい。ミネヤマ様ご自身は下級とは言え貴族ですが、お子様に貴族の身分は世襲されません」
「なるほど……」
サンマルチノさんの説明は続く。
・魔の森を開拓する人は、最初は辺境開拓騎士爵からスタートする。
・開拓が成功して、自分の村や町が出来れば、騎士爵に爵位がアップする。
・騎士爵は、子供に貴族の地位を世襲できる。
・戦時に自分を含めて五人の兵を出せる体制になれば、村や町として認められる。
ふーん。
なるほどね。
仮免許みたいな制度だな。
想像するに、この辺境開拓騎士爵と言う制度がある理由だが――。
村や町を作るのに領主は貴族じゃないと国として具合が悪い。
しかし、開拓する人間を世襲できる貴族にすると、貴族が無限に増えてしまう。
そこで、一代限りの辺境開拓騎士爵があるって感じかな。
開拓が上手くいったら、世襲可能な貴族にしてやる。
開拓が失敗したら、はい、それまでよ。
「うーん、わかりました。そうすると開拓を成功させなければなりませんね」
俺が納得するとサンマルチノさんは、きりっとした表情になった。
「左様でございます。その為にも街道整備をお願いいたします」
「街道整備?」
26
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる