左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平

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第六章 スタンピード

第91話 私の精霊がささやくのさ

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 俺たちはサイドクリークの町を後にして魔の森へ向かった。
 人数が多いので徒歩で向かっている。

 ソフィーが飽きないように俺と手をつないだり、俺が肩車をしたりしながらなので、半分お散歩のような雰囲気だ。

「ぼーけん♪ ぼーけん♪ ぼーけんしゃ♪ 黒焦げっ♪ オークは♪ 美味しいー♪ おにく♪」

 ソフィーは何やら謎の歌を口ずさんでご機嫌だ。
 ブンブンとおもちゃの魔法の杖を振り回して勇気凜々である。

 ソフィーの様子を見て、シスター・エレナがクスクス笑う。
 俺の冒険者パーティー『ひるがお』は和やかだ。

 だが、聖サラマンダー騎士団側は、ちょっと警戒感が強い。
 魔の森が近づくにつれ、ヒリついている。

(この辺りは魔物が出ないエリアだが……。警戒した方が良いのだろうか……?)

 俺は足を止めて、フレイル団長に状況確認を求めた。

「フレイルさん。この辺りは魔物の出ないエリアですが、みなさんかなり警戒をされていますよね? 何か気になることでも?」

 俺の質問にフレイルさんが厳しい顔で答えた。

「うむ……。前方の森から良からぬ気配が伝わってくるのだ……」

「「「えっ!?」」」

 俺、ソフィー、シスター・エレナの顔色が変わる。
 俺たちは魔の森を見る。
 ジッと目をこらし、耳を澄ますが、普段と変わらない。

 ソフィーは首をひねっているし、シスター・エレナは驚いた表情をしている。
 二人も俺と同じく何も感じないらしい。

「あの……私には、フレイルさんがおっしゃる気配がわからないのですが……。本当に何か気配がするのでしょうか?」

「ああ。私の精霊がささやくのさ」

「えっ!? 精霊が!?」

 本当かよ!?
 俺は聞いたことがないぞ!?

 確認しようとシスター・エレナに視線を移すと、シスター・エレナは首をブンブン振っている。
 王都から来た若きエリート神官マリンさんとアシュリーさんも困惑顔だ。

 精霊がささやくなんてあるのか!?

「ぷっ! ふふふ。冗談だ。真に受けるな」

「なんだ! 冗談ですか! ビックリしましたよ!」

 フレイルさんの冗談と俺のリアクションに、みんな笑って緊張が解けた。
 この辺りの呼吸、空気を和らげてしまうのは、さすが団長さんだ。

 ひとしきり笑うと、フレイルさんは表情を引き締める。

「だが、魔の森から禍々しい気配を感じるのは本当だ。リョージ殿もそのうちわかるようになる」

 俺も!?
 そうなのか!?
 修行しているとスキルを得る的な感じだろうか……?
 俺は驚きながらも、話を元に戻す。

「禍々しい気配というのは、魔物の気配でしょうか?」

「普通の魔物ではないな。相当上位の魔物がいる。そうでなければ、こんな禍々しい気配はしない」

「上位というとオークジェネラル?」

「いや、もっと上だろう。気配が大きい」

 俺は眉根を寄せ、もう一度魔の森を見る。
 魔の森の上の空は青く太陽がまぶしい。
 一方、魔の森は巨木が立ち並び暗い。
 あの中にオークの最上位種、つまりオークキングがいるのだろうか?

「私も感じます。危険な気配です」

 マリンさんが銀の鈴が鳴るような声で物騒なことを告げた。
 マリンさんも魔物の気配がわかるのか!
 さすが本部のエリート神官だ。

 マリンさんの隣でアシュリーさんがうなずく。

「うん。わたしも感じる。何やら危険な――」

「アシュリーおねーちゃん、ほんとぅ?」

 ソフィーがアシュリーさんの言葉にかぶせる。

「アシュリーおねーちゃんは、テキトーなところがあるから……。ソフィーはイマイチ信じられない」

「本当だぞ! ソフィー! 凄く嫌な気配がしてるんだ! ほら! ほら!」

 アシュリーさんは一生懸命魔の森を指さす。
 必死である。

 だが、ソフィーはジトッとした疑惑の目でアシュリーさんを見ている。
 普段の行いは大切だな。

「リョージ殿。どうする? リョージ殿たちは引き返すか? 我らだけでも構わないが?」

 フレイルさんが俺に決断を求めた。

 どうするか?
 俺には分からないが、フレイルさんは魔の森から危険な気配がすると言う。
 ソフィーを連れているし撤退もありだ。

 しかし、俺たちの町を守るのに、他所の人だけ危険な目に遭わせるのは良くない。
 俺だけ同行して、シスター・エレナたちにソフィーを連れて戻ってもらうか?

 俺が迷っていると、ソフィーが俺の服の裾を引っ張った。

「おとーさん。行こう!」

 俺はひざまずいてソフィーと視線の高さを同じくする。

「ソフィー。でも、魔の森は危ない魔物がいるんだよ」

「知ってる。マリンおねーちゃんは、勘が鋭いからほんとーにいると思うよ」

 アシュリーさんは?
 ソフィー!
 アシュリーさんがへこんでいるぞ。

「だったらソフィーは帰った方が――」

「ダメだよ! ソフィーたちの町の問題だよ! ソフィーが行かなきゃ!」

「――っ! そうか、ソフィーは行きたいんだな?」

 ソフィーは力強くうなずいた。

 何とソフィーは一丁前に責任を感じているらしい!
 俺はソフィーの成長が嬉しかった。
 少しずつ大人になって行くんだな……。
 子供だからとソフィーの気持ちを無視するのは良くないだろう。

 よし! ソフィーのことは俺が守ろう!
 俺はグッと口元に力を入れて立ち上がり、フレイルさんに告げた。

「フレイルさん。俺たちも行きますよ!」

「よしっ! では、進もう!」
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