左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平

文字の大きさ
40 / 107
第三章 商業ギルドに気をつけろ!

第40話 動画を領主に見せてみた

しおりを挟む
 ――翌日の午後。

 俺とシスターメアリーは、領主屋敷の応接室で領主ルーク・コーエン子爵と面会した。
 俺がスマートフォンで昨日の証拠映像を見せる。

『貴様のような生意気な平民は、痛い目にあわせてやる! ヤレ!』

 商業ギルド長ヤーコフが俺にチンピラたちをけしかけるところ、前後の経緯もバッチリ録画されている。
 スマートフォンの動画と移動販売車のドラレコ動画を見せ、シスターメアリーが証言をしてくれた。

 コーエン子爵は、ふうっと息を吐きソファーに深く身を沈めた。

「これはちょっとね……。リョージ君は災難だったね」

「幸い体が丈夫で怪我をしませんでした。この動画はヤーコフを排除する証拠になるでしょうか?」

「そうだね……」

 コーエン子爵は、アゴに手をやってしばらく考えた。

「ヤーコフをこの町から追い出す材料の一つにはなるよね。ヤーコフは商業ギルドの権限を乱用して無理な金集めをした。そして住民にも領主である僕にも愛想を尽かされた。そして、教会の客人であるリョージ君に乱暴を働いた。商業ギルド本部の人間が聞いたら、さぞ怒るだろうね。ただ……」

「ただ?」

「ヤーコフは貴族なんだ」

「確か……貴族家の三男でしたね?」

「そう。リョージ君は平民でしょう? もし、リョージ君が貴族だったら大問題になるけれど、貴族と平民の場合は問題にならない。罪には問えないんだ」

「身分差ですか! うーん……なるほど……」

 まいったな。
 俺は現代日本の感覚で、単純に『被害者と加害者』と考えた。
 だが、身分制度のあるこの世界では、『貴族と平民』の身分で考えられてしまうのか……。
 俺はスッキリしない気持ちを抱えながらも、頭で理解をする。

「ただ、リョージ君の場合は平民とはいえ、教会に大いに貢献しているからね。教会に押しかけて、教会の客人に乱暴した。これは重い」

「……」

「それにこの動画というのを見るとショックだよね。どんなに言いつくろっても印象は悪いよ」

 そうか、動画には一定の意味があるんだ。
 俺は動画を撮ったことが無駄にならなかったとホッとする。

「そろそろ商業ギルド本部の職員が、この町に着くんだ。この動画を見せたいのだけど、どうかな?」

「ええ、お願いします! では、商業ギルド本部の職員が来ればヤーコフは?」

「王都の商業ギルド本部から管理官が来るからね。管理官は商業ギルドで不正が行われていないかチェックするのが仕事なんだ。間違いなくヤーコフは立場を失うよ」

 俺は少しスッキリした気持ちになった。
 俺への暴行が罰せられないのは、モヤッとするが……。
 ヤーコフがいなくなってくれるなら、俺の作戦通りだ!

「ねえ、ところでリョージ君は何者? リョージ君の乗っている馬車といい、この動画といい、僕は見たことも聞いたこともないよ」

 領主ルーク・コーエン子爵は、サラッと聞いてきた。
 恐らく不思議だから質問しているだけだ。

 俺はどうしようかと考えたが、コーエン子爵は好感の持てる人物だ。
 俺が迷い人だと打ち明けても、俺を悪用するようなことはないだろう。

「実は私は迷い人でして、違う世界から来たのです。私の乗る移動販売車も、その動画が映るスマートフォンも違う世界の物なのです」

 コーエン子爵は、一瞬驚いて細い目を見開いたが、すぐにいつも通りの落ち着いた表情に戻った。

「なるほど。リョージ君は迷い人だったのか! それなら納得だよ! 何か困ったことがあったら、力になるから言ってね。いや、リョージ君が僕の力になってくれてるから逆かな?」

「いえいえ。何かお願いすることもあると思いますので、よしなにお願いします」

 和やかな雰囲気になった。
 俺としては、コーエン子爵と良い関係を築けたと思っている。
 これからも、この貴族らしからぬ親しみやすい人物と仲良くしていきたい。

「失礼致します!」

 ドアをノックして、慌ただしく執事さんが入って来た。
 執事さんの顔色が悪い。
 何かあったのだろうか?

「たった今、孤児院から使いが来て! 孤児院の子供がさらわれたと言付かりました!」
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

uzura
ファンタジー
平凡な村人・レオンは、勇者パーティの荷物持ちとして蔑まれ、ある日「役立たず」として追放される。 だが、彼の正体は神々が恐れ、世界の理を超越する“創世の加護”を持つ唯一の存在だった。 本人はまったくの無自覚——それでも歩くたび、出会うたび、彼によって救われ、惹かれていく者たちが増えていく。 裏切った勇者たちは衰退し、彼を捨てた者たちは後悔に沈む。 やがて世界は、レオン中心に回り始める。 これは、最弱を装う最強が、知らぬ間に神々を超える物語。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...