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第三章 商業ギルドに気をつけろ!
第45話 間話 後始末 領主コーエン子爵とゴルガゼ伯爵
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魔の森に近い辺境の町サイドクリーク。
領主であるルーク・コーエン子爵と王都から来たゴルガゼ伯爵は、今回ヤーコフが起こした騒動について話し合っていた。
場所はコーエン子爵の領主屋敷にある応接室である。
ゴルガゼ伯爵は、コーエン子爵に迷惑をかけた詫び料を支払う。
詫び料の名目は開拓支援金――魔の森を切り開き新たに開拓村を作るための費用だ。
つまり、今回ヤーコフが起こした騒動は、少なくとも両家の間では『無かったこと』にする、今後、恨みを残さないと決まった。
また、平民のリョージに対して、ゴルガゼ伯爵は直接詫び料を支払うことはないが、コーエン子爵を通じて少なくない額を『礼』として支払うことになった。
交渉を終え、両者の前に置かれた紅茶が入れ替えられた。
ゴルガゼ伯爵が上品な所作で紅茶を一口。
自分の好きな茶葉『シロル』の上品な味と香りに満足し頬を緩める。
「ところで、あの動画という技術は凄い! あれは魔導具か? 軍部に融通してもらいたいのだが?」
ゴルガゼ伯爵は王都の貴族、領地を持たない法衣貴族である。
王都で一軍を預かる立場だ。
ゴルガゼ伯爵は優秀な司令官であり、情報の大切さをよく理解していた。
リョージのスマートフォンで再生された動画を見て、強い衝撃を受けていた。
あの道具を持ち帰り軍に導入したいと強く望んでいる。
しかし、コーエン子爵は気のない返事をした。
「あれはね。借り物なんですよ」
「借り物? では、持ち主に交渉出来ないか? 金はいくらでも出す。軍部としては、是が非でも入手したい」
ゴルガゼ伯爵がゴリッと力強く申し出た。
コーエン子爵は自分の好きな茶葉『ダーバラ』の苦みを感じながら、力強い味と香りに励まされ、ゴルガゼ伯爵の圧に抗する。
「どうかな……。僕はあの道具を危険だと考えているんだよね……」
「危険? 逆だろう? 偵察兵に動画を撮る道具を持たせれば、敵の軍容から地形まで正確に把握できる。あの道具の軍事的な価値は計り知れん」
「ん……」
コーエン子爵は、紅茶をもう一口。
それっきり下を向いて黙ってしまう。
ゴルガゼ伯爵は、じれったくなった。
「何をためらう? 貴殿は優秀な男だ。あの道具の持つ価値に気づかぬわけはない」
「優秀? 僕は辺境の田舎子爵だよ」
「謙遜するな。貴殿の代になって、サイドクリークの町は発展した。この調子でいけば、伯爵への陞爵も叶うのでは?」
「ないよ。僕は荒事が苦手だからね。そのことはゴルガゼ伯爵もよく知ってるでしょう?」
コーエン子爵は、内政は得意だが、軍事はからきしだった。
ゴルガゼ伯爵もコーエン子爵が軍事を苦手とすることを知っているが、それを差し引いてもコーエン子爵の領地経営は見事だと高く評価していた。
そんな優秀な男が、動画の道具を危険だと言う。
ゴルガゼ伯爵は気になって仕方がない。
「ルーク。一体何を心配しているというのだ?」
ゴルガゼ伯爵は、コーエン子爵をファーストネームで呼んだ。
コーエン子爵は、ティーカップをソーサーに戻し腕を組む。
「あの道具はね。軍事では非常に有用だよね。わかるよ」
ゴルガゼ伯爵は、無言でうなずきコーエン子爵に先を促す。
「けどね。政治の面ではどうかな……」
「どう……とは……?」
「例えばね。今、二人で話しをしているでしょう? あの道具を使えば、僕たちの話は一言一句保存されてしまう。便利なことは便利だよ。言った言わないを防げるからね。けど、全ての会話をあの道具で保存したり、こっそり話し合いの内容を保存したりすれば……」
「ふむ。きわどい話や本音で話すのは難しくなるか……」
つまりコーエン子爵は、『オフレコ』や『本音トーク』がしづらくなるのではないかと指摘しているのだ。
内政や謀略が苦手なゴルガゼ伯爵も、コーエン子爵の危惧を理解した。
会話が保存されてしまうとなれば、失言を恐れ、言質を取られまいとするあまり、自由闊達な議論が出来なくなってしまう。
証拠が残るので『無かったこと』には出来なくなるのだ。
「貴殿が危惧していることは理解した。しかし、道具は使い方次第ではないか?」
「まあ、そうだね」
「軍としては、動画を撮る道具の購入を希望する」
「わかった。持ち主に聞いてみるよ。でも、あまり期待しないでね」
コーエン子爵は、ゴルガゼ伯爵の言い分と希望をシブシブ認めた。
ゴルガゼ伯爵はコーエン子爵の屋敷を去り、馬車で王都へ向かった。
ゴルガゼ伯爵は、馬車の中で考えていた。
(動画の道具の持ち主は、あのリョージという男であろう……)
ゴルガゼ伯爵は、リョージの戦いぶりを思い出していた。
動きは素人丸出しで、戦闘訓練を受けたことがないと一目見て分かった。
だが、スピードや力はなかなかのもので、素人とは思えなかった。
(ふむ……なんとも不思議な……)
ゴルガゼ伯爵は部下に指示をする。
「リョージという男について調べろ。どこの国の人間で、何をしている人物なのか。交友関係もだ。だが、手荒なことをしてはならんぞ。手出しは無用だ」
領主であるルーク・コーエン子爵と王都から来たゴルガゼ伯爵は、今回ヤーコフが起こした騒動について話し合っていた。
場所はコーエン子爵の領主屋敷にある応接室である。
ゴルガゼ伯爵は、コーエン子爵に迷惑をかけた詫び料を支払う。
詫び料の名目は開拓支援金――魔の森を切り開き新たに開拓村を作るための費用だ。
つまり、今回ヤーコフが起こした騒動は、少なくとも両家の間では『無かったこと』にする、今後、恨みを残さないと決まった。
また、平民のリョージに対して、ゴルガゼ伯爵は直接詫び料を支払うことはないが、コーエン子爵を通じて少なくない額を『礼』として支払うことになった。
交渉を終え、両者の前に置かれた紅茶が入れ替えられた。
ゴルガゼ伯爵が上品な所作で紅茶を一口。
自分の好きな茶葉『シロル』の上品な味と香りに満足し頬を緩める。
「ところで、あの動画という技術は凄い! あれは魔導具か? 軍部に融通してもらいたいのだが?」
ゴルガゼ伯爵は王都の貴族、領地を持たない法衣貴族である。
王都で一軍を預かる立場だ。
ゴルガゼ伯爵は優秀な司令官であり、情報の大切さをよく理解していた。
リョージのスマートフォンで再生された動画を見て、強い衝撃を受けていた。
あの道具を持ち帰り軍に導入したいと強く望んでいる。
しかし、コーエン子爵は気のない返事をした。
「あれはね。借り物なんですよ」
「借り物? では、持ち主に交渉出来ないか? 金はいくらでも出す。軍部としては、是が非でも入手したい」
ゴルガゼ伯爵がゴリッと力強く申し出た。
コーエン子爵は自分の好きな茶葉『ダーバラ』の苦みを感じながら、力強い味と香りに励まされ、ゴルガゼ伯爵の圧に抗する。
「どうかな……。僕はあの道具を危険だと考えているんだよね……」
「危険? 逆だろう? 偵察兵に動画を撮る道具を持たせれば、敵の軍容から地形まで正確に把握できる。あの道具の軍事的な価値は計り知れん」
「ん……」
コーエン子爵は、紅茶をもう一口。
それっきり下を向いて黙ってしまう。
ゴルガゼ伯爵は、じれったくなった。
「何をためらう? 貴殿は優秀な男だ。あの道具の持つ価値に気づかぬわけはない」
「優秀? 僕は辺境の田舎子爵だよ」
「謙遜するな。貴殿の代になって、サイドクリークの町は発展した。この調子でいけば、伯爵への陞爵も叶うのでは?」
「ないよ。僕は荒事が苦手だからね。そのことはゴルガゼ伯爵もよく知ってるでしょう?」
コーエン子爵は、内政は得意だが、軍事はからきしだった。
ゴルガゼ伯爵もコーエン子爵が軍事を苦手とすることを知っているが、それを差し引いてもコーエン子爵の領地経営は見事だと高く評価していた。
そんな優秀な男が、動画の道具を危険だと言う。
ゴルガゼ伯爵は気になって仕方がない。
「ルーク。一体何を心配しているというのだ?」
ゴルガゼ伯爵は、コーエン子爵をファーストネームで呼んだ。
コーエン子爵は、ティーカップをソーサーに戻し腕を組む。
「あの道具はね。軍事では非常に有用だよね。わかるよ」
ゴルガゼ伯爵は、無言でうなずきコーエン子爵に先を促す。
「けどね。政治の面ではどうかな……」
「どう……とは……?」
「例えばね。今、二人で話しをしているでしょう? あの道具を使えば、僕たちの話は一言一句保存されてしまう。便利なことは便利だよ。言った言わないを防げるからね。けど、全ての会話をあの道具で保存したり、こっそり話し合いの内容を保存したりすれば……」
「ふむ。きわどい話や本音で話すのは難しくなるか……」
つまりコーエン子爵は、『オフレコ』や『本音トーク』がしづらくなるのではないかと指摘しているのだ。
内政や謀略が苦手なゴルガゼ伯爵も、コーエン子爵の危惧を理解した。
会話が保存されてしまうとなれば、失言を恐れ、言質を取られまいとするあまり、自由闊達な議論が出来なくなってしまう。
証拠が残るので『無かったこと』には出来なくなるのだ。
「貴殿が危惧していることは理解した。しかし、道具は使い方次第ではないか?」
「まあ、そうだね」
「軍としては、動画を撮る道具の購入を希望する」
「わかった。持ち主に聞いてみるよ。でも、あまり期待しないでね」
コーエン子爵は、ゴルガゼ伯爵の言い分と希望をシブシブ認めた。
ゴルガゼ伯爵はコーエン子爵の屋敷を去り、馬車で王都へ向かった。
ゴルガゼ伯爵は、馬車の中で考えていた。
(動画の道具の持ち主は、あのリョージという男であろう……)
ゴルガゼ伯爵は、リョージの戦いぶりを思い出していた。
動きは素人丸出しで、戦闘訓練を受けたことがないと一目見て分かった。
だが、スピードや力はなかなかのもので、素人とは思えなかった。
(ふむ……なんとも不思議な……)
ゴルガゼ伯爵は部下に指示をする。
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