9日間

柏木みのり

文字の大きさ
13 / 44

第13章 果樹園にてカールと

しおりを挟む
 竜は夢を見ていた。
 健太が床の上に座り込んで涙にかきくれている。
 どうしても魔法ができない、自分にはできない、どんなに頑張ってもできない、と言って身も世もなく泣いている。
 慰めようと思うのだが、健太と竜の間には分厚いガラスのようなものがあって、近づくことができないのだ。
 目が覚めると、部屋は薄明るくなっていた。目覚まし時計は5時を指している。
 そっと起き上がって窓のところまで行き、カーテンを少し開けてみると、澄んだ青藤色の空に、まるで天翔る竜のような形の雲が浮かんでいた。東の方には濃い灰青の雲の層がありその向こうにうっすらと淡いオレンジ色に染まり始めた空が見える。
 飛んでみたいな、と竜は思った。まだ一人だけで外を飛んだことはないけれど、この青藤色の空気の中を少しだけ、そう、果樹園まで飛んでみたい。
 服を着替えようと振り返ると、ライラがちゃんと目を覚まして自分のベッドからこちらを見ていた。自然に顔がほころぶ。
「おはよう」
 小さい声で言って、バタバタとベッドに尻尾を打ちつけているライラの顔を撫でる。
「これから着替えて、ちょっと飛んでくるからね。吠えちゃだめだよ。みんなまだ寝てるからね」
 急いで着替えて、窓の方へ行くと、ライラも起き上がってついて来た。窓を開け、窓枠に乗る。じっとこちらを見上げているライラと目が合う。
「行ってくるからね。吠えちゃだめだよ。すぐ帰ってくるから」
 ひゅうん、とライラが言った。今にも吠え出しそうでヒヤヒヤする。
「いい子だね」
 頭を撫でてから、一呼吸して、集中し、意識の空間に入る。そっと窓枠を蹴ると身体が浮かんだ。よし。
「行ってくるね」
 ライラに言って、竜は窓の外の薄青い朝の空気の中に泳ぎ出した。後ろでライラがもう一度ひゅうんと言ったのが聞こえたけれど、それだけだった。少し行ってから後ろを振り返ると、ライラが窓からじっとこちらを見ていた。笑顔で手を振ると、竜は果樹園の方へ向かった。
 ひんやりした青い空気が竜を包む。
 なんて気持ちいいんだろう!
 竜は少しだけ高く上ってみた。近所の人に見られると困るのであまり高くは上れないのが残念だ。本当はどこまでもどこまでも高く、あの竜のように見える雲までも上ってみたい。
 そうだ、姿を見えなくする魔法というのがあるとエミルが言っていたっけ。あれをできるようになれば、どこまでも好きなだけ上っていける!
 そこまで考えた時、ふとさっきの夢を思い出した。床に座り込み、全身で嘆き悲しんでいる健太の姿がくっきりと見えた。
「健太君…」
 思わずつぶやいた途端、竜の体がスッと沈んだ。
「わっ」
 慌てて飛ぶことに意識を集中しなおす。背中がぞっとして全身に鳥肌が立った。
 危ない危ない。気をつけなくては。
 もう果樹園の入り口まで来ていたので、竜は注意してゆっくり下降した。昨日エミルが言っていた、大きいりんごの木のそばの開けたところに着地する。足元の草が朝露で濡れていて、辺りの空気はしっとりと湿っていた。
「おやおや、空から降って来たね」
 背後からの笑いを含んだ声に、竜はびっくり仰天して跳び上がった。
「…カール!ああ、びっくりした…」
「ははは。ごめんごめん」
「おはようございます」
「おはよう」
 カールは目を細めて竜をしみじみと見つめた。
「…竜を見ていると、昔のエミルを思い出すよ。真がいた頃のエミルを」
「ちょうど同い年くらいですものね」
「そうだね…」
 カールは空を仰いで大きく息をついた。
「まだ子供だったのに…」
 そして竜を見て悲しそうに微笑んだ。
「…あの事故があった時、最初あの子は道具が壊れてしまったことを知らなかったんだよ。だから真は無事だろうと思っていたんだね。でも2、3日経った頃、道具が壊れたということを知って…。ここで、この場所でね…」
 カールは辺りを見回した。
「あの子はまだ身体が治っていなかったのに、一緒にいたマリーとスティーブンを振り切って、ここまで走って来た。私はあの辺で、」
 少し離れた辺りを指差して、
「まだ回収し切れていなかった破片を探していた。それと、もちろん、ジリスとフュリスをね。そこへエミルが走って来た。私のことなど目に入らないようで、この場所へやって来て、しばらく呆然と立ち尽くしていたかと思うと、くずおれて大声で泣き出した。あの子が泣いたのを見たのは、赤ん坊の時以来だったよ。末っ子だったのに、いつでも明るくて強くて毅然とした子だった。利発な子だった。年よりも大人びていてね。それが身も世もなく、小さな子のように声を張り上げて泣いていた。すぐにスティーブンが追いついてきて一生懸命慰めていたけれど、あの子は泣き続けた。
 私が近寄って名前を呼ぶと、あの子は弾かれたように立ち上がって、私の手にしがみついた。そして真を助けてくれるよう懇願した。繰り返し繰り返し、『お父さん、お願い、真を助けて。真を助けて』と…」
 カールの顔が辛そうに歪んだ。
「私は…私は『私にできることは何もない。お前にもわかっているはずだ』と言ったんだよ。必死にすがってきたあの子に…」
 竜は思わず涙ぐんだ。自分がその時のエミルになったような気がして、心を激しく鞭打たれたように感じた。
「あの子はその場で気を失った。スティーブンは信じられないというように私を睨んで、最大級の非難をこめて『なんてことを言うんですか!』となじったよ。当然だ」
 カールは大きなため息をついて、目の下に滲んだ涙を拭った。
「あの子は高熱を出して一晩中うなされ続けた。スティーブンが手を尽くしてくれたけど、どんなことをしても次の日まで熱は下がらなかった。あの子があの晩悪夢の中でどんなことを経験したのかは誰にもわからない。涙を流すことはあっても、歯を食いしばって、譫言ひとつ言わなかったと、スティーブンが後で教えてくれたよ」
「そばについていてあげなかったんですか」
 竜はつい非難がましく言ってしまった。
「スティーブンに、私はそばにいない方がいいと言われた。その通りだと思ってね」
「…すみません」
 カールはわずかに首をふった。
「いや。なんと非難されても当然だ」
「エミルは…マリーに道具が木っ端微塵に壊れたということを聞いた後のことは、覚えていないと言っていました。ぼうっとしてしまって、後のことは覚えていない、って」
「そう…」
 カールは竜をじっと見つめた。深い色の目だった。
「竜は、エミルが好きなんだね」
「はい。大好きです」
「では、エミルが例の魔法の実験をしないでくれればいいと思っているだろうね」
「はい」
 竜は躊躇せずに答えた。本当のことだ。
「そうか…」
 カールはわずかに微笑してうつむき、そのまま何も言わなかった。
「一つ訊いてもいいですか」
 しばしの沈黙の後で竜は思い切って口を開いた。
「もちろん」
「どうして、向こうの人が行き来できるための魔法を…道具を作ったんですか」
「ああ…」
 カールは低く笑って、細めた目で竜を見た。
「どっちが最初に訊くだろうかと思っていたよ。エミルか、竜か…」
 そして大きく息をつくと、
「では話そう。私の母はね、隣の世界の人だったんだ」
 目を丸くした竜に頷いてみせて、
「そう。向こうで音楽大学の学生だった時にこっちに来た。真や竜のように魔法の才能があった。魔法に夢中になって、もっと魔法を学びたくて、向こうに帰らない決心をして、こちらにとどまった。私の父と出会って結婚し、やがて私と妹が生まれた…。
 幸せだったのだろうと思うよ。しかし同時に、やはりね、向こうの世界が恋しくて恋しくて仕方がなかったのだと思う。よく向こうの世界の思い出話をして、時には涙を流すこともあった。そんな時はいつも、父や私や妹に、ごめんなさいね、大丈夫よ、と言ってすぐに涙を拭いて笑顔を見せてくれたけれど、母がどんなに向こうの世界に帰りたいと思っているか、向こうとこっちを行き来できればどんなにいいだろうと思っているかはよくわかっていたから、私は小さい頃から、絶対に向こうとこっちを行き来できる魔法を発明しようと決めていたんだ」
 カールは遠い目をして、朱鷺色に染まった東の空を見つめた。
「私が魔法大学に入ってすぐ、向こうとこっちを行き来するための魔法の研究が禁止された。もう竜にもわかっているだろうが、危険な研究だからね。実験に失敗すればそれはほとんどの場合死を意味するのだから。私はそんな禁止令には従わなかった。危険だなんていうことは大昔から皆知っていることだ。何を今更、と思ったね。優れた研究者だったマーカスが陰ながら助力してくれて、私は研究を続けることができた。幸運なことだったよ。あの禁止令のせいで、無理な実験を決行して命を落としたり、泣く泣く研究を諦めなければいけなかった研究者たちは大勢いたのだからね。
 ところが、私が魔法大学を卒業し、大学で教えながら研究を続けていたある日、妹から連絡があった。母がいなくなったと」
 竜は息を呑んだ。まさか…。
 カールは竜の無言の問いに答えて頷いた。
「そう。向こうの世界に帰ってしまったんだよ。私の研究のことはもちろん知っていたけど、もう待てなかったんだね。私も妹ももう成人していたし…。妹の話では、その頃は特に気が沈みがちで、毎日のように泣いていたというから。もう限界だったのだろう」
 そっと微笑んで、カールは淡々と続けた。
「それまでの私の研究は、特に向こうの人が行き来できるための魔法というふうに限定していたわけではなかったんだよ。もちろん母が向こうとこっちを行き来できるようにというのが目標だったわけだけれども、向こうの人だけが使えるものを作ろうと考えていたわけではなかった。でも、母がいなくなってからはそうした。こっちに来た向こうからの客人が…魔法を使える客人が…自由に行き来ができるような魔法。自分でもなぜそうしたかったのかよくわからなかった。私もまだ若かったから。もう母はいないのにね」
 カールは穏やかな目で竜を見た。
「意地もあっただろうし、悔しさもあっただろう。追悼――母は死んだわけではないから、そんな言葉を使うのはおかしいかもしれないけれど――の意味もあったかもしれない。…どうだろう、これで答えになっているかな」
 竜はうなずきかけたが、また思い切って口を開いた。
「でも…、自分では試すことのできない魔法ですよね。成功かどうかは誰かが使うまでわからないでしょう。それでもよかったんですか」
「成功かどうかはわかっていたよ」
 カールは静かに言った。
「誰かが使うことで得られるのは成功の証明だ。それはそれで非常に胸躍ることではあるけれど、魔法の発明が成功かどうかということは、実は実験なんかをしてみなくてもわかることなんだよ。本当に自分の研究のことを熟知していればね」 
「トップレベルの研究者ならば、ということですね」
 カールは微笑んで頷いた。
「そう。エミルのようにね。あの子の魔法は必ず成功する」
「…そう思いますか?」
「あの子はとっくに私を超えている。大したものだ」
 カールはどんどん明るく色を変えていく空を見上げて目を細めた。
「竜、あの子を止めてはいけないよ」
「……」
 竜は、はい、とは言えなかった。
 二人はしばらくの間、黙って空を見上げていた。飛翔する竜のような形をしていた雲は、いくつかの流れるような雲の集まりに変わっていた。
「そういえば、健太君のことを聞いたよ。かわいそうに」
 カールが竜を見て言った。竜はさっきの夢を思い出して、胸が痛んだ。
「はい…。魔法が使えるようになればいいなと思ってるんですけど」
「そうだね…」 
 カールはため息と共に言った。エミルのように、「無理だと思う」と言葉では言わなかったが、ため息がそう言っていた。
「昨日エミルに聞いたんですけど、マルギリスの結晶を歌わせてできるバリアは、その魔法を行った本人しか守ってくれないそうですね」
「…健太くんも守れればと思っていたんだね」
「はい」
 カールは腕組みをした。
「方法がないわけではないね」
「えっ」
 竜は驚いてカールを振り仰いだ。
「健太くんを竜の『次元』に引き込めればいいわけだ」
「そんな魔法があるんですか!」
「いや。私の知る限りではないね」
「……」
 竜は落胆で目を見張った。じゃあどうしてそんなことを言うんだろう、という思いが顔に出たのだろう。カールは諭すように言った。
「竜、魔法というのは昔からの決まりきったものがあるだけじゃない。新しい魔法を作ることができる」
「…魔法発明学ですね」
「そうだね。でも、道具を伴う類の複雑なものだけが新しい魔法というわけではない。シンプルな魔法、例えば物を持ち上げる魔法だって、大昔、誰かが身体を使わずに物を持ち上げたいと欲したから、できたんだ」
「…つまり、僕が健太くんを僕の次元に引き込むことを欲すれば、そういう魔法ができるかもしれないっていうことですか」
 そんなはずはないと思いながら言った竜に、カールはにっこりと頷いた。
「その通り」
「え…」
 カールは微笑んで竜を見ている。
「どうやって…どうやったら新しい魔法を作れるんですか」
「どうやってかは私には説明できない。ただ、不可能ではないのだということをね、覚えておくといいよ、竜」
「……」
「竜には力がある。そのこともよく覚えておくことだ。忘れてはいけない」
 微笑みの中にも強い眼差しで見つめられ、竜は少し戸惑いながらも、しっかりうなずいた。
「…わかりました」
「それからもう一つ。魔法で何がしたいのか。なんのために魔法を学ぶのか。これも考えてみるといいよ。まあ今はまだ色々な魔法を楽しんでいる時期だろうけど、たまにそんなことを考えてみるのも悪くはない」
「…はい」
 カールはにっこりして頷くと、
「では私は少し歩いてくるよ。朝食までには戻るからとマリーに伝えておいてくれるかな」
「はい。あの、カール」
 背を向けかけたカールを竜は呼び止めた。
「なんだい」
「さっきのお話…お母さんのお話を、エミルに話してもいいですか」
 カールは微笑んで頷いた。
「もしエミルが訊いたらね。あれは訊かれた場合にだけ話す類の話だ」
「わかりました」
 手を上げて歩み去っていくカールの後ろ姿を目で追いかけながら、竜は考えた。
 魔法で何がしたいのか…。そんなこと、考えたこともなかった。
 僕は、何のために、魔法を学びたいのだろう。
 僕が魔法を使ってしたいことは何だろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法使いたちへ

柏木みのり
児童書・童話
 十四歳の由は、毎日のように、魔法使いとそうでない人々がごく普通に一緒に暮らす隣の世界を姉の結花と伯母の雅代と共に訪れ、同じく十四歳の親友ジャンと魔法化学の実験に没頭する日々を送っていた。ある晩、秘密の実験中に事故が起き、由の目の前で光の炸裂と共にジャンは忽然と消え去った。  ジャンに何が起きたのか。再会は叶うのか。  「9日間」「はるのものがたり」「春の音が聴こえる」と関連した物語。 (also @なろう)

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

処理中です...