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二章 ミコのお仕事

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 目を閉じてみたけど開いてくるので、薄目を開けたまま、身体が浮く感覚に意識を持っていった。風に乗る。空気になる。私がなくなる。
 集中するのは「中」じゃなく、外。
 集中とは真逆かも知れない。無我。瞑想。
 坐禅やヨガに似てる?
 あ、いかん。また我に返っちゃった。
 改めて手を広げて顔を上げて、息を整えた。

 ゆっくり、深く、長く、息を吐く。
 吐いて、吐いて、吐ききる。
 すると。
 新しい空気が、すうっと鼻から入ってくる。

 またゆっくりと吐く。吸う。吐く。深く。身体の芯に空気を入れる。
 新しい空気に自分が溶けていくようなイメージが脳裏に浮かぶ。
 吐く空気に私が消えていく。
 入る空気に私が流れていく。
 私が溶けて、透けていく。
 空気の中に私が在る。
 大気が在る。
 空が広がる。
 広げる。

 空気が動く。
 風が吹く。
 気が集まる。
 熱が起こる。
 温かい。
 熱い。
 昇る。
 溶ける。
 大気が。
 冷える。
 冷たい。
 縮む。
 固まる。
 重い。
 落ちる。

「あっ」

 誰かが呟いた。
 耳鳴りがした。
 呼吸が響いた。
 息を飲む。
 まばたきする。
 空が見えた。
 鼻から息を吸う。
 口から吐く。
 立っている。
 手足がある。
 私だ。私が在る。
 雲だ。
 青くない。
 いつの間にか暗雲を広げている。
 水滴が、顔に当たった。
 また当たった。
 次々に。
 無数の水滴が落ちてくる。

 雨。

「雨だーっ!」

 歓声が湧いた。急激な声の波に押されて、身体がよろめいた。身体が重い。いや、だるい?
「危ないっ」
 背後で誰かが小さく叫ぶ。可愛らしい女の子の声。
 でも私の腕を掴んだ手はガッシリと大きく感じられた。誰なのか見えない。私が目を閉じてるせいだ。
 いや、ちょっと待って、これ、また気絶の直前か、もしかして?

「よくできました」

 どこからともなく優しい声が響いた。
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