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太陽の命
しおりを挟む「さぁ、夜だ」
誰もが口を揃えてそう言う。しかし、不安になることはない。光はある、光はある。こんなにも幸福なことはないだろう
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少量の欠片だけでもあらゆるものに浮力を与える「浮遊石」と、あらゆるものに重力を与える「沈殿石」の発見により、人類は確実に進化していた。
地球だけでは資源が足りないと考えた人類は惑星を侵略して行った。そして、遂に太陽の高熱にも耐えることが可能な鉱山資源を見つけたのだった。
そこからは多く語る必要はない。太陽を我がものにしようと地球人は「沈殿石」を使い、太陽の3分の1を地球に衝突させた。地球は粉々に散り、太陽に含まれた「沈殿石」の重力により太陽の光を閉じ込めるように再構成された。
「はぁ…つっかれた~」
水筒からは最後の1滴が落ちてくる
「あ?ったく…もう終わっちゃったか……」
朝一番に汲んできたというのにこれだ。最近、また暑くなり始めた
見渡す限り、岩、石、土。この鉱山もだいぶ掘り尽くしてしまったか。ピッケルを地面に置き、土のついた大きな手で顔を拭う
見上げた空は暗黒。遠い昔に地球が再構成される前は青色だったらしいが、とても信じられたものじゃない。当時は太陽の光が地球を照らしていたらしいが、それも信じられない。今、この星を照らしているのはこの星自体だからだ。地下深くから溢れる熱と光。太陽の欠片のおかげだ
「っし!もうひと仕事しますか!」
ピッケルを持ち、岩を削っていく。太陽の欠片は貴重な鉱山資源だ。しかし光源、または莫大なエネルギー源として民衆からの需要は高まる。俺の家の電球も太陽の欠片でできている。売れば、1週間は生活に苦しむことはないだろう。まぁ、そのために2週間ここを掘り進めるのもどうかと思うが…
カンカンと岩を打ち付ける音が鉱山に響いた。
一日の終わりはビールで終わる。これが最高だ。この一杯のために毎日鉱山に潜ってると言っても過言ではない。至福の瞬間だ
「今日の稼ぎは6000か…」
鉄や銅、鈴鉱石なんかも売れるがやっぱり安い。石炭とか燃料になるものの方が高価で買い取られるため、鉱脈を当てたいが中々上手くいかない。
急速的な工業化、化学の力により、太古から不可能だと言われていた錬金術までも可能になってしまったこの世の中では科学者が国のトップだ。
俺なんか、鉱夫は巷じゃ「ギャンブラー」や「無駄労働」なんて言われようだ。俺らみたいなやつが太陽の欠片を見つけないと何も出来ないくせによく言うぜ…
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今日も今日とて、鉱山に潜る。毎日同じことの繰り返し。明日も明後日もなにの代わり映えのない日がやってくるのだろう
太陽の欠片。それさえあれば…それさえあれば、俺の人生は変われる。渇いた俺の世界に潤いがもたらさせるんだ。噛んだ後のガムみたいなこんな人生に再び、味がするんだ。
いや、やめよう。虚しくなるだけだ
「でも…ここら辺…」
昨日から薄々気づいていたが、やっぱりだ。石が熱くなってきている。太陽の欠片が近い証拠か?僅かな期待は、疲れなど忘れさせる。ただ淡々と目の前の岩にピッケルを打ちつけよう
結局、期待していた太陽の欠片はなかった。あったのは「発火銅」と呼ばれる銅の一種で鉄と混ざっているのが殆どだが、純正のものだとごく稀に熱を発生させる鉱石だ
疲労と、失望感がどっと来た。そろそろ、掘る場所を変えてみてもいいかもしれない
今日のビールはなんだか、味がないような気がした。
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昨日と今日の区別もつかないくらいに同じ日を過ごす。正直いって、俺は退屈してるんだと思う。もちろん、疲れるこの仕事に退屈なんか覚えてない。朝から晩までずっと、腕を動かし続けるのはかなり体にくる。ただ単になにか、劇的なものが起こらないか、そう思ってるんだ。自分が恵まれるようなことじゃなくてもいい、今のような生活が変わればそれでいい。
そう思っても、俺は岩を砕くだけの作業からは逃れられないのだ。
「今日もハズレか…」
水筒から最後の1滴を絞り出して、汗を拭く
もう、薄々勘づいている。こんなことしたって意味ないって。地上の広大な土地を考えればその中にある数少ない石ころを探すなんて無謀なんだ
歯を食いしばり、手を強く握る俺はなんだか、バカバカしくも見えた
「いっそ、誰か見つけてくれねぇかな…」
そうなってくれれば、俺にも諦めに対する最後の一押しに腹を括れんだけどな
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劇的に変化する刺激はやってきた。こういうものは突然やってくるのだ
太陽の欠片が見つかった。それが事の発端だ。今まで見つけられてきた太陽の欠片とはまず大きさが違う。
欠片…というよりは、もはや1つの塊だったらしい。遠い外国で見つかったそうだ。それは、さすがに見つけられない。だけど、それで吹っ切れた気がする。最後の一押しを神が俺に与えてくれたのは、ずいぶん早かったようだ
そして、もう1つ変わったことがある。太陽の塊を掘削した瞬間
この世界には光が消えた。
道に光はない。家にある電球が俺の近くにある唯一の光だった。
なにも、全ての光がなくなったわけではない。自然の光が消えたのだ。昔の人々の言葉を借りるとするならば「夜」というの表現が正しいのだろう
「これから、どうするか……」
全てを諦めてしまった俺はそう言いつつも、言い知れぬ高揚感があった。目の前にある電球を見つめて、俺はなんというか、特別な感覚があったのだ。自分が上の立場になったのではなく、周りが下に落ちたのだ。それに満足感を覚えているんだろう。つくづく思う、俺はどうしようもないクズだ
けれども、俺はそれを恥じない。きっと俺と同じような人もいるからだ
自然の光はなくなり、太陽の命は絶たれた。化学の力と太陽の欠片だけがこの世界にある光だ
「さぁ、夜だ」
誰もが口を揃えてそう言う。しかし、不安になることはない。光はある、光はある。こんなにも幸福なことはないだろう
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